36.エロエルフの異世界滞在3日目!
朝、起きたら、俺の髪は爆発していた。
「な、なになに!? なんでなんだよ!?」
原因が分からず涙目で髪を触る。あんなに柔らかくてサラサラで、絹の糸みたいだったティアの髪が……ボッサボサの、バッサバサだ。
触るとキシキシして指通りまで悪い。
せっかく昨日、お風呂に行って髪まで洗ったのに!
こんなのエルフじゃなーい!!
昨日、ミミに教えられて買っていた豚の毛のヘアブラシで頑張って髪を梳くが、あまり効果が感じられない。
むしろ、さらに悪化してるよーな……。
何が悪かったのか分からず、今朝も俺はブラシを握りしめて、ミミとメイヴィスさんの部屋をドンドンと叩くはめになった。
「ミミ、メイヴィスさん!」
「おはよー、ティアちゃん……って、うぉう! 斬新な髪型だね?」
眠そうに目を擦りこすりドアを開けたミミは、俺の頭を見てパッチリと瞼を開いた。
完全に起きたみたいだ。
部屋に入れてもらった俺が涙ながらに事情を話すと、二人は呆れた視線を向けてきた。
「石鹸で……?」
「髪の毛を……?」
気の毒な子供みたいな目で眺められて、身の置き所がなく椅子に小さく縮こまる。
「な、なにかいけなかったんでしょーか……」
おどおどと呟くと、腰に手を当てたミミにビシリと指を突きつけらた。
「ティアちゃんはこんなに可愛いのに女子力が皆無! 石鹸で頭洗うとか、いいわけないでしょ!」
俺に女子力なんてものがあるわけがない。○っぱいはたゆんたゆんだが、中身はただのおっさんなのだ。
しかしミミ様は有無を言わさぬ表情で、黒目を爛々と燃え上がらせていらっしゃる。怖い。
俺は椅子に座ったまま膝に両手を当てて、ビシッと背筋を伸ばした。
「は、はい、もーしわけございません!」
でも石鹸以外、何もなかったしー。普段だってリンスインシャンプーで洗ってるだけだしー。
心の中で言い訳を繰り返す俺に、ゴゴゴゴゴと暗黒を背負ってミミが近づいて来る。
「もしかしなくてもさぁ、ティアちゃん。顔も石鹸で洗ったとか言わないよねぇ?」
「せっ、石鹸しかなかったし……」
「いやー、この子、もうホントに嫌あぁ! ああぁ、あんなにスベスベだった肌が……!!」
両方から頰をグワシッと掴まれ、涙目でほっぺたをグリグリ弄られる。
「この子には徹底的に教えないとダメみたいね」
メイヴィスさんが真顔で鞄からズラリと小瓶を取り出して、机に並べ始める。あ、メイヴィスさんの鞄もマジックバッグだ。
じゃなくて、この方も目が据わっていて怖い。
「まずはちゃんと洗顔を……って、こらー! 泡立てずにそのまま洗う子がいますかー!」
「今日はパックもさせないと無理だよ、これー」
「これが化粧水で、こちらは美容液とビタミン剤。それに乳液と保湿クリームですわ。え? 違いが分からない? つべこべ言わず、さっさと塗る!」
左右からサラウンドで怒られながら、俺は必死でパシャパシャと顔に液を塗りたくり続けた。
今がどの順番かも、ちょっと分からなくなりつつある。
お、女の子の可愛さを保つって大変なんだな……。
髪に関しては温めた濡れタオルで湿らせた後、ヘアオイルを塗ってもらってブラシで梳くと、やっとのことで前に近い指触りになった。
今日もキュッとポニーテールに結んでもらうと、俺はすぐさまご機嫌になった。
エルフって言ったらやっぱりポニーテールだよな?
うん! 今日の俺も可愛い、可愛い!
「明日は全部、自分でするんだよ?」
「ですわよ?」
声をハモらせた二人に無表情で詰め寄られて、俺は神妙にコクコクと頷いた。
俺だって、命は惜しい。
∫*(*´꒳`*) <今日も可愛い!




