18.エロエルフはブーツが履けない!
宿の部屋はベッドしかないような小ささだったが、心配していた汚さはなくってほっとする。シーツはピンと張られていて、清潔そのものだ。
このくらいの生活水準ならやっていけそうかな?
しんどくなってきたので防具や革手袋を外す。
ついでに靴も脱ぎ捨てて、ポーンとベッドに寝転がった。
視界の隅でポヨヨンッと胸のマシュマロが波打つのが見えた。
ベッドでログアウトとか、ありそうな設定じゃない?
なんとか現実世界に帰れないものかと、俺はまだ無駄にあがこうとしていた。
目を閉じて、必死に念じる。
「ログアウト。ログオフ。終了。接続解除。サインアウト。切断。あー、帰りてー!」
どんなに叫んでも、目を開けたらそこは宿の一室のままだった。
諦めよう。
いつまでか分からないが、俺はこの世界で生きていくしかない。
ボインちゃんとして。
よろよろと起き上がって、ベッドの端にうなだれて座る。
真っ白に……燃え尽きたぜ。
最初は美人のエルフなんて勝ち組じゃね?と思っていたが、今はなんでこんなキャラ作っちゃったんだと後悔しかない。
男にしとけばよかった。
エルフはやめとけばよかった。
いいや、せめて知能に全振りとか、適当なステータスにしなきゃよかった。
人前ではふざけてた俺だが、じわっと涙が滲みそうになってくる。
だって、女の子だもん。
さっきからネタが古いのはツッコまないで欲しい。
昭和の人間なんだ。
こんなギャグで気を紛らわさないと、精神を保っていられないんだ。
明日からも俺はちゃんと女として生きていけるだろうか?
もうすでに、かなりボロが出ちゃってるような気がするが。
こんなところで一人で落ち込んでても仕方ない。
なるようにしかならないさ。
パンッと頰を叩いて気合を入れ直す。
「頑張れ、シロー……いや、ティア! 俺はエロエルフのティアだ!」
立ち上がって、グッと拳を握り込む。
人間、寒い時と、寝不足の時と、空腹時に弱気になるそうですよ。
そうです。
俺はお腹が減っているのです。
「そろそろメシ、食いに行くか」
この宿の料理は美味しいとミミが言っていたので期待大だ。
MAGUを買うため、ずっと節約生活で外食なんてもう何ヶ月もしていなかったからな。
メシと言えば納豆ご飯か、キムチご飯か、たまに奮発してもやし炒めを食べる生活だった。
もちろん肉なんか入っていないやつだ。
こうして異世界で大金を手に入れたのも、どこかの神様が今までの俺の頑張りを見てくれていたからだろう!
豪遊してやる!
散財してやる!
肉だ!
俺は肉を食うんだ!
そうと決まれば食堂に向かうために、脱ぎ捨てたブーツを手に取って片足を入れようとする。
ところがブーツは全然、俺の足を受け入れてくれなかった。
なにこれ? さっきまで履いていたブーツと同じもののはずなのに、縮んでしまったんだろうか?
足がまったく靴の中に入っていかない。
「えいっ、えいっ!」
非力な女エルフの両腕でグイグイとブーツを引っ張って、無理やりに足を押し込んでいく。
一人芝居ではない。足がむくんでしまったのか、ふくらはぎのところでピタッと止まってしまって、そこから先に足が入っていかないのだ。
女の子って凄いな。
いつもこんな大変な思いをして長いブーツを履いてるのか。
俺は片足を入れただけで額に滲む汗を腕で拭った。ハァハァと荒い息をつく。
明日、絶対、履きやすい靴を買いに行こう。
それだけは忘れないよう心に刻みつけた。
(*´-ω-`)・・・フゥ




