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06.エロエルフ、街に着く!

 

 人が行き来する内に自然にできたのだろう。

 丘に刻まれた道は森から街まで続いていた。


 絵画で見るような、外壁に囲まれたこぢんまりとした中世風の街だ。

 最初は可愛いおもちゃのブロック作りみたいに見えていた街は、近づくにつれ物々しさを増した。外壁が7〜8メートルはありそうなほど高く、そびえ立っていたからだ。


「うわぁ……」


 近づくにつれ、ポカンと口を開けて見上げてしまう。

 道は門へと続いていた。厳つく人を寄せつけない雰囲気の町壁にぽつんと開いている、アーチ状の門だ。大きさは馬車が通り抜けられるくらいだろうか。

 真っ昼間である今、その門は大きく外に向かって開け放たれていた。


 こ、このまま門をくぐっても問題ないんだろうか?

 門の左右に控えている、門番らしき屈強な男2人をビクビクと眺める。


 彼らは槍を手に、厳しい顔で道を睥睨(へいげい)していた。

 ヒョコヒョコ近づいて来る俺のことなど、とっくに気づいていたのだろう。

 俺が挙動不審だったからだろうか? ちょいちょいっと手招きされる。


「エヘヘ〜」


 若干、引きつっているかも知れないが愛想笑いを向けてみる。


「どうした? 旅人なのか? このリビエールの街に用があって来たのではないのか?」


 優しく問いかけられて、俺はホッと息を吐き出した。詰問とかされなくて良かった。


 話しかけながらも男たちの視線は一点に釘づけになっていた。

 俺も中身は男だから分かります、はい。

 つい、ここ、見ちゃいますよね。


 ぱっつんぱっつんに膨らんでいる自分の胸を見下ろす。

 布の服が標準サイズなのか、かなりキツイんだよな。そのせいでボタンとボタンの間がチラッとめくれてしまっているくらいだ。


 こうして親切に声をかけて貰えるなら、女の身体もそう悪くないかもと思い始める。

 男だったら今頃、取り囲まれて捕縛されてそうだ。


「ええーっと、そうですね……はい、街に入りたいです」

「女1人旅とは珍しいな。よほど腕に自信があるのか。何か身分証は持っているか?」


 えっ? 身分証? そんなものいるのか?

 慌てて服をゴソゴソと探る。

 よくよく見ると、腰に小さな革のウエストポーチを身につけていた。

 蓋を開けて中を確認してみる。


 コインが10枚、魔晶石が5つ、回復剤や魔剤らしき瓶などが入っていた。

 あ、これ、初心者向けの初回登録ボーナスだ。

 こんなところはゲームの設定が反映されているんだな。


「あ、あの、身分証はないみたいです。これ以外の荷物をなくしてしまって……」

「それは災難だったな。身分証がない場合、保証金は銀貨10枚だ。払えるか? なに、心配しなくてもギルドで身分証を再発行するか、もしくは問題を起こさなければ街を出て行く時に差額は返金する」

「こ、これで足りますか?」


 ウェストポーチに入っていたコインを1枚取り出して、おずおずと差し出す。

 すると門番たちは顔色を変えた。


「聖オルセアン金貨か……ちょっと待ってろ。釣りが足りるか確認してくる」


 1人の男が門の横の詰所のようなところに駆け込んで行く。

 残ったもう1人は、金貨を手に所在なく立ち尽くしている俺に呆れ顔だ。


「よく、そんな金貨なんか持っていたな? なけなしのヘソクリか? それまで失わなくてよかったな?」


 な、なんだろう。このコイン、めちゃくちゃ価値が高いみたいだ。

 いや、俺、これ10枚も持ってるんすけど……。

 たら~っと冷や汗が出てくる。


 あんまり見せびらかしたらいけなかったんじゃない?

 大金を持ってると知られたら変な輩に絡まれるかも知れない。

 カツアゲなんてされた日には、非力な女の身体だ。まったく敵う気がしないぞ。


 いまさらだが、こっそり掌の中にコインを隠す。

 昼間の暇な時間帯らしく、門番以外に通行人がいなくて助かった。


 戻って来た男が詰所の扉のところから俺を手招きする。


「こっちに来てくれ。中で手続きする」


 言われるがままに門番さんの後について、俺は詰所の中に足を踏み入れた。


( ̄Д ̄;;

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