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52.エロエルフには友達が少ない!


 観客たちは楽しそうに歓談しながら三々五々と広場から去っていった。

 退屈しのぎにでもなったんなら、こんなバカげた対決もやった甲斐があったってもんだ。

 アーマンドたちは観客席に使ったベンチなんかを片づけたりしている。


「わたくし……本当は自分に自信がなかったんですわ」


 彼らの作業を眺めながらリュドミラがポツリと呟いた。

 俺たちは元に服に着替えてステージの前に立っていた。リュドミラの服は際どいスリットが入ったロングスカートだったから、あのドレスと大した違いはなかったけど。

 タローはまだ席に座っていて、隣にいたおじいちゃんに貰ったらしきお菓子をあむあむとご機嫌で食べている。


 聞こえてきた囁きに横を向く。リュドミラは最初に見た時みたいなお高くとまった表情ではなく、か弱い少女のように見えた。

 その恰好からお姉さんみたいに見えてたけど、リュドミラってもしかしてエルフとしては若い方なのかも知れないな。


「皆が一緒にいてくれるのは巨乳(これ)のためだけなんじゃないかって。だからわたくしと同じ……いいえ、より大きいかも知れない女性が現れたと噂に聞いた時、怖かった。皆がわたくしから離れていってしまうんじゃないかって」


 そうか。やっぱり対決を受けた時の呟きは聞き間違いじゃなかったんだな。

 風にリュドミラの細い銀の髪が揺れる。精霊さんたちが慰めるようにリュドミラの周囲を飛んでいる。精霊は邪悪な存在には決して手を貸さないと言う。

 こんなに精霊さんに好かれてるリュドミラが悪い子なわけないさ。

 リュドミラは顔を上げてフッと微笑みを浮かべた。


「もちろん、それも理由のひとつなんでしょうけど……だからと言って一緒に過ごした時間が消えるわけじゃないですものね。わたくしがバカだったんですわ」


 テキパキと働いているアーマンドたちを眺めるその瞳は柔らかかった。


「そーそー、リュドミラはバカなんだからさ」

「なっ!?」

「そんなしおらしい表情見せるより、ふてぶてしく笑ってた方が似合ってるよ」


 憤慨して声を上げかけるリュドミラへ手を伸ばし、精霊さんの真似をして髪をわちゃわちゃと撫で回す。


「こらっ、おやめなさいっ、こんなぐちゃぐちゃにして!」


 リュドミラが顔を赤くして俺の手を振り払う。俺はアハハハと笑い声を立てた。一時はどうなるかと思ったが、大したことにならなくて良かった。

 もーっと、むくれてリュドミラは手櫛で髪を整える。

 それからリュドミラはまたちょっと俯いて、口の中で何かもごもごと呟いた。


「あ、あの、それで貴女は何を要求するつもりなのかしら? わたくしが負けたらなんでもすると言ったけれど……」


 あぁ、そんな約束、もうすっかり忘れてた。

 腕を組んで、んー?と首を傾げる。別に今のところ、欲しいものもない。金だって十分あるから生活にも困ってないしな。

 だけど何もいらないって言っても信じてくれなさそーだ。


「だったらさ、俺と友達になってくれよ。まだ街に来たばっかりで知り合いも少なくてさ」


 呆気に取られたようにリュドミラが俺の顔をマジマジと見つめる。

 それからリュドミラは顔を崩して、盛大にプッと吹き出した。


「ほんとに貴女って……いいですわ。わたくしが貴女の友達になってあげますわ、ティア」


 自信たっぷりに胸の真ん中に左手を置いて、リュドミラはもう片方の手を差し出してきた。

 その手を取ると、リュドミラは顔は微笑ませながらも、ギリギリと握手する掌に力を込めてきた。こいつは、ったくよー。

 結局、負けず嫌いなんだからさ!


 俺も間近でリュドミラをニヤリと睨みつけながら、思い切り力を入れて握り返した。

 まだまだレベルも低い、俺の握力じゃたかが知れてるけど。


 俺たちがふざけあってるのに気づいて、アーマンドたちが作業の手を止めて目を細めてこちらを見てきた。

 何か楽しいことでもしていると思ったのだろう、お菓子を食べ終わったタローがタタタッと小走りに近寄って来る。

 タローの頭も撫でなでしてあげた。


 片づけを終えて集まってくるアーマンドたちに、マジックバッグからジュースを出して渡してやる。

 俺やリュドミラ、タローからジュースを受け取って、彼らも笑顔を見せた。人の少なくなった広場にいくつもの笑い声が響き渡る。


「ティアさん、なんでこいつのジュースだけサイズが大きいんですっ!?」

「ま、まさかティアさん、こんな奴が好みってわけじゃ……」

「あぁ、だってそいつ、パシられてて可哀そうだったからさ」

「パシ……」


 パシりくんは自分の手の中のジュースを見下ろして、いつまでも複雑そうな表情をしていた。



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