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ミーシャは男性の好みのことで周りから訝しげにされるがそれでも彼女に想いを寄せる人物は多い




背中まで真っ直ぐ伸びた薄い茶色の髪は風が吹くたびにサラリと揺れる

その様に思わず手を伸ばしかけた者は少なくない


少し吊り上がっている薄緑の瞳は一見キツそうに見えるがコロコロと表情が変わり屈託なくよく笑うギャップに射抜かれた者も多いだろう


身長は女性として平均的な高さだがスラリと伸びた手足と比較的豊かな胸に細すぎない程度にくびれている腰は健康的な色気を纏っている


ふっくらした唇から零れる言葉はハッキリしていて彼女に見惚れているとバッサリ切られることもよくある


それでも周りを気遣い楽しそうに実家のパン屋で働く姿は買いに来たお客をも楽しませる

客の何割かがミーシャ目当てなのは周知の沙汰だ


ミーシャが考える様々な商品の発想力に目をかけている者もいる




要するに、

ミーシャはモテるのだ




そのためどこから漏れたのか従業員希望の男たちが店に押しかけて来てちょっとした騒ぎとなった

もちろん彼らの狙いは少しでもミーシャとお近付きになることである







「………住み込みでお願いする以上、一緒に過ごす時間も長いから変な気を起こすような人にはお願いできないの…」

「………………」



ミーシャが湧き上がる羞恥に耐えボソボソとお店に希望者が押しかけてきたときのことを話し簡単に経緯を説明するもライの反応はないしミーシャは顔を覆っているのでライがどんな表情をしているかも分からない


ミーシャは沈黙に耐えられず言い訳を述べるような心地でボソボソと言葉を続ける



「両親の信頼もあって腕にも覚えがあって住み込みで働いてくれるような家庭を持たない人も居たのだけど……なんというか………」

「…………なんだ?」


「……………………みんな、生理的に…受け付けなくて…」

「ブハッ」



熱の籠った目で見てきた男たちのことを思い出してミーシャが若干鳥肌を立てていると吹き出したような音がした

驚いて手を下ろしライのほうを見ればまたもや彼は蹲って痙攣している



「〜〜〜くっ、ハッ、あ、あんたも、……ッ、ンなこと、〜〜〜ッ言うんだな……ッ」



と、苦し紛れに言葉を漏らしている

どうやらライのツボを刺激してしまったようだ


湧き上がる羞恥心から逃げるように顔を横に背け「普通に言うよ」とミーシャが投げやりに言葉を放てばまたもやライに笑われてしまう

その笑い声にミーシャはなんだか肩の力が抜けてしまった


ここまで笑われてしまったならもうヤケだ

開き直ることにしたミーシャは肩を竦めて話を進めた



「だから両親に必死で訴えたの。変な男に私が襲われてもいーのかって。そしたら両親もわかってくれて従業員の選定は私に任せてもらえることになったの」

「……ッハ、クク…ッ!で?俺か?」



笑いと呻きを交互にこぼしながら尋ねてきたライにミーシャは「そう!」と肯定を前面に出して笑顔で答える



「ライなら信頼できるし喧嘩も強いしお仕事も探してるみたいだし丁度いいなって!何よりライになら、私っ襲われてもいいし!!」

「ブハッ‼︎」



爆弾発言を落とすミーシャにまたもやライは盛大に吹き出すと「………ッハ!〜〜〜ッッ、やっぱ、……イカれてるッ!!」と楽しそうに暴言で返した


どさくさに紛れて大胆に迫ってみたのに笑いで流されてしまい不満なミーシャは頬を膨らませジトリとライを睨むもおかしそうに身体を痙攣させている彼に不満はすぐに鎮静化された、ずるい


暫く痙攣していたライはようやく落ち着いたのか顔を上げ目元ににじませた涙を掌で拭う

そして愉しげに金の瞳を細めながらミーシャと視線を合わせると笑みで歪んだ口を開いた




「こんなきったねぇ不細工な野郎連れてったら、親泣くぞ」



と、楽しそうに話しているのにライはやはり未だ乗り気ではないらしい

ミーシャが唸りながら眉を顰めて「ライはカッコいいよ!」と言っても「ンなトチ狂えんのはあんただけだ」と素気無く返されてしまう


それでもミーシャは引かず更に眉間に力を入れると必死に反論した



「そんなことない!それに大丈夫!私の見る目は親も信用してるの!私が選んだ人だって知れば絶対賛成してくれるよ!」

「男の趣味が最悪なあんたの見る目をねぇ…」

「最悪じゃないもん!!」



力を込めて説得するがどうにも信じてもらえない

ミーシャは一つ呼吸をすると薄緑色の瞳に狩人(ハンター)の光を宿らせた



「わかった…」

「お?」

「絶対絶対ぜーーーーーったい!そんなことないって言えるけど!一億歩譲って、もし親がライの外見に対していい印象を持たなかったとしても!仕事をするうえでそんなこと関係ない‼︎」

「っ!」

「大事なのは信頼して仕事を任せられるかどうかだもの!私の両親だってそこはちゃんと分かってる!」



両手を拳にして胸の前で握りしめ意気込んで説得をするとライは驚いたように目を瞠ってミーシャを見ている

ミーシャも負けじとその金の瞳を力強く見返した


僅かな時間、金色と薄緑色がお互い眉を顰めて見つめ合う



次いで金の瞳のライは顔を顰めたまま少し困ったように頭をガシガシと掻く

狩人(ハンター)は更にもう一歩押す



「ライにとっても悪い話じゃないと思うの。期間はないから長期で働いてもらえると思うし…。あ!お給料もそんなに悪くないと思うよ!」



これでどう?と最後に金額を提示し念を押せばライは更に頭を掻き髪をグシャグシャにすると「あぁ〜ッ!」と唸った、かと思えばガクリと首を垂らして一段と低い声でボソッと言葉を溢す




「………親に反対されたら諦めろよ」

「!!」




またしても狩人(ハンター)の勝利である



ミーシャは嬉しくて飛び上がりそうな身体を必死に抑え目の前の青年に「ねぇねぇ」と声をかけると「…ぁあ?」と疲れたような声が返ってきた



「仕事受けてくれてありがとう」

「………」

「これからよろしくね!」

「…気が早え」

「大丈夫だって!だから、よろしくね?ライ」



緩む口元をそのままにミーシャが笑顔でライに伝えれば頭をあげたライはチラッと横目でミーシャを見ると顔を背けて小さな声で「………あぁ」と返事を返した




高い位置にあった太陽は既に暮れ始め辺りはすっかり橙色の世界へと染まり始めていた








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