08.エロエルフ、冒険者ギルドに向かう
金貨を渡したお釣りは90枚の銀貨だった。
門番が焦るはずだ。こんなにたくさんのお金は普段、用意がないのだろう。
テーブルの上にデデーン!と積み重ねられた9組のコインの山を前に困ってしまう。
「はい、ティアさん、これが街の滞在許可証ですからね」
「おい、なんでお前、そんなに近づいてんだ!」
「さりげなく手を触ろうとするんじゃねーよ!」
外野が煩いが、聞こえなかったフリをする。
お金と引き換えに、かまぼこ板より二回りくらい小さめの木の板を渡された。板には焼きごてで印章と文字らしきものが刻まれている。
これが街の滞在許可証か。なくしたらまた再発行しないといけないらしい。
通常、身分証を持っている旅人の通行料は銀貨1枚。
この板っきれが差額の銀貨9枚分ってことだ。
少し聞き取りしたところによると、銅貨1枚もあればランチは食べられるらしく、となればおおよそ1枚あたり1000円くらいの価値だろうか?
銅貨10枚で銀貨1枚換算。
と言うことは銀貨は1万円くらい?
この板っきれだけで9万円の価値だ。絶対になくさないようにしよう。慎重に腰のポーチにしまう。
なぜ金貨になるといきなり単位が跳ね上がるんだろう?
お釣りから考えると、銀貨100枚換算みたいだ。
この聖オルセアン金貨ってのが特別高価なんだろうか? なんか、ただの髭のオッサンが刻まれてるだけのコインなんだけど。
じっくり眺めると銀貨よりふた回りくらい大きくて、分厚いかな?
ええーっと、1枚1万円の銀貨が100枚ってことは……えっ、嘘っ。
これ1枚で100万円?
それを10枚持ってたから、合計1千万円!?
ハーハーといきなり動悸が激しくなる。
ちょっと落ち着け、俺。
何度か計算し直してみるが、間違いない。
こらー、運営さん!
初心者にどれだけのお金を渡してんだ!
実際の物の価値は若干、違うかも知れないが、俺は当分、生活に困ることはなさそうだ。
まだ9枚の聖オルセアン金貨が入っているウェストポーチを、急にずっしりと重く感じる。
ぜ、絶対にこんな大金を持ち歩いてるなんて知られないようにしないと。俺はこっそりポーチを背後に回してマントの陰に隠した。
いまさらこんなことしても無駄かも知れないけど。
「じゃあね、ティアちゃん。もしよかったら、また遊びにおいでよ」
「コミュの森に行く時はこの西門をよろしく~」
門番さんたち総出で見送られる。
ちなみに銀貨を入れる袋もなかったので、帆布みたいな厚い布で作られた小袋をくれた。
いい人たちなんだけどな、うん。
胸元を見る目がギラついてて怖いな。
左手にずっしりと小袋が重い。
早く安全なところにお金を預けないと。
俺は門番さんたちが教えてくれた冒険者ギルドへ向かっていた。
そこで身分証を発行してもらうのだ。
お金なんかもギルドで預かってくれるらしい。
危険な冒険者稼業。クエストに全財産を持って行けるわけがないからな。
身分証は世界共通で、どのギルドでもお金を下ろせるし、ギルドと提携してるお店であればカードだけで買い物ができると言う話だった。
ICカードそのものだな。
剣と魔法の世界かと思いきや、意外と科学も発達してるみたいだ。
描いてもらった地図を手に、テクテクと道を歩く。
文字は読めないが、要所要所にここが八百屋とか絵を描いてくれているので、なんとなく道は分かった。
ここが冒険者ギルドだろうか。
やっとのことでそれらしき建物に辿り着いて、ゴクリと唾を飲み込む。
さぁ、いよいよ、ここから俺の冒険が始まるんだ。
スライムとの戦い?
そんなの覚えてないね。
あれはノーカウントだ。
(๑• ̀д•́ )✧




