その17 記憶喪失はいい角度で頭叩けばいいってどっかで聞いた。そしてイビルバスターへの道
「「記憶喪失~!」」
「うんどうやらそうみたいだ」
俺はイシュと柚陽子にそう伝える。
「とりあえず名前がないと呼びづらいからえっと……よし君の名前は”紅葉”な」
「紅葉ってそこにあるカードが引っかかってた木の名前じゃない。まぁ悪くないけど」
「紅葉……私の名前は紅葉。わかりました。それで私は何をすればいいんでしょう?」
ありゃ? こりゃ神人としての基本知識も忘れちゃってるぽい?
「基本は戦闘かな? そうでないときは好きに過ごしてくれて構わない。とは言っても基本コアからは離れられないんだけどね」
「戦闘ですか? はい、なんとなく理解しました。私の体に戦うための力が眠っているのを感じます。問題ありません」
うーん元々か知らないけど喋り方が硬いなぁ。それとも記憶喪失の影響かな?
そうこうしているうちにバスの発車時刻が来て俺たちは実家へと帰るのであった。
「うーん記憶喪失ねぇ」
定番の夕食の後みんなに紅葉を紹介した。(死にかけたことは内緒だ)いまは父親の言ったとおり紅葉の記憶喪失に関してだ。
「どうやったら治るかな?」
「明確な治療法はなかったはずだぞ確か」
やはりそうかとなると普通に過ごしてもらってきっかけを待つというのくらいしかないなぁ。
「修一ちゃん。ちょっとこっちに来ましょうか?」
あれ、母親から怒りのオーラがそのそばにはイシュと柚陽子が。
あ~あいつら俺が死にかけたことを喋ったな!
「どうしたんだい優子。そんなに怒って」
「これが怒らずにいられますか。この子はもう無茶をして!」
そこから内容を聞いた父親と母親によるW説教コンボの完成である。
なかなか二人の怒りは収まらず真夜中になってようやく開放された。
二人に心配をかけてしまったことを反省しつつ俺は眠りについた。あ~紅葉の部屋新しく用意しなきゃなぁ……
あさ、柔らかい感触で目が覚める。はぁ、またイシュか。ん?でもイシュにしてはボリュームが足りないような。
「う~ん、お兄ちゃん……」
って、紅葉かよ。しかしお兄ちゃんか失われた記憶に関係してるのだろうか?
あ、目が覚めた紅葉と目が合った。
「お兄ちゃんだぁ、えへへ」
そう言って紅葉は俺の体をサバ折りに……ってちょっとまってギブギブ紅葉さん! これ以上は折れちゃいますから! あーっ
……俺は薄れゆく意識の中で”年上の妹ってありじゃね”などと益体もないことを思うのだった。
神人協会で紅葉の部屋と前回忘れていたメアリーの買い物も合わせて行い施設の準備は整った。例の事件については流石に紅葉のカード一枚ということはなく数千万シグマが俺の口座に振り込まれたそうだ。これは神人と邪人を掛け合わせる研究があることの口止め料も含まれている。
それが終わってひと心地ついて紅葉もうちの仲間たちとなれてきた頃に月一のお仕事の時間がやってまいりました。
本来なら素養が瀑上がりしたのでLRクラスの武器2つを装備させたかったのだが10歳まではLRクラス取り扱い禁止なる謎の掟のせいで装備できず。
紅葉には
芭蕉扇(UR):風属性の攻撃を全体攻撃化し威力を5倍にする
を装備させた。攻撃タイプが風だったためだ。がどちらにせよレアでLv1の紅葉はこの狩場ではお荷物になるだろう
魔物退治をしつつ芭蕉扇の効果を考える。威力を5倍にすると言う割には魔物にダメージが通った様子はない。もしかしたらこの威力というのは防御を抜いたあとの最終ダメージを5倍するのかもしれないな。とするとこの装備は弱いやつよりむしろ強いやつが持つ雑魚殲滅武器なのかもしれない。
あと副次的な効果として芭蕉扇の攻撃時に風の勢いで魔物の動きがほんの少しの間だが一時制限されるのだ。これは武器の説明に載ってなかった新たな発見だな。これのおかげでATKの低い紅葉も戦闘で役割を持つことができている。
それにしてもと仲間の構成を見てみれば見事に遠距離アタッカーばかりだ。ぽよはタンク役なのでアタッカーとはちょっと違う。次に仲間にするなら近距離物理アタッカーがほしいなぁ。
などと考えながらこの狩場レベルで紅葉を入れても問題ないことを確認できた。まぁいざとなったらぽよのかばうがあるしね。
新たな仲間が入り問題なくパーティが機能することに安堵し俺の頭を悩ますのは進路のことである。先日、合宿で会った白神さんからこんな封書が送られてきたのだ。
――邪人狩り育成学校への入学案内
イビルバスターはバラムマスターの上位に位置する間違いなくエリート集団である。白神さんの意図はわからないが少なくとも目には止まったのだろう。もしかしたら合宿所の例の件もどこかで聞いたのかもしれない。
でもなー遊んで暮らせるほどのお金はあるし無理にバラムマスターをやる必要は……いや、そもそも俺は無理にバラムマスターになろうとしていたのか? ……憧れたはずだ。バラムマスターのヒーロー像に。ならば決まりだな。向こうから手を差し伸ばしてきたんだ、その手を取ることも吝かではない。
なってやろうじゃないかバラムマスターの頂点! イビルバスターに!




