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03 運命を変える為に性別を逆転しても結婚します!

 

 豊かな土地を持ち生産力の高い穏やかなフィーニアス国


 歴史を遡れば傭兵国家として建国した、力を持ったものが成り上がれる軍事に優れたトラネス国



 相反するこの二国は隣国であり、そこそこの親交を結び、それなりの関係を築いている程度の国同士である。



 なので、国同士の王族の結婚は非常に喜ばしい。


 喜ばしいことなのだが……



 先程の訓練場で令嬢たちがルイーゼに集まっている事は、女の時は偶像崇拝(アイドル)であった故起きていた現象であったが男の今は『婚約対象』


『ユニという婚約者がいたらあのように女性が群がるなど起こらない筈』と不思議に思ったアンドリューが調べると、ユニとルイーゼの婚約なんて話は一切見当たらなかった。





「トラネス国王はとても強く、そして賢い優れた王ですが、子供を作る能力が著しく乏しくお子様はユニ様だけです」


 その為、何人もの側室、妾を用意して孕ませても一向に子供が出来ず、ようやっと出来た子供というのがユニ=トラネスである。


「……それがユニを苦しめる原因の一つとなったのだ。よく覚えている」



 トラネス国は力こそ全て。強い者が成り上がれる実力主義の世界だ。


 国王も血統順ではなく、軍略や調略の賢さや強さで決することもあった。


 だから「其方の方が強い」と王の座を近縁の者に譲ることだって出来るのだ。



 しかし、ようやっと出来たたった一人の子供に、王は固執してしまった。


 トラネス国王はユニを王にさせようとユニに強くなることを強要した。



 周りからの圧力にユニは心を蝕まれ、取ってはいけない邪神という悪魔の手を取ってしまった。



「ユニ様が男だった時『トラネス国に相応しい強い嫁が出来ればユニも強くなるだろう』と戦闘狂であった変わり者の姫であるルイーゼ様に白羽の矢が立ったわけで、今のユニ様の相手は選び方が違って当然です」


 そう考えるとルイーゼとユニは性別が逆だったから出会えた奇跡といえよう。


「…………」



 今は姫となったユニはルイーゼの目論見どおり強さを強要されている可能性は低い。


「しかし王の一人娘への執着は変わっておらず、次期トラネス王はユニ様が嫁ぐことになる男になると噂されています」


「…………」


 今トラネス国では王に気に入られユニをあてがわれるか、姫に見初められたら王座に近付けるというユニ争奪戦の真っ最中であると言う。


 誰が王になるのかと外交上手(噂好き)のフィーニアス貴族内では『どの勢力に付いておくか』がなかなかに注目の話題らしい。




 しかし、ルイーゼの心に不安は無かった。


 若干据わった目で覇王のように言い放つルイーゼの姿は元姫だというのに王の器を感じさせる。


「……まあしかし……トラネス国が強さで正義が決まる国ならば、奪うことは可能だな」


「ルイーゼ様、あまりにも物騒です」


 一応他国ですよ。とアンドリューが釘を刺す。


『一応』という辺りアンドリューも戦慣れし過ぎた弊害か、思考が脳筋になってきている。



 正直な話、トラネス国をねじ伏せるなど、邪神を倒すより容易い。


「今の私ならトラネス国と一人で戦を起こしても王の首を取れるぞ」


 頭を痛めたアンドリューが「あくまで穏便に」とルイーゼをなだめる。


「せめてそれは最終手段にしましょう」


「そうだな」


 そうこうしている間にメイドから連絡が来て、ルイーゼは家族が揃う夕食へ案内された。









 夕食の用意が出来た、とルイーゼは家族が揃うテーブルに案内されると父王、王妃である母、跡継ぎ候補筆頭の兄が先に席についていた。



「おかえりルイーゼ」


「兄上こそお疲れ様です」


 ルイーゼが思っていた通りレイスとの仲は良好そうで胸を撫で下ろす。



 違う点があるとすれば、女の頃はユニというトラネス国の王子に嫁ぐ為、国母としての国を治める勉強をしており、兄に教えを請うていた事実がなくなっている。


 勉学は苦手ではあったがユニの為に必死に勉強をしたし、ユニの為ならばむしろ『自分が王の代わりになろう』とすら思っていたルイーゼは王たるものがする勉強まで学んでいた。


