03.エロエルフ、ログインする!
国名は読み飛ばして。
今から俺がプレイするこのゲームはEternal Sinfonìaと言って、世界的にそこそこ有名なRPGだ。
前作までは家庭用の据え置き機で販売されていたのだが、この7作目でついにバーチャルリアリティにバージョンアップしたのだ。
シンフォニアと呼ばれる大陸で魔物を狩ったり、ダンジョンに潜ったり、製作したりと気ままな人生をプレイできる。
あまり殺伐としておらず、のんびりとした世界観が売りだ。
このエントランスからログインできる国は5つ。
亜人が多くモンスターは弱めで初心者向けのオルセア王国。
自然と神を崇拝する少数部族が暮らす、巨大森林ウィンディール。
自然発生するダンジョンの上に築かれた、機械と魔法の街、アルザース。
和風のような、中華圏のような、東洋を思わせる街並みのトウファ。
そして、全冒険者憧れのドラゴンが住まう氷と炎の大地、ガルシエンド。
どの国も魅力溢れるが、やはりレベル1から始めるんだから、ここは妥当にオルセアからだな。
繰り返し流れている映像の内、素朴な中世風の市街地の風景が映っているスクリーンに目を向ける。
2秒ほど注視すると視線のすぐ下に『オルセア王国にログインしますか?』という表示が現れた。
もちろんYESの方に注目する。
その途端、グングンとスクリーンが俺の方へ迫ってきた。
ザワザワとした雑踏の賑わい。
少し埃っぽい石造りの街の匂い。
そんな五感を伴うかと思うほどのリアルな光景が目の前に大きく広がる。
スクリーンはそのまま俺を突き抜けて後方へと流れていった。
そして俺は憧れの世界にログインした。
ゆっくりと周囲に目を向ける。
最初に違和感を覚えたのは、森のような場所にいたことだ。
オルセア王国なら街の中央の泉の広場から始まるはずだ。
なにせMAGUを買う前から楽しみ過ぎて、攻略サイトをせっせと見てたからな。予習には余念がない。
いきなりバグなんだろうかと不安になる。
公式が把握してないバグを見つけたら、金一封とか出る場合があるらしいな?
まぁ、あとで報告しとけばいいか。
それよりこの世界観は凄い!
まるで現実世界にいるようだ。
サワサワと頰を撫でる風。
木々や草花の質感。
鼻をくすぐる、森の爽やかな匂い。
一体、どこまで気合い入れて作り込んでるんだ。
これは見事なんてもんじゃない。
頰の横で揺れている細い糸のような自分の金の髪に触れてみる。
一本一本が本物の髪のようで、指で梳くとハラハラとほぐれて揺れ動いた。
俺、可愛い過ぎない?
ポリゴン数いくら?
触ってみたら、ちゃんと耳もとんがっているので間違いなくエルフのようだ。
今、顔が見られないのが残念だな。
街に行ったら鏡とかあるだろうか。
とか考えていたら、近くの草むらがカサリと揺れた。
草を割って、RPGではお馴染みの半透明で丸いフォルムの生き物が現れる。
早速、初戦闘ってわけか。
俺はニヤリと口角を上げて腰のレイピアを引き抜いた。
(☆ω☆)キラーン