10.エロエルフ、冒険者登録する!
「見かけない顔だと思ったら、冒険者志願の方だったんですね。こちらへどうぞ」
ギルドの職員らしき女性が俺を受付へ案内してくれる。
ギルド中の視線が俺に突き刺さっているので、いたたまれない。
俺はできるだけ身を縮めて彼女の後について行った。
受付のお姉さんは目をほんのり細めて、俺を可哀想な子みたいな視線で見てきた。
とんだ羞恥プレイだ。
「では、この紙に必要事項をお書きください」
「あ、あの、私、字は……」
さっき素で怒鳴っちゃったので、いまさらロールプレイしても仕方ないのだが可愛い子ぶりっ子して俯く。
お姉さんは優しく微笑んだ。
「大丈夫ですよ。字が書けない方はこちらで代筆いたしますので」
もはや幼稚園児扱いである。
お姉さんに聞かれるままに答えていく。
「種族はエルフ。得意分野は精霊魔法。お名前はティアさん。性別は女性、と……それでレベルは? え? レベル1!?」
驚いたお姉さんの声がギルド中に響き渡る。
俺はただでさえも注目を集めているのだ。またしても皆の視線が突き刺さった。
「ど、どんな生活をなさっていたらレベル1のままでいられるんです?」
お姉さんの視線が痛い。
この世界では農民なんかも狩りをしたり、モンスター退治に出向いたりするので、成人する頃には誰でも最低5レベルくらいはあるらしい。
お姉さんは、途端にやる気を失った。
「1レベルの方に紹介できる仕事なんてないですよ」
「そっ、そこをなんとか!」
冒険者ギルドに登録できなければ、身分証もないままどころか金も預けられない。
「私、ずっと冒険者に憧れてたんです! お願いします! なんでもしますので!!」
受付に手をついて、コメツキバッタみたいにヘコヘコと何度も頭を下げる。
デカメロンがギュムッと俺とカウンターの間で潰れる。
「ちょっと、やめてくださいよ。これじゃ私が苛めてるみたいじゃないですか。分かりました、登録はいたしますので!」
お姉さんは渋々、用紙の項目を埋めた後、ギルドカードを出してきた。
金属のような硬質な紙のような、不思議な感触のカードだ。プラスチックではない。
登録料の銀貨1枚をお姉さんに手渡す。
この登録料はカードの値段もだが、冷やかしでの登録を防ぐって意味もあるみたいだ。
登録だけで1万円って普通の人間には悪ふざけで払える値段じゃない。
俺は袋にジャラジャラとコインを持ち過ぎているせいで、ちょっと金銭感覚狂いつつあるけど。
「では登録いたしますので少々お待ちください」
受付嬢は小さな機械にカードを差して、ポチポチと何かを入力している。
なんか年賀状を作る機械みたいな感じだ。
「では最後にここに血を一滴、垂らしてください」
針を差し出されて、人さし指をチクッと刺される。
機械の受け皿のようなところに血の滲む指先を押し当てると、そこから金色の魔法陣のような図柄が浮かび上がる。
おおーっ、幻想的だ! やっとファンタジーの世界って感じだ!
感動して見つめていると、魔法陣はうっすらと機械の中に消えていった。完全に光が消えるのを待って受付嬢はカードを機械から引き抜いた。
「本当に1レベルなんですね……」
目を点にしてカードを眺めている。
誰にだって初めてはあるのだ。それを乗り越えて人間は成長していくのだ。
受付嬢の困惑顔とは違い、俺は手渡されたカードを手にしみじみと喜びを噛み締めていた。
これで俺も晴れて冒険者だ!
これは普通の冒険者にとっては小さな一歩かも知れないが、俺にとっては大きな一歩である。
ニヤつきを隠せない。
「これで登録は終わりましたが、カードはなくさないでくださいね? 再発行手数料がかかりますよ?」
あ、はい。気をつけます。
\(^o^)/ヤッター




