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ライには親がいない



いや、気付いた時にはひとり男が側にいたがそいつが父親だったのかは知らない


ひたすらに殴られ蹴られ酒瓶を投げられたがそれでも雨風が防げるからと男の住処でもある荒屋から出ることは考えなかった


時々自分を【ライ】と呼び荒屋から放り出すから自分は【ライ】という名前かもしれないしもしかしたら名前ではないのかもしれない


荒屋から放り出される時は決まって女を連れ込んでる

その間に酒や金をとってこいという意味だ


偶に見られてするのが興奮するような変態に付き合わされたが初めは意味がわからずただ眺めていただけだった


その意味を知ったのも大分後だが特に思うことは無かった

だが、見ろと言ったくせに顔は見せるなと部屋の外に放り出すのだから頭がイカれてんのかと過去の奴らを蔑みはした




身体が小さい頃は道で座って物乞いすれば多少の金ははいった

しかし、顔を見られると誰しも眉を顰め口元をおさえ顔色を悪くして金もくれないのですぐにボロ布を被るようになった


それでも偶に顔を見られると「気色が悪い」「なんて醜い子供だ」「魔物の子ではないのか」「でてけ!」と罵られ殴られた



物乞いしながら通りすぎる奴らを見て初めて【家族】と【親】と自分に向けられてきた言葉の感情の意味を知った


そして自分には【親】も【家族】も無いことを理解した




身体がデカくなり物乞いができなくなると盗みをするようになった


だが顔のせいで自分がやっていない盗みの犯人にまでされ殴られる事も多かった



殴られる事が多かったから殴る事を覚えた

蹴られる事が多かったから蹴る事を覚えた

罵られる事が多かったから罵る事を覚えた



しかし心当たりのないモノまで全て自分が犯人とされるのが馬鹿馬鹿しくなって、盗み自体はすぐに辞めた

どうせ全て奪われるのだから盗んでも意味がない

それを奪い返すことも難しかった



だから少しずつ仕事を覚えた

字は読めないし書けないから身体を動かすことしかできないが真っ当に貰ったものは奪われにくい

稼いだ金を狙ってくる奴はぶん殴ればいいだけなのも簡単だった


瓦礫拾いや汚れ仕事なら醜い顔でも眉は顰められるが働ける



そうして数年生きながらえた



途中、側にいた男が荒屋の外で血を流して死んでいたがどうでも良かった




ライは飢餓を満たすためだけにそうして生きてきた







だから、

女とこんなに近くで話したことなどなかった


大抵の女はライを見て顔を背けるか逃げるか、偶に吐く奴が居た時はライは『汚ねぇな』と蔑視していたものだ



だから、


腕を掴まれた事も

手を握られた事も

傷の手当てをされた事も

ましてや抱き付かれるほど近くに居た事も

女の匂いを嗅いだ事も


なかった



女の手がこんなに細く白いことも

女の手首が折れそうなほど華奢なことも

女の手は指先にしか傷がないことも

女が柔らかいことも

女が暖かいことも

女から甘い匂いがすることも



ライは 知らなかった





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