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「は?」



金の瞳を丸くして口をポカンと開けているライにそんな表情もかっこいいとミーシャがときめいていると「何言ってんだ?」と呆れたような声が返された



「あ、もしかしてもう次の仕事決まっちゃってる?」



それならそのあとにでも来てもらえばいいかと働いてもらう前提でミーシャが考えているとライはますます怪訝そうな顔をした



「決まってはねぇが…」

「本当?良かった!じゃあウチどうかな?丁度住み込みで働いてくれる人探してたの!」

「はぁ?」



ミーシャの突然の提案にライは調子の外れた声を出すがその声さえも美しい


ライが驚くのも仕方がない

ミーシャ自身まさかこんなことを提案することになるとは思っていなかったが考えれば考えるほどライは適任だと思えて胸が弾むのを抑えられない



「あのね、」とミーシャは声を弾ませながらライに事の次第を説明し始めた









ミーシャの家は小さなパン屋だった

元々はミーシャが生まれる前に両親が始めたものだ

細々と暮らしに困らない程度の稼ぎで慎ましく生活していた


ミーシャは小さな頃からパンが好きだった

どんなものでもパンに合わせていたためか途中からおかずとパンを一緒にできないかと考え始めた


それまでのパンは丸く硬いパンか細長いこれまた歯応えのあるパンが主流でシンプルなものだった


そこでミーシャはまずその硬い丸パンの中に大好きな母のシチューを入れられないかと考え父に相談した


すると父は見事ミーシャの要望に応えあまりの美味しさにほっぺたが落ちてしまいそうな絶品を作り上げた


ミーシャの喜ぶ姿に父も嬉しそうにしていてすぐにその【シチューパン】はお店に出すことになったのだがこれがまた大いに売れた


その【シチューパン】だけで終わることはなくミーシャはそれからもパン好きが高じて次々に新しい【おかずパン】を提案していった

中には失敗したものも勿論あるが新しく合うものを両親と見つけるのは楽しかった


そこからお店は段々と繁盛していきここ数年では開店数時間で売り切れてしまうほどとなった


流石にそれではパンを求めに来てくれる人達に申し訳ないとお店を改装して店舗を広くすることにした


ただ、お店自体は想い入れがあるためそこまで変えることはせず住居にしていた部分を改装してそこでパンを販売することにした

今までお店として使用していた場所は購入したパンをその場で食べることができる簡単な休憩場所のような空間にしようと家族で話し合った


それに伴いお店の近くに新しく家を買いミーシャ達一家はそちらに引っ越すことにした


元々慎ましやかに暮らしてきたミーシャの家族はお店が繁盛してもその生活が変わることがなかったため準備資金諸々の必要資金も全く問題なかった





「けどね、流石に夜中お店に誰も居ないっていうのも物騒でしょ?商売道具である材料や道具はどうしてもお店に置かざるを得ないし…。

そしたら父だけ店で寝るって言い出したんだけどそれを聞いたら母もそこで寝るって言い出して…」



ハァと溜息を吐きながらもこれまでの経緯を話すミーシャにライは呆れた顔を返す



「だから代わりに店で寝泊まりする従業員ってことか?」

「そう!ライなら喧嘩も強いし何より私も嬉しいし!」

「おまえやっぱ馬鹿だな」

「なんで!?」



やっと当初の勧誘に戻れて嬉しそうに肯定したミーシャだったがライには素気無い返事で返された


ライが適任だと心の底から思っているのに何故馬鹿にされたのか分からず困惑と不満の表情を見せるミーシャにライは呆れていても変わらず美しい吐息を吐き出しながら柳眉を寄せてミーシャに言い放つ



「ンな大事なトコ、よく知りもしねぇ奴に任せんなよ」

「ライのことなら信用してるよ」



なんだそんなことか、とミーシャが簡単に返せばライはギョッとしたような顔をして固まってしまった


不思議に思ってここぞとばかりに御尊顔を堪能しつつ反応を待っていればその尊い顔は次第に苦虫を噛み潰したような表情へと変わる

そして頭をガシガシと掻きながら大きな溜息を吐くと美声を数段低くしてミーシャに問いかけた



「……なんで、そう思う」



ライの真剣な声音にミーシャは「え、だって…」と答えながら真っ直ぐ見つめてくる金の瞳をしっかり見返した



「ライ、お金拾わなかったでしょ?」

「あ?」

「ライが気絶させた人たちからお金取り返す時、自分の分しか取らなかったじゃない」

「っ‼︎」



息を呑み驚いた表情で凝視してくるライにミーシャは不思議そうに首を傾げた


あの細道でライは倒れていた男から金銭の入った袋を回収していたが取り返す相手に見当がついているようだった

ライの一番近くで倒れていた男の懐から金銭の入っていそうな革袋が飛び出していたにも拘らずライは態々移動して違う男の懐から袋を取り出していたのだ

その様子をミーシャはしっかり見ていた


だからきっとアレがライの稼ぎで且つ奪われていたお金なのだろうと思ったのだが違ったのだろうか


それなら何故一番近い相手から拾わなかったのだろう

ミーシャは己の推察以外に思いつくことがなかったため素直に尋ねてみることにした



「なんで一番近い人から拾わなかったの?」

「………」



ミーシャの問いにライは顔を手で覆うと



「ほんッッとタチがわりぃ…」



と掠れた声で小さくぼやいた






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