 その学んだ采配が邪神になったユニを倒す為に役立ったとは皮肉なものだ。



 勉強であればユニの方が得意であったのでトラネス国の政治を教えてもらうことを口実として会うことも多かったな……と懐かしむ。


 しかし今はそんな学びも無く。男のルイーゼは好きな軍事や剣技を極めているだけのようだ。




 いつも「もっと姫らしく!」と怒っていた母はまるで別人かのようにニコニコとルイーゼの武勲を褒め称えていた。


「ルイーゼはまた逞しくなって……なんでも現騎士団長を倒したそうじゃない」


「手加減をして下さったんですよ」


「いやいやあやつ、相当悔しがっておったぞ」


 穏やかに進む夕食の会話。



 戦ってみた体感、今の戦帰りのルイーゼに敵う者などフィーニアス国にいないだろう。


 アンドリューも相当に強くなっているのだが、騒ぎになっては情報収集がしづらいと目立たないように完全に隠していた。


 今も邪神との戦も何もなかったかのような涼しい顔でルイーゼの後ろに控えている。



 騎士という括りの一番偉い人を護衛騎士のアンドリューが軽々倒してしまったらルイーゼの護衛騎士から出世して王や第一王子の護衛騎士になったり騎士団に戻されたりするかもしれない。


 そういう意味ではアンドリューの行動はルイーゼに対しての忠誠の証であった。




 女の頃『女であるのが惜しい……』と言われていた通り、国の軍を任せる軍事的な王子として兄を支えて欲しいというのが感じられた。


「レイスが王になりルイーゼがそれを支える。我が国は安泰だな!」


 そう機嫌よく笑う父を見ながらやはり性別が変わったことによる変化が彼処(かしこ)に起きていることを感じた。


 ユニの国であるトラネス国と親交を深める為にルイーゼはトラネス国に嫁ぐ予定であった筈が、フィーニアス国の軍事を任せる状態になっている。



 女の頃も最終的には軍事の実権を握った経験のあるルイーゼとしては軍事を任されようがどうでもいい。


 だが結婚相手(ユニ)に関してだけは譲れない。



「……父上、私の結婚相手についてですが……」


「おお! 戦一筋だったお前にもようやく春が来たか! 相手は誰だ? とりなしてやろう」


 戦ごとしか興味のない戦闘狂であったルイーゼの突然の浮ついた話に家族一同笑顔で迎えた。


 家族たちを真っ直ぐに見つめ、ルイーゼは決意表明の如く宣言する。



「父上、私はトラネス国のユニと結婚したく思います」




 ――他国の王が溺愛する一人娘を嫁に欲しいなど、下手したら国際問題である。



「そ、それは……ならん! トラネス国の一人娘であるぞ!」


 フィーニアス国王は机を手でめいいっぱい叩き、ルイーゼの要望を全力で跳ね除けた。



「ル、ルイーゼ、落ち着いてくれ。そもそもルイーゼはそのユニ姫とは面識があるのか?」


 狼狽した兄に『ユニ姫』と呼ばれることにまだ少しの違和感も感じつつルイーゼは思考を巡らせた。



 会ったといえば今日の朝に会いに行ったが、婚約時に初めて顔を合わせたルイーゼとユニはこの時代では顔も見たこともないだろう。


「いえ。しかし私の相手はユニ以外ありえません」


「顔も見たこともない姫に求婚など聞いたこともないわ……!」


 気丈なルイーゼの母であっても流石に息子の爆弾発言には疲れたような顔を見せる。



 家族全員が猛反対しても戦場の気迫の中に身を置いていたルイーゼには柳に風。


「運命なのです」


 頑として揺るがない瞳に皆ただただ圧倒されていた。



 またユニに会いたい。


 それだけのためにやり直しを選んだルイーゼはこれだけは譲れなかった。



「しかし……トラネス国王の愛娘となると、外交ではなんともならん」


「なんとか出来れば良いんですね」


