28.エロエルフ、まともに戦闘す!
よーし、よし。
敵さんは待ちわびたスライムだった。
しかも1匹。これなら俺1人でも充分に戦える。
腰につけたマジックバッグに手を入れて、護符を1枚、引き抜く。
「守護星の護符!」
最高級のお札、1枚およそ1000円也だぜ!
護符をビリッと破くと、キラキラとした光に包まれる。
別に使うのにアイテム名叫ばなくてもいいけど、こんなのはノリだ、ノリ。
なぜ最初に防御力を上げたかと言うと、精霊魔法使いである俺は、攻撃するために一度は攻撃を受ける必要があるからだ。
精霊は生き物を傷つけることを好まない。それがモンスターとしても、だ。
無理矢理に命じて攻撃させることもできるが、格段に威力が落ちるし、友好度も下がる。
しかし反撃としてなら精霊たちも黙っちゃいない。
俺を守るために奮闘してくださるはずだ。
少しあざといが、仲間もおらず、攻撃力のない俺が精霊に嫌われずダメージを与えられる方法はこれしかない。
ゲームだったらこんな回りくどい真似はしなくて良かったのだが、現実になった弊害がこんなところに現れてるってわけだな。
だが、それが面白い。
俺はペロッと下唇に舌を這わせた。
幸い、この間の感じからするとレベル1でも一撃でやられることはない。
回復薬もしっかり持っているし、万が一の時にも身代わりのブレスレットがある。
「どーんと来いやー!」
俺は唯一の武器であるレイピアを片手にスライムに踊りかかった。
もちろん、非力な俺の腕では弾力のある身体に突き刺さりもしない。
これはヘイト値を上昇させて俺を敵認定させるための空攻撃だ。
案の定、スライムに前後があるか不明だが、奴っこさんは俺へ向き直った。
来る!
プルプルと震えたスライムが飛びかかってくるのを見て身構える。
しかしスライムは俺の周囲の防壁にバチッと阻まれて地面に転がった。
ハッハッハッ! さすが高い護符なだけあるな! ノーダメージ!
服が濡れてもいない。
……ちょっとビビってたってのは内緒だ。
俺が攻撃された途端に、周りを飛び交う精霊たちがピタリと動きを止めてスライムを注視する。
≪ティア、いじめた……≫
≪いじめ、よくない……≫
≪ダメ、絶対……≫
羽音に混ざって、ザワザワと囁きが聞こえてくる。
誰だ、精霊さんにネタを教えたのは。
いや、ここは集中、集中ッ!
『風の精霊よ。我が声を聞き、我が命に応えよ』
スライムが体勢を立て直す前に、片手を突き出して掌に魔力を集める。
『ウィンドカッター!』
そして俺の魔法は炸裂して、スライムの上部分を吹き飛ばした。
おお! 手応えがあった感覚がする!
ただ、敵もさるもの。流体のスライムは、少し身体を吹っ飛ばされたくらいでは動きに支障はないようだ。
『ウィンドカッター! ウィンドカッター!』
バシンバシンッ!
それから俺とスライムは馬鹿なひとつ覚えみたいに、魔法と体当たり交互に繰り出した。
精霊たちが半ば、呆れ顔になってきた頃。
「ハァハァ……さすが我が好敵手……だが所詮、私の敵ではなかったな!」
ようやく動きを止めたスライムの前で、俺は額の汗を拭った。
激しい死闘だった。
だが、それを勝ち抜いたのは俺だった。
ツンツンとレイピアの先でスライムをつついてみるが反応はない。
身体も白濁としているので擬態ではないだろう。
「やったー! 初勝利だ!」
精霊以外、誰もいない森の中で、俺は両手を上げて勝利の喜びを噛み締めた。
ヽ(´□`。)ノ・゜ヤッタアァァアァン




