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不思議なもんだな、とライは思った




昨日はミーシャに触られることも触ることも抵抗感があった


それは【嫌だ】というより【触れては駄目だ】という気持ちからだったように思う




そのことに気づいたのは今だが


自分はそう考えていたのだと腕の中で泣きじゃくるミーシャを見て思った




あんなに抵抗していたのに

今はミーシャが腕の中にいることになんら抵抗はない









今までのライの生活は【拒絶】の毎日だった


周りがライを拒絶する

だからライも周りを拒絶する


単純なことだ


それにその距離はお互いにとって一番楽だった








だから突然の【許し】に動揺した


距離の近さに驚いた






どうしていいかわからなかった


どう返せばいいかわからなかった







自分が触れていいのか


わからなかった





なのにミーシャは平然と触れる



こちらが【拒絶】しても同じモノは返ってこない


ただただ【許し】しかこない







声をかければすぐに返事をするような


振り返ればすぐ側に立っているような


歩くときに手を握られるような


いつのまにかしがみついてくるような




そんな距離でしかライに接しない





そんなだから

 




触れてもいいのかと






少しずつ思うようになった









だから、





ライの失敗を笑って許したミーシャに


ライのことで笑うミーシャに


ライを受け入れてくれる場所に連れてきてくれたミーシャに


ライを振り回すミーシャに


ライの髪を惜しむミーシャに


……ライを想って泣きじゃくるミーシャに











触れたいと


()()()思ったのだと







正直今でも【好き】というものはわからない





だが、


ライのことを知る度に自分が傷付いたような顔をして泣くミーシャは






ライにとって



もう手放せないものだった













「いい加減泣き止め」



腕の中のミーシャに向かって声をかけるも変わらず彼女は嗚咽を繰り返すだけだ

そんな彼女にライは途方に暮れた



彼女に馬鹿正直に言ったのは失敗だったと内心で舌を打つ


ミーシャがライを想って泣いているのはわかっているが正直言えばライは今更町の奴らの視線などどうでもいい



ミーシャやミーシャの家族だったから自分のツラを見せるのに構えた


ショーン医師にしたってミーシャの前で嫌悪を晒されたらミーシャがどうでるかわからなかったから身構えた


それだけだ




だがミーシャと町を歩くなら彼女はライが受けている視線の意味を知ることになる

そしたら彼女は町中で泣くかもしれない


隣りを歩いていることで()()()嫌悪の対象として見られるかもしれない



だから『見られねぇほうがいい』と言ったのだ




けれど彼女は泣いてしまった






(…しょーがねぇ女だな)




ライはまた溜息をこぼすがその口元は少し緩みミーシャを見下ろす瞳は柔らかい




「おら、買い出し行くんだろ。また遅くなって師匠と奥さんにドヤされんぞ」

「ッヒック、う、…ッうん」

「なら早く上着持ってこい。さっさと行くぞ」

「うぅ~ッ、…ック、うんッ」



ようやくまともに返事を返してきたミーシャに安堵し回していた腕をほどく

それでも彼女はライの背に回した手は離さない



「おい」

「ねぇ、…ライ」

「あ?」


離さない彼女に声をかければ胸に埋めていた顔を上げてくる

その瞳は潤んだまま鼻も頬も少し赤い

けれど上目遣いで見上げてくる薄緑色の瞳にライの心臓が大きく脈打った


ライはそれを誤魔化すかのようにミーシャに声をかける


「ンだよ」

「……泣いてばっかで、ごめんね」


と、何故か申し訳なさそうな顔をするミーシャにライは自分の頬が緩んだのがわかった



「泣き虫」

「うぅッ、ごめん…」

「いーから、さっさと取ってこい」

「うん」



綺麗にしているミーシャの髪を崩さないように頭を軽くポンポンと叩き行動を促せば彼女は笑顔で頷き手を離した


体温が離れたせいか先程よりも少し肌寒く感じていれば扉に向かっていたミーシャが「ねぇ」と振り返る



「あ?」


「大好き」



花が開いたように笑うミーシャに息を呑む


脈打つ心臓がうるさい


全身に感じる熱を誤魔化すように

肺の中の空気全部を吐き出すように


長く長く息を吐く




「………だから、知ってるっつったろ」


「へへ、うん。知っててね!」




嬉しさを全身に滲ませて部屋を出て行くミーシャの背中をライはただジッと見つめていた















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