 そうやる気を出したルイーゼは常人からでもわかる闘気が満ち満ちており、家族たちは息を飲む。


 今はまだただの少しばかり強い青少年であるが、それと同時に数多くの死線を潜り抜けた英雄と呼ぶに相応しい邪神を倒した戦士でもあった。



 明らかに昨日までのルイーゼと違う。



「あ、アンドリュー……ルイーゼは一体何が起きたんだ」


「ええと、その……愛に目覚めた……と、言いますか……」


 ただごとではない弟に兄が心配し後ろに控えていたアンドリューに尋ねたが、アンドリュー自身もどう説明してよいのやら歯切れが悪かった。



「……とりあえず話は聞いたがこの問題は外交となり非常にナイーブな問題となる。ものには順序がある。わかるな?」


「……わかりました」



 徐々に話に伝えてみるから今は待って欲しいと半ば頼むように諭され、ルイーゼは『正攻法では難しいか』とアプローチを変えようと考え始めた。






 ◇







「それではユニ様、おやすみなさいませ」


「う、うん……おやすみ……」



 ――所は変わってトラネス国、王宮に住むユニであるが、流されるまま一日を過ごした。


 早朝急に現れた男になったルイーゼに要略して説明されたおかげで自分に起きた現象には合点がいったものの、怒涛の展開についていけていなかった。



 死んだと思ったら人生がやり直されているのである。



 それをしたのは邪神に取り込まれた自分を倒したルイーゼで、救った女神に頼んで時間遡行をしたという。


「……っ」


 邪神に取り込まれる前、そして取り込まれた後の記憶がユニに襲い掛かる。



 ……この王宮に住まう皆、父も、先程おやすみの挨拶をしてくれた馴染みのメイドも全て自分が殺した。


 強くならねば王と認めないと弾圧してきていた臣下たちも、嫌味を吐く口から悲鳴を出していた。


 そしてその屍……時には生きたまま操り他国に攻め入らせた。



 地獄絵図だった。



 それを作ったのは自分自身であると、ユニは思い出すたび苦しんだ。


 暗闇の中一人でいるとフラッシュバックするその光景に頭を抱え怯えていると、部屋の中から淡く光る魔法が形成され始めた。


 ルイーゼだ。


 ユニは何もない風を装い、ルイーゼを出迎えた。





「ユニ、会いたかったぞ」


 月明りしかない光に照らされてるだけとは思えないほど、ルイーゼの微笑みはユニにとって眩しかった。


「もう、ルイーゼ……君はいつも僕の想像の上へ行くね」


「ふふふ、ユニの為ならば不可能も可能にして見せよう」


 まるで婚約中の頃に戻ったかのように、二人は笑い合った。










「――へえ、性別が違うとそんなに変わるものなんだね」


「我がフィーニアス国は男女の役割の差が激しいからな」


 ルイーゼは自身が男になったことによる変化をユニに語った。



「僕のほうは……ただひたすらびっくりしてしまって、情報収集なんかは出来なかったよ。トラネス国の動きはわからないのだけど……」


 そう少し申し訳なさそうに謝るユニにルイーゼは頭を横に振る。


「構わない。それより密かに育てていた薬草たちが部屋一面に飾られているが、これは女になった影響か?」



「うん。そうみたいだ。他にも父様が僕専用の温室を作ってくれたみたいで、見たこともない薬草が沢山あって驚いたよ」


「トラネス王がユニに……」


 自分の後継者にしようとユニの作った薬草を踏み潰していたトラネス王が、一人娘には随分と甘いようだ。



 ユニは王には向かないと言われていたが、争いごとが苦手なだけで民の平和を祈り、民を幸せに出来る方法をユニなりに模索する、民心を思いやる王子だった。


 フィーニアス国ではそのような穏やかな貴族も存在していたし、なによりルイーゼには出来ない芸当である為そんなユニを敬愛している。



