43.エロエルフ、レベルアップする
洞窟内にレベルアップの音が晴れやかに響き渡る。
でもレベルアップなんてどーでもいい!
今はタローだ、タロー!
俺は蜘蛛の糸に簀巻きにされているそれに走り寄った。
手で必死に糸をブチブチと引きちぎる。ほんの少しずつしか千切れないのがもどかしい。
「タロー!」
やっとのことで顔の部分をむしり出す。息は……してるのか? 分からん!
「タロー、飲めよ! 飲んでくれ!」
回復薬を無理やり口に押しつけるが、喉を通っているのかも分からない。止むを得ず、少しでも効果があるんじゃないかと瓶の中身を身体へとぶちまける。
鞄からもうひとつ取り出して口に充てがう。
コクリと薬が喉を通り過ぎていく様子が見えて、俺はへなへなとその場にしゃがみ込んだ。
「タロー……よかった、良かったよ……」
目に拳を押し当てる俺を、意識を取り戻したらしきタローが瞼をパチパチと瞬いて見上げる。
「マ……マ?」
「うんうん、ママだよ。遅くなってごめんね……」
俺はグシグシ泣きながらタローの身体をギュッと抱きしめた。
腕の中でタローの身体がモゾモゾ動く。
何してんだと思ったら、まだ蜘蛛の糸に絡め取られているので、身動きができなくて困ってたみたいだ。
「ごめん、ごめん」
身体を離してクスッと笑い声を立てる。
こうして笑えるのもタローが無事だったからだ。俺はこの世界で初めての仲間を……家族を失わずに済んだ。
種族の違いや、過ごした時間の長さなんて関係ない。
俺とタローはもう家族なんだ。
落としていた短剣を取りに行くと、タローを傷つけないように注意して蜘蛛の糸を切る。
ベタベタして手にくっついて切りづらかったが、なんとか立ち上がって身体が動かせるくらいには引きちぎることができた。
タローはもう自分の足で元気に起き上がっている。さすがゲームの世界の回復薬は違うな。
ここが現実世界じゃなくて良かった。
じゃなきゃ、きっとタローは助からなかっただろう。
「ママ……お、おで、ごめんなさ……」
おどおどとタローが頭を下げてくる。俺はグリグリとタローの頭を撫でた。
「なーんでタローが謝るんだよ? 悪いのはタローを一人で置いていった俺だろ?」
俺が怒ってないって知って、タローはちょっとほっとしたようだった。
「でも、どうくつのそと、でないいわれた」
「あぁ、そのことか……なんで出たんだ?」
何の気なしに聞いてみると、タローはためらいがちながらもポツポツと打ち明けてくれた。
「スライムのかく……あつめたら、やくたつ、おもって」
自分の腰につけた皮袋をチラリと見下ろしている。
なに、この子!!
ホントにいい子すぎない!?
やっぱりウチの子が一番可愛い!!
「いいんだよ、タロちゃん! その気持ちだけで、ママ、嬉しいよ!!」
タローに飛びついて、またギュムッと抱きしめる。
タローはバシバシと俺の腕を叩いた。
あ、また窒息死させるところだった。
一難去ってまた一難だな。
「ママも……けがしてる」
「あぁ、忘れてた」
そう言や、自分にウィンドカッターしたから、あちこち切り傷があるんだった。
「だいじょーぶ! まだ回復薬はたくさんあるからな!」
ティアさんの財力舐めんなよ。こんなのただの栄養ドリンクと一緒だ、一緒。
鞄から取り出して腰に手を当ててゴクゴク飲み干す。
異世界バンザイ!
すぐに傷も消えてなくなる。可愛いティアの身体に傷跡が残んなくて良かったよ。
「なっ!」
軽くウィンクするとタローはやっと、ほっとして笑顔を見せてくれた。
相変わらず俺には唇をめくり上げて威嚇してる顔に見えるけど、多分、笑ってんだと思う。
笑顔だと思ったら笑顔だよ、うん!




