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07.エロエルフ、入国審査に挑む!


 俺は詰所の一室に通された後、しばらく一人で放っとかれた。

 素朴な木の椅子に腰かけたままジッと待っていると、扉の向こうから言い争う声が聞こえてくる。


「なんでなんですか。先輩たちは哨戒の時間でしょう。俺たちが相手をしますよ!」

「いいや、街への客人は丁重にもてなさないといけない。お前らは見張りを変われ」

「こんな時だけずるいですよ!」


 どうやら、誰が俺の相手をするかで揉めているようだ。

 ゲームの世界が現実になったショックで忘れてたが、俺は美少女エルフで、ボインなのだ。

 顔も念入りにリタッチした。

 まだこの世界に入って確認できていないが、アプリで作成したアバター通りなら超絶美少女のはずだ。


 ちょっと希望が湧いてきたな。

 いつまでこの世界にいないといけないのか分からないが、生活のために、何よりせっかくファンタジーな世界に来たんだから当初の目的通り冒険がしたい。


 強そうな男の冒険者を掴まえてパーティを組んで貰えばいいだろう。

 こんな美少女だったら初心者でも、足を引っ張るなとか怒鳴られることなく優しく教えてくれるはずだ。

 この世界に来て初めて希望が見えてきたな!


 結局、門番たちはドヤドヤと4~5人で部屋に入って来た。ひとまず実験とばかりに、彼らにニッコリと笑顔を向ける。

 それだけで若い兵士たちはだらしなく顔をニヤケさせた。

 ちょろいな。お茶とお菓子まで出てきたぞ。


「そっ、それで、リビエールの街に来られた目的は?」


 上ずった声で質問が始まる。

 まんま税関みたいな感じなんだな。

 海外旅行なんてしたことないから、映画やドラマの知識だけど。


「私、冒険者に憧れてたんです! こちらの街には冒険者が多いと聞きまして」


 さっきまでは素で話していたが、ここからは女言葉でロールプレイしてみる。


「冒険者になるため、と。それでどのくらいこの街に滞在される予定ですか?」

「それは、いい仲間が見つかれば、しばらくはずっと」


 俺の言葉に男たちが色めき立つ。

 なんで俺は門番なんだっと、拳を握って悔しがる奴もいたくらいだ。


「それで、あなたのお名前は?」


 なんだか入国審査って言うより、お見合いしてるみたいな感じになってきたな。

 頬を染めて俺に質問してくる若い兵士に微笑んで、アバターを作成した時に入力したキャラ名を答える。


「ティアと言います」


 名前に特に深い意味はない。捨てキャラのつもりだったからな。

 厨二的だが、涙の雫……ティアーズドロップから名づけた。

 エメラルドグリーンの瞳が雫型の宝石を連想させたからだ。


「ティアちゃんかー。俺はレダ、よろしくな」

「ずるいぞお前だけ。俺はダグラスだ」

「テッドだ」


 いきなり数人の男に取り囲まれて、右から左からワイワイと話しかけられる。

 ううーん。一気に喋られても、覚えられない。


「よ、よろしくお願いしますね」


 俺の前途は順風なのか、多難なのか。

 判断がつかず、俺は引きつった笑顔を返すしかなかった。


(´◡`)

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