「しかもほら、本棚を覘いてみたら治癒魔法の指南書とかもあったんだ」


「それは随分な変化だな」


 微笑むユニを見るとルイーゼも自然と顔が緩む。



 ユニはその心と比例してか治癒魔法などの癒しの才能があった。


 それを踏みにじってまで無理に攻撃魔法を覚えさせようとしていたトラネス王にルイーゼは殺意を覚えたことすらある。



「……女になったことで父様がとても優しい。喜ぶべきなのか、よくわからないけれど」


「…………」


 愛ゆえに男のユニには厳しく、女のユニには溺愛をしているのかもしれない。



「でも男の頃より動ける場所はかなり制限されてて、会える人もとても少ないんだ」


「トラネス王の一人娘で溺愛されているユニが暗殺や誘拐などがあったらそれこそ大騒ぎだろうからな。周りもかなり厳重になるだろう」


 好きなことをさせてはもらえるがトラネス王の手の届く箱の中で箱入り娘よろしく閉じ込められている状態のようだ。



 どちらにしてもユニを自分の意のままに動かしたい。そんな思惑が透けてみえる。




「あまりものを知らない少女だったらしくて、迂闊なことを言うと「何処で覚えてきたのですか」って詰め寄られて大変だった」


「それは極端だな」


 様々なことを詰め込まれるように教え込まれていた王子の頃のユニからしたらかなりのカルチャーショックだったことだろう。




「臣下たちも凄く優しくて、近縁の皆も凄く良くしてくれる」


 トラネス王が溺愛している一人娘のユニに取り入ったら甘い蜜が吸えるからだろう。


 王の座を競い合った男たちはユニに見初められたら王にぐっと近付けるのだ。ライバルの時は見たこともないくらい優しくされることだろう。



 ユニを傷付けたくないルイーゼは言わなかったが顔には出ていた。あと純粋に気に入らない。


「ユニは私のものだ」


 不愉快という顔をしているルイーゼにユニは可笑しそうに笑うが、ふと寂しそうにした。




 この皆の変化の意味に、ユニも気付いている。


 今のユニはなにも知らない少女ではなく、トラネス王のこともトラネス国のことも熟知した王子の記憶がある。


「…………こんな状態ということは、僕は父様が気に入った王になる男と結婚することになるんだろう」




「それは私がユニを奪いとるから大丈夫だ」


「いいんだ、ルイーゼ」


 ユニは力なく首を振った。



「時を戻して国を平和にしてくれたことは感謝してる。でも、僕がやったことは消えない……僕は父様をこの手で殺し、王座を簒奪して他国を荒らした」


 ルイーゼは焦って言い返す


「それを変える為に時を戻したのだ!」


「今のルイーゼと僕が結婚するにはかなりの無理があるよ。それこそ、国が荒れる原因になるかも……それに僕がこのまま父様に従って王宮の奥深くで静かに住んでいれば、邪神にも憑りつかれない」


 確かにこのままでもユニの邪神化は回避出来たといっても過言ではない。



「しかし、ユニを邪神化にまで導く程の圧力をかけ虐めてきた男どもに今は求婚され、その中の誰かと結婚するなど地獄でしかない」


「僕はそれほどのことをしたんだ。ルイーゼ」


 ルイーゼはユニを守りたかった。



「しかし、私はユニと」


 そう言い募るルイーゼを押しのけるようにユニは言葉を吐きだす。



「僕は……君と幸せになる資格なんてない……!」


 それが僕に出来る贖罪だとユニは俯いた。



「……っ!」


 ルイーゼが言い返そうとするところをユニが被せるように言い募った。


「僕は邪神に身体を乗っ取られながらも沢山の人の命を奪い、骸を操り死者を冒涜し、たくさんの悲しみを生んだのをこの目で見てきた。思い出すだけで苦しくてたまらない……っ」


