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15.エロエルフの初魔法!


 俺は本番に強いタイプだ。理論より、実践した方が断然早い。


「お前もエルフなら、周囲の精霊の力は感じるじゃろう?」


 言われて、ちょっと集中して周囲を眺めてみる。


 緩やかに動く風の流れ。

 足元の地面の暖かさ。

 人間だった時には感じなかった、そんな活力を感じる……ような気がする。


「う、うーん。分かるよーな、分からないよーな……?」

「どんだけ鈍感なんじゃ、お前さん。まぁええ。とにかくその精霊に魔力(オド)を分け与えて、お願いをするんじゃ。ちょいと見ておれよ」


 ドワーフは俺たちに背を向けて、誰もいない空間へと掌を差し出した。


『風の精霊よ。我が声を聞き、我が命に応えよ。ブリージング!』


 ドワーフの周囲からブワッと風が吹き上がり、突き出した掌から前方へと吹き去っていく。

 憧れの魔法を初めて見るのに、その使い手がドワーフなんてなぁ。

 ぜっ、ぜんぜんカッコよくなんかないんだからねッ!


 ドワーフは俺を振り返って、ニッカリと笑った。


「要領は分かったじゃろ。まずはこれを習得するんじゃ。ほれ、やってみぃ」


 魔力を精霊にねぇ。

 概念は分かるが雲を掴むような話だな。なにせ、魔法なんて今まで使ったことがないからな。


 目を閉じて自分の体内に意識を向ける。

 魔力だ、魔力。

 考えるんじゃない、感じるんだ!


 途中、嫌な予感がしたので薄っすらと目を開けると、ほんの数センチ先にドワーフが迫りつつあった。


「儂は手助けをしようと思って……」


 油断ならない奴だ。

 手をワキワキしながら言われても説得力がない。

 俺の邪魔するんじゃねーよ!


 メイヴィスさんに殴ってもらって、向こうに連れて行ってもらう。

 重そうなドワーフを、メイヴィスさんは片手でズルズルと引きずって行った。

 こ、恐い。


「さぁ、ティアさん。邪魔者は排除したから、続けて、続けて」


 笑顔でメイヴィスさんに告げられて、俺は人生でこれ以上ないほど集中した。

 魔法を習得しないと、この場から生きて帰られない気がする。


 コポリ、と湧き上がる水のような。

 血液の流れとは違う暖かな力の流れをお腹の下辺りから感じる。


 それと同時に、俺の周囲をクスクスと笑いさざめくような小さな風の囁きが取り囲んだ。

 ドワーフに教えられた呪文を唱える。


『風の精霊よ。我が声を聞き、我が命に応えよ!』


 何かをねだるように風が俺の髪を、頰をねぶる。

 魔力が欲しいか?

 だったらくれてやる!


『ブリージング!』


 叫び声とともに片手を空き地に向かって突き出す。

 俺の掌からはプスンプスンと魔力が放出される感覚がして、そして、そよっと微風が周囲に流れた。


「まぁ、1レベルならそんなもんじゃろ」


 いつの間にか復活していたドワーフが、殴られた後頭部を手でかきながら、そっけなく言う。

 ちょ、分かってたんなら先に言ってくれよ!

 こんな大げさな動作して、恥ずかしいじゃん!


 顔を赤くする俺に向かって、ミミたちがパチパチと手を叩いてくれる。


「初めてにしては上手、じょーず」

「そうだな。やはりエルフなだけある。才能を感じさせるぞ」


 手放しで褒められて、俺はテレテレッとはにかんだ。

 なにはともあれ、俺の初魔法だ!

 そよ風だって構うもんか!


「しばらく魔力の操作に慣れるまで、この練習を続けるとええ。ダンジョンならいざ知らず、地上なら風の精霊はどこにでもおるからな」


 ドワーフに勧められて、何度も風を出す練習をする。

 風がピューッと吹き出す感覚が楽しい。

 しばらくすると魔力が枯渇してきたみたいで、身体がだる重くなってきた。


「今日はこのくらいかの」

「ありあとやしたッ!」


 エロじじいとは言え、一応、先生なので頭を下げておく。


「それでこの魔法はどんな効果があるんですか?」

「特に何も? 風が出て涼しいってくらいかのぅ?」


 こんの、バカドワーフがぁっ!

 俺は冒険に出たいんだって言っただろ!


「なんで攻撃に関係ない魔法を教えたっ!」


 飛びかかってヘッドロックをかますと、ドワーフは苦しがるどころか顔をデレデレとにやけさせた。

 いかん、これも逆効果だったわ。

 ドワーフはにやけ顔を俺のデカメロンに埋めて、昇天しかけている。


「我が人生にいっぺんの悔いなし!」


 ドワーフは叫びながらメイヴィスさんに殴られて、本日、三度目のご就寝に向かわれた。


(((ノ*´д)ノ彡 彡 ピューピュー

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