その15 ドーピングアイテムで命の危機
投稿が遅くなって申し訳ございません
とりあえず俺は昼間話題に出た3階の資料室に侵入した。
メアリーは着替えのため端末に戻している。
「うーんやっぱりかすかだけど聞こえるなぁ」
耳をすませば”助けて”と聞こえるか聞こえないかの音量で聞こえてくる。
うーんちょっと試してみるか。
「ゴブ爺、起きてる?」
「なんですかな主殿。ちょうど睡眠を撮ろうとしておったところですが何かありましたか?」
「ちょっとこの声の主と”意思疎通”ができるかどうか試してほしいんだ。今召喚する」
そう言ってから俺はゴブ爺を特殊召喚する。
「はぁ、この助けてという声の主とですな。少々お待ちくだされ」
ゴブ爺は何度かウンウンとうなずくと壁際においてあった骸骨の標本の首をぐるりと90度横にひねった。するとなにの変哲もなかった本棚が突然動き出し隣の部屋へと続く通路が現れた。
「主殿、戦闘態勢をお願いします。どうやら守護者がいるようです」
守護者がいるってそれじゃぁ柚陽子の言っていた行方不明の1000枚のカードが俄然真実味を帯びてくるじゃねーか。
「それと守護者は主殿も狙ってくるそうですお気をつけを」
バラムマスターを狙うってことはそれは邪人じゃねーか! いやただの機械仕掛けの人形って線もあるな。
ともかく俺はゴブ爺を一旦端末に戻し戦闘モードで3人を召喚した。
「今猛烈に嫌な予感がして飛び起きたんだけどなに? なんかあったの」
ちょうどいい、起こす手間が省けた。柚陽子たちににかいつまんで経緯を説明し戦闘になるかもしれないと伝える。
「眠いけどお姉ちゃん頑張っちゃうよ~」
「ぽよ、ぽよぽよ!」
夜も遅いというのに気合は十分のようだ。俺たちは隣の部屋への通路をゆっくりと進んでいく。
瞬間、キィンと音がなって俺の頭の上をずいぶんと離れて何かが飛んでいく。
「ほうほうこれはこれは。頭を狙ったつもりだったがこのような子供が侵入者とは」
柚陽子が「”Are you ready”いつでも行けるわよ」とささやきかける。
「お前は何者だ」
「番人さ。もうず~っとずっと長い間この部屋に閉じ込められた……な」
「なぁあんた」
「もし俺のことを哀れに思うなら」
「殺してやってくれないかい?」
そう言うと盾とコンポジットボウを持った鎧の騎士は俺たちに襲いかかってきた!
「ゴブ爺! ボルトハンマーだ!」
ゴブ爺は俺の声に答えて柚陽子のスキルでいつでも打てる状態になっていたボルトハンマーをぶっ放す。
今の俺達の最大の一撃だこれで倒れないようなら撤退を考えたほうがいい。
鎧の騎士に向かっていったボルトハンマーは持っていた盾で防がれる。防がれるだとぉ! 成長途中とはいえDEF無視10000ダメージを耐えるのかこいつは! とそこまで思考が及んだところでピシリと鈍い音がなり鎧の騎士が持っていた盾が砕け散った。
「おーあぶないね~この身代わりの盾がなかったら即死だったよ」
「殺してくれというわりに身代わりアイテムとかずいぶん生き汚いじゃないか」
「そりゃこれは与えられたものだからねぇ。おまけに自殺もできないと来てる」
「操られているのか? バックの組織の名は?」
「操られているのかは残念ながら不正解。作り変えられているが正解だぜ坊や。バックの組織はもういない。全員邪人にしぼり尽くされちまった。豚のような悲鳴を上げて、な」
邪人は人間の精神エネルギーを食らう、そういうことだろう。しかし作り変えられているとは?
