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天にも登る気持ちというのはこういうことを言うのかもしれない
ミーシャは嬉しくて嬉しくてさっきとは違う意味で涙が溢れてきた
この場限りじゃない
今後もライに会える
彼と話ができる
それを彼が許してくれた
全身を巡る歓喜が抑えられず身体が震え涙が溢れ緩む口元を押さえて歓喜の雄叫びを必死で堪える
これからも、一緒に居られる
そのことがミーシャは嬉しくて嬉しくて歓喜の渦から中々抜け出せない
どうしても自身から湧き上がる衝動を抑えることができないミーシャはそのまま己の感情に従うことにした
ーーーガバッ‼︎
「大好きッッッ‼︎‼︎‼︎」
「なぁっ⁉︎⁉︎⁉︎」
未だ項垂れていたライに向かって力の限り抱き付いたのである
勢いを押し殺せずそのままライもろとも地面に倒れ伏してしまいその衝撃で傷が傷んだライは呻き声をもらす
しかしミーシャはそれにも気付かずライの首に回した腕を強めて彼の首元に涙で濡れた顔を押し付けた
汗と土の匂いがする男臭いライの香りをここぞとばかりに堪能するのも忘れない
狩人に押し倒された獣は痛みで顔を歪めていたものの事態を把握したのか自分に抱きつく人物に気付くとギョッとした顔をし身体を硬直させる
徐々にその肌を赤く染めたかと思えば遂に全身を真っ赤に茹らせ「離せっッッッッッッ‼︎‼︎‼︎‼︎」と傷が痛みそうなほど力のこもった怒声をあげながらへばりつくミーシャを力尽くで引き剥がした
「〜〜〜ッッッ言っとくがっ‼︎好きだなんだは別だからな⁉︎」
「えぇっ!?」
「ったりめぇだろぉがッッッ!!!!」
身体中を塗りつぶしたように赤く染め上げながらも思いっきり睨んでくるライにミーシャは涙を拭いながら不満の声をあげる
だが真っ赤な獣は薄い唇の下で食いしばった歯の間からフーッフーッと息を漏らし肩を揺らしながら尚も言葉を重ねた
「あんたがしつッけぇから…っ!」
「………………分かった」
渋々頷くミーシャにライは呆れたような溜息を盛大に吐くがその身体は変わらず塗り潰された色のままだ
(会ってくれるだけでも今は凄く嬉しいしそれから好きになってもらえるように頑張ればいいよね!)
不屈の精神である
ライから『好きにしていい』と許可を得た狩人は我が意を得たりとばかりに更に強気に出てみることにする
「じゃあ今はそれでいいから、もう一回抱きついてもいい?」
「ンでだよっ!!!!大体今はってなんだ!!!!」
「え、それは勿論将来的には私と恋愛してもらうっていう意味で…」
狩人の武器である不屈の精神を隠さず言葉にする強気なミーシャにライは疲れたように脱力した
「頼むからその沸いた頭をどうにかしてくれ…」
「じゃあ抱きついていい?」
「……なんでそうなるんだ」
「抱きついたら大人しくなると思う!」
「ふざけんな、てめぇでどうにかしろ」
どうあっても抱きつくのを許してもらうことは無理そうだ
とてつもなく残念に思ったミーシャだったがライを困らせて嫌われることは避けたい
自身の欲を必死に押し込めて「じゃあ」と言葉をかける
「顔の怪我、手当てしていい?」
「ぁあ?」
「まだ消毒できてなかったから」
実はライの御尊顔を見るたびにその傷が気になってもいたのだが、正直それどころではなかったため未だ手当て出来ずじまいだったのだ
ライもその事に気づいたのか初めは口をポカンと開けて呆けていたが直ぐに「ブハッ」と吹き出すとすぐさま蹲った、またもや傷に響いたらしい
横腹を押さえて痙攣しているが再び血が出始めていないか心配だ
暫く痙攣していたライは「ハァ〜ッ」と笑いを含んだ溜息を長く吐くと片膝を立て直しそこに頬杖をついた
金の瞳を面白そうに細め傷のある口端を軽くあげ「勝手にしろよ」と耳に通る素敵な低音声をおとし
ミーシャを悶絶させた