 溢れ出る涙はとどまらず服に床に落ちてゆく。



 心優しいユニに邪神のしてきた所業が生々しく記憶に残っているのはあまりにも辛い事だろう。


 しかし


 ルイーゼにも譲れない言い分というものもある。


「…………」


 ルイーゼは泣いているユニの腕を硬く掴み、顔を近くに寄せて目を合わせ真顔でこう言った。




「私は婚約者が邪神に取り込まれ、国を壊滅状態にされながらも数年間邪神と戦い続け、愛する者を殺した女だ」



 ルイーゼの発言にユニはハッとする。


 彼女もまた、自分の最大の被害者であると。


「それは……」



「ユニにその地獄の記憶があると同じく、私にもその記憶は残っている」


「……っ!」



 他の者たちは新しい時間をやり直せる。


 しかしルイーゼはユニのした罪を決して忘れられないのだ。


 一番に贖罪しなければならない存在は今現在でいうならばルイーゼである。



 痛ましげな瞳でルイーゼを見つめるユニに、ルイーゼはユニが完全に自分の方を見てくれたと微笑んだ。


「その私を幸せにするには、ユニ。君が側に居なくてはならない。君が罪を償うというのなら、私の横で笑っていなければならない」


「ル、ルイーゼ……」


 ユニの瞳には大粒の涙が溜まっていた。


 そのユニをルイーゼは抱きしめ涙はルイーゼの服に吸い込まれた。



「贖罪がしたいのなら、共に世の為になることを考えよう。今後こそ初めて会った約束通り、君を守らせてほしい」


 お互いにこの記憶を持っているのなら二人で歩んでいける。


 そうルイーゼは確信していた。



 ユニはしばらく声が出せないままルイーゼの腕の中に居たが、不意に脈絡のない話をルイーゼに持ち掛けてきた。


「……ルイーゼが昔、『ユニを守る』って言ってくれたときがあったよね」


「ああ」



 トラネス国でのユニは強さを求められ孤独で、周りは全て敵だった。


 全てはねのけるのがトラネスの王であったから。



「そんなこと言われたの初めてだったから、凄く嬉しくて……あの時から君が、僕の特別になったんだ……」


 ユニのしゃくりあげる小さな泣き声だけがルイーゼの腕の中で消えていった。









「……ルイーゼ、ありがとう……なんだか恥ずかしいな……」


「気にするな」


 思い切り泣いたユニにも昔の男のプライドというものがあり、恥じた様子だった。


 ベッドの上でまだ横抱きで抱えられたまま身体の全てをルイーゼに預けている状態も恥ずかしさに拍車をかけていた。


 暗に下ろしてほしいと思っての発言ではあるが察しの悪いルイーゼは全く気にした様子はない。



「ユニが苦しいと言うのならここから攫おう。遠くの国で暮らせばいい」


「ルイーゼ……」


 追ってこれない程遠くへ、今のルイーゼなら直ぐにでも行けた。



「傭兵なり冒険者なりすれば良い。私は強いから生活には困らせないぞ」


「……ふふっ、ルイーゼ、君ってほんとに……」


 くすくすと笑うユニにルイーゼは優しく微笑んだ。



「ありがとうルイーゼ。でも、ここでしか出来ないことも沢山ある。権力があるから出来る償いもあると思うんだ。僕はそれを頑張りたい」


「ああ。わかった」


「……でも、もしもルイーゼがそうしたいのなら、遠慮なく僕を攫っていってほしい」


 照れながらも微笑みながらそう、『なによりもルイーゼを優先させる』と言ってくれたユニにルイーゼは初めて会った時の衝撃を思い出した。


「……嗚呼、だから私は君が好きなんだ」



 ユニとルイーゼの間には昔から性別など存在していなかった。


 互いに惹かれ合い、恋に落ちただけであった。




「君の為なら、僕も戦うから……」



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