「なーにどこぞの馬鹿な人間が考え出したことさ。神人と邪人をかけ合わせたら一体何が生まれるんだろう。ってな。俺はその哀れな被害者435号ってところか」
「っと溜まったぜ。長話にお付き合いいただき誠にありがとうござい。沈んどけ”怨霊共鳴”」
鎧の騎士のスキルの発動とともにあたり一面に不協和音が鳴り響く。それはイシュをゴブ爺をぽよをそして俺を床にはいつくばさせた。
「じゃ、マスターさんの心臓を貫いてお仕事はおしまい。ああ、また退屈な日々が始まるのかぁ」
ズシャ、ズシャと鎧を響かせながら仲間たちを避けてまっすぐ俺に向かってくる鎧の騎士。くそっ、うごけ動け俺の体。
「修一に手は出させないわ」
端末の中にいたせいか先程の攻撃の影響を受けていないらしい柚陽子が顕現して俺の前で立ちはだかる。やめろ! お前に戦う力は!
「ギャンッ!」
鎧の騎士の前に柚陽子は無残に蹴り飛ばされる。
「はい、これでおーしまい」
鎧の騎士は剣を抜き俺の心臓の上に剣先を当てるとゆっくりと……本当は一瞬だったのかもしれないが……ゆっくりとめり込ませていった。
つらい。こわい。くるしい。いやだ。あつい。しにたくない。さむい。たすけて。つらい。こわい。くるしい。いやだ。あつい。しにたくない。さむい。たすけて。つらい。こわい。くるしい。いやだ。あつい。しにたくない。さむい。たすけて。つらい。こわい。くるしい。いやだ。あつい。しにたくない。さむい。たすけて。つらい。こわい。くるしい。いやだ。あつい。しにたくない。さむい。たすけて。つらい。こわい。くるしい。いやだ。あつい。しにたくない。さむい。たすけて。つらい。こわい。くるしい。いやだ。あつい。しにたくない。さむい。たすけて。
俺の心臓を貫いていた剣が抜かれる。意識がまだあるのが不思議だった。息は……できる……そのことに安堵するより不思議と心は澄んでいた。これが無我の境地なのか……? と、その瞬間
「再生の光」
柔らかな光が俺の体を包み込む。これはイシュの体力全回復スキル!
「再召喚を!」
「させるかよ!」
死にかけたというのに周りを驚くほど冷静に見ることができる。鎧の騎士の剣筋を見切りバックステップでかわすくらいには。
「神人再召喚」
俺の掛け声とともに倒れていた仲間たちが粒子となって消え俺と鎧の騎士の間に再び現れる。と同時に結構な量の生命点が体から抜けてゆく。戦闘中の再召喚によるペナルティ化よくそったれ。
「柚陽子! 大丈夫か?」
「大ジョブジョブ。私達本体はあなたのコアの中に入ってるんだからそうそうやわじゃないのよ」
「あ~先にコアの方を潰しておけばよかったか」
「変なことは考えないで。さっきのトールハンマーまた打てる状態になってるからね」
「いや、もう何もしないさ。身代わりアイテムもなし……お前ら助けてって聞こえてたろ。あれは俺の声でもあるんだ。この神人とも邪人とも名乗れない中途半端な俺を殺して助けてくれって」
「……最後に言い残すことはあるか」
「ないな。ムカシのことも思い出せないそれが唯一心残りなくらいか」
「最後に俺に突き刺したものは何なんだ。あれは殺すための道具じゃないだろ?」
「くくく、くふふ、くあーっはっはっは。死ななかったから殺すための道具じゃない! 何たるお子様。世界を知らない。世の中には死ぬことより恐ろしいことがた~くさんあるんだぜ? これはいわゆるドーピングアイテムってやつでな、生命点や素養を引き上げる代わりにいつか死よりも苦しい発作が引き起こされるってやつだ。」
「趣味の悪い……ゴブ爺、ボルトハンマーでトドメを」
俺の指示にゴブ爺はうなずくとボルトハンマーを解き放った
「おれをコロシテクレテあ・り・が・……」
……こうして平穏無事に終わるはずだった合宿の最後の夜はとんだ大冒険で終わったのだった。




