47.エロエルフさん、準備はできましたか?
商店街のど真ん中で話していたら道ゆく人の邪魔になるので、俺たちは広場に移動していた。
あちらさんの取り巻きの人がイベントスペースを借りてきたのだ。ステージまであるという用意周到さだ。
どこから聞きつけたのか広場には三々五々と観客が集まりつつあって、それを目当てにおやつや飲み物を売る売り子さんもちゃっかりと歩いていらっしゃる。
なかなか、したたかな街だな。
えーい、もうなるようにしかならんだろ!
俺はバーンと胸を張り、ステージの真ん中で無駄に恰好つけて立っていた。ちなみにタローはステージ前に設置された観客席の真ん中でお行儀良く座っている。んー、いい子、いい子!
こうなったら観客だろうが、審査員だろうがドーンと連れて来るがいい!
ん? 審査員?
「そーいえば〇っぱいコンテストって誰が審査するの?」
「バストを競う、美の対局ですわ!」
リュドミラが言い直してくるが、さっくりと無視。その近くで設営準備をしている取り巻きの一人が、今更何を言っているというような呆れた顔を俺に向けてくる。
「もちろん、我らが判定するに決まっているであろう」
もちろんとか言われても初耳だよ。でもそれってずるくない。こいつらってリュドミラの陣営なわけだろ。バストを競うなんてバカバカしいが、やるからには公平な第三者に判断してもらわないと。
「どー考えてもお前らじゃダメだろ、リュドミラの一人勝ちじゃん!」
指をつきつけて訴えると、取り巻きの男たちは血相を変えた。全員が憤慨した様子で俺に詰め寄ってくる。
「聞き捨てならんな!」
「我らは誇り高き胸部愛好会!」
「リュドミラ様の御胸の美しさは言うまでもないが、だからと言って採点に手心など加えんわ!!」
なんだか妙なプライドがあるらしい。代わる代わるもの凄い剣幕でまくし立てられる。ついでにチラチラと胸元に視線を投げかけられた。
なんだ、胸部愛好会って。てめーら、胸なら男のものでも構わないのか?
そうじゃないだろ。安いプライドだな。
正直におっ〇いと言え、おっぱ〇大好きと!!
それはそれとして、こいつら聞く耳持ってなさそーだな。ま、ここまで言うなら下手な審査はしないだろう。観客もいるわけだしな。
あとはこいつらにどれだけ見る目があるか、だけど。
俺がうーんと顎に手を当てて黙り込んだのを、対決を渋っていると思われたのだろうか。
男の一人、リーダーっぽい奴がもったいぶって口を開く。
「そこまで気になるならそちらも人員を出せばいいだろう。我らが6人なのでな。できれば票が割れた時のために奇数がいい」
ふーん。つまり、1人か3人か5人か7人くらいなら連れて来ていいってことだな。ま、この街にそこまでまだ知り合いはいないけどな。
唯一(面白がって)味方になってくれそうなミミたちはダンジョンの中だ。
「じゃあ、タローに頼むことにするよ」
「タロー?」
「あそこに座ってる俺の子だよ。おーい、タローちゃーん、ママ頑張るからねー!」
ブンブンッと大きく腕を振ると、フードでよく見えないがタローは例のちょっと怖い笑みを顔いっぱいに浮かべたようだった。多分、タローは今から何が行われるのか分かっていない。
ザワザワと取り巻きとリュドミラに動揺が走る。腕の動きと一緒に俺の胸がプルプル揺れているから……ではないと思う。
「ま、まさか、子持ち……だと!?」
「そんな報告はどこにもなかったぞ!」
「子持ちでそのスタイルを……?」
色々と誤解があるようなので顔の前で手を振って訂正しとく。
「違う違う。わけあって引き取った子でね。さすがに実の子じゃないよ」
俺の説明に一同はふーっと安堵のため息をついた。
「貴女、紛らわしいんですわ! それならそうと先に言ってくれませんと!」
「ごめん、ごめん」
プリプリと怒るリュドミラに笑ってごまかしておく。
「そろそろ準備がいいなら始めよーぜ。俺だって忙しいんだ」
この後、ギルドやフィオの店に行きたいし、タローだって疲れてるだろう。早く宿屋で休ませてやりたい。
あちらさんにも異論はなかったようだ。俺とリュドミラはそれぞれ、ステージの上手と下手に分かれて姿を消した。




