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序幕

初投稿作品です!


とりあえず作風が何となくわかる一章を読んで頂ければ幸いです。個人的な感想ですが、多分六話くらいから面白くなると思いますので!


小説を書く者としてはまだまだ未熟なので、皆様の感想、お待ちしてます(*・ω・)*_ _)ペコリ


※現在内容大幅改定につき、一部検索では表示されないようにいたしました

深夜二時頃、一人の男が神社の境内にある賽銭箱に座りながら、缶コーヒーを飲んでいた。


男の名は草苅直巳くさかなおみ


オールバックで眼鏡をかけており、シャキッとしていれば切れ者という雰囲気が出るのだろう。だが、服もよれよれでどこか草臥れた様子は、切れ者と言うよりただの疲れたおっさんだ。


「あー...たまにはこんな変わったことしてみるのもおつなもんだなぁ」


そう言いながら直巳は既に冷めた缶コーヒーを飲む。


季節は夏とはいえ、この時間帯はさすがに冷える。そこに冷たい缶コーヒーなどを飲めば寒さのあまり夏でも身震いしてしまう。


誰もいないことをいいことに、少し大袈裟に身震いした直巳は飲み終わった缶コーヒーを適当に投げる。


ポイ捨てではない。気が大きくなったのと、誰もいないのとで投げてみただけであり、もちろん後で回収するつもりだ。


「はぁ...」


気が大きくなったと思いきや溜息をつく。


それも仕方が無いだろう。直巳の職業は弁護士だが、弁護士というのは忙しい。現に今も、直巳は仕事の帰りではなく(仕事終わりでも充分遅すぎるくらいだが)、仕事を抜け出してきたのだ。


直巳は独立して事務所を構えているので仕事自体は強制ではない。だが、それでも今のうちにやらなければ不味い案件がいくつかある。


「ったく...誰だよ。弁護士は楽に稼げる、なんて言った奴は」


そんな独り言を近所に聞こえない、しかし境内に響き渡る程度の声で呟きながら、賽銭箱から降りて空き缶を回収しに行った。




一分ほどで空き缶を見つけ、しゃがみ込んで空き缶を拾おうとした時、後ろから何者かの足音がした。距離にして直巳の斜め後ろ約10メートルほど。神社の入口付近からだ。


(まさか、もう来たのか?いつもより早い時間だな。それに、階段を上ってくる音もしなかったし...)


そう不審に思う直巳だったが、深夜であるこの時間に、思い当たる人物以外の者が、わざわざこの神社に訪れるとは考えにくい。


実のところ、直巳が仕事を抜け出すこと自体は珍しいことではなかった。


初めにその人物と出逢ったのは、何回目の仕事放棄の時だったか。そんなことすら覚えていないが、二人は初めてあった時から意気投合し、待ち合わせはしないものの、度々神社で出逢っては、仕事の愚痴や、趣味の話に花を咲かせていた。


さらに、少し前までは神社で会うだけではなく、日常生活の中でも一緒に食事に行くなどの交流もしており、知り合いがほとんど居ない直巳からすれば、言い過ぎかもしれないが、親友だと言ってもいいほどの仲だった。


ただ、最近はちょっとしたすれ違いがあったせいで、わざわざ会うことも減っており、神社に行く時も少し早めにするなど、偶然に出逢うことも避けるようにしていた。


しかし、どういう訳かは分からないが、どうやら今日は直巳と同じように早くに神社に来たらしい。


直巳の本心としては、件の人物と気持ちの整理が着くまでは会いたくなかった。だがそんなことを今更言っていても仕方が無い。なんにせよ、二人にとって久しぶりの再会だ。そして、その再開場面が賽銭箱に座っていたり、境内で空き缶を投げ捨てるという、傍若無人なものでは格好がつかない。


後ろから迫ってくるらしい人物に、拾った空き缶が自分のものとバレないように、「こんな所に空き缶なんて捨てたの誰だよ」などといいながら、しゃがみこんで空き缶の方に手を伸ばす。


そして、空き缶を手に取ったその時、直巳は後頭部から強い衝撃を受け、そのまま地面に顔から激突した。


何が起こったかわからない直巳は、手をついて起き上がろうとする。しかし、右腕が震えて思うように動かず、上手く立ち上がることが出来ない。


さらに、それによってバランスを崩してしまい、右側に倒れる。だが、直巳はその勢いを利用することによって、なんとか仰向けになることには成功した。


仰向けになったことで直巳が見たものは、マスクやサングラスで顔を隠した人物が、直巳に向かって、例えるなら金属バットのような、細長い金属光沢を放つものものを振り下ろさんとしているところだった。


直巳には、これが突然の事で、何がどうなっているのか分からない。だがそれでも、ぼんやりとした思考の中、微かに働く危機感に動かされ、未だに震える手を振り上げ、凶器が振り下ろされたら当たるだろうあたりを守る。


そして、想定通りの場所に凶器が振り下ろされ、薄い肉のついた骨とぶつかった。その結果、相対的に脆い物質である骨は、鈍い音を立てながら、頭に響く鈍痛を切り裂くような激痛とともにあらぬ方向へと折れ曲がる。


あまりの痛みのために絶叫しそうになり、直巳はあることに気がついた。声が出ない。先程の腕の震えもそうだが、後頭部を殴られたせいだろう。体が言うことを聞かない。


「...のこと...て、し...れば...のに」


襲われても悲鳴をあげない直巳のことが、直巳を襲った人物にとってどのように映ったのか。正確なことは分からないが、その人物はしゃがみこみ、直巳の耳元で死にゆくものを慰めるように囁いた。


直巳は上手く働かない頭を必死に働かせ、自分の記憶からその声の持ち主を探す。そして、その答えに辿り着き、目を大きく開いた時、再び頭に強い衝撃をうけ、その答えを確認することさえできず、意識を失った。

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