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58.新スキル発現!?


 おっさんに手渡された弓の弦をビヨーンビヨーンと引っ張ってみる。

 レベルが上がって俺の筋力も少しは上がってきたからな。一般人よりは、ちょっと強くなってると思う。

 弓を引くのは大丈夫そうだ。

 問題は命中度だな。


「こんな感じですか?」


 テレビとかアニメの見よう見まねで構えてみる。

 どう考えても乳が邪魔だな。

 肩が凝るとか、足元が見えづらいって以外にも、デカメロンには様々な欠点があった。

 実際、女になってみないと分からない問題点だった。


 でも、○っぱいにはそれを押して有り余る素晴らしさがあるからな!

 俺たちに大きな夢を与えてくれる!

 だからノープロブレムだ!


 俺はメロンを避けて右側でキリリと弓を引き絞った。


「フン。なかなか様になってるじゃねーか」


 ふっふ。俺も伊達に長年、オタクをやってきたわけじゃないんだぜ。なんでも形から入るのがオタクだ!

 いやー、これは俺もしちゃうのかな。アーチャーデビュー!


 おやっさんに指導されながら矢を番えて、ワサの群れとは逆方向に弓を引く。

 特にどこを狙ったわけでもないので俺の放った矢は草原へと消えていった。


 タローもやりたそうに俺を見上げてきたので、弓と矢を渡してやる。


「いいっすよね?」

「ま、数本ならかまわん」


 タローは造作もなく、軽々と弓を引いた。いっかーん。実はすでに筋力抜かれている!?

 お、親としての威厳が……。


「うむ。筋はいい」


 おやっさんはタローを見てあご髭をさすっている。

 タローが2本ほど矢を放った時点で俺はその手から弓と矢を奪い取った。


「さ。矢がもったいないから、あとはママに任せなさい」


 モンスターを引きつけるなんて危険な役割は大人の役目だからね! まだ小さいタローにやらせるわけにはいかないよね!

 タローは感心しきりの様子で俺をワクワクと見上げてくる。

 うっ。純真な瞳が心に痛いわ。


「他の冒険者もやって来たな。鉢合わせる前にちゃっちゃとやっちまうか」


 おやっさんが指さす方向を見ると、4人組のパーティが街からこちらへと向かってくるのが見えた。

 全員、まだ15~6歳くらいに見える。かなり年若いパーティだ。

 なりたての冒険者なんだろうか。意外とワサ狩りって、初心者パーティ向けのクエストなのかも知れないな。


 これは俺でもできるような気がしてきたな!

 ベテランっぽいおやっさんもいるし、きっと大丈夫だろ!

 草陰に隠れながら、3人でもそもそとバイソン……もといワサに近寄っていく。


 近くで見るとすっげーでっかいなー。


「いいか? ワサはほとんどがオスで、メスが極端に少ない生物だ。だからメスを大事にしている。群れの真ん中にいる角のない個体がメスだ。絶対にメスには当てるなよ?」


 ノオォォォ! どうしてそういうフラグ立てちゃうの?

 弓を番える手が震えてきた。


「メスに当たったらどうなるんですかね?」

「そりゃまぁ、凄いことになる」


 あご髭をさすりながら、そんな軽い感じで言わないで!


「や、やっぱりタローに任せよっかなーとか……」

「こんだけオスがいるんだから、普通、狙ったって当たんねーよ。さぁさっさとやれ!」


 バシンッとおやっさんの掌が俺の背中を叩く。

 あっ。矢が飛んでっちゃった……。


『ブリージングうぅぅぅぅ!』


 慌てて涙目で呪文を唱えるが、時すでに遅し。って言うかサークレット、身につけてなかったわ。

 俺たちの周囲にはそよっと涼しいそよ風が吹き渡った。


 無駄撃ちした魔法を尻目に、俺の放った矢はそれが運命だったとでも言うように、トスンと角のない個体に突き刺さった。

 まるきりダメージなんて与えてなさそうなのに、ブモーっと、メスのワサの悲しそうな鳴き声が草原に響き渡る。


「絶対に当てるなって言ったろーが!」

「それ、絶対にフラグですから!」


 怒鳴りあう俺たちの目の前で、草原中のワサが一斉に鋭い視線をこちらへ向けた。



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