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忍者の歴史

 寺子屋——その歴史は古く、江戸時代には町人の子供達に「読み」、「書き」、「そろばん」など基本的な学問を教えていた民間の教育施設として普及していた。

 日本が鎖国をやめてからも、寺子屋は外国の教育機関のさまざまな制度を取り入れ、日本の教育に欠かせない存在となっている。

「なんとか間に合ったな」

「そうだね。お兄ちゃん」

 俺たちはグレー色で長方形型の大きなコンクリートの建物の前にいる。

 俺たちの通う『都立東京寺子屋』は中々の規模の寺子屋で建物も高く、大きく作られていて、中々立派な建物だと俺は思っている。

 門から忙しく走ってくる寺子屋の生徒を何人か見た。

 一時間目が始まるまであまり時間がない。

 俺は中に入った。靴を脱ぎ、上履きに履き替えた。

「それじゃ、お兄ちゃん。また放課後ね!」

 麻里奈は走って自分のクラスへと向かった。

「ああ」

 俺も急いで自分のクラスに移動した。

 二年C組。ここが俺のクラスである。このクラスにはそれなりに悪の強い奴が多い。

 俺は席に座ると後ろから肩をポンポンと叩かれた。

「おはよう。翔。今日は結構ギリギリだったな」

「おはよう。武。まぁな」

 同じクラスの工藤武くどうたけしが話しかけてきた。

 武はガッシリとした体格で角刈りという風貌である。運動神経が良く、リーダーシップ性にも長けている武は、寺子屋で根暗な俺にも気さくに話しかけてくれる。

「夜更かしでもしたのか? いかんぞ、体に良くない!」

「まぁ、ちょっとゲームをな......」

 俺が忍者をしているということは学校では誰にもいっていない。

「ほうほう! 一体、どんなゲームなんだ? 気になるな」

 やばい。普段ゲームなんてしないからなんて答えたらいいか分からない。

 すると、勢いよく扉が開くと黒いスーツを着たメガネをかけている俺たちの担任の先生が入ってきた。

「みんな、席に着くように!」

 凛とした声がクラス中に鳴り響いた。教室に入ってきたのは、小柄でメガネをかけた長い茶髪が特徴の担任の関口秋せきぐちあき先生だった。

 先生は歴史の教科担当である。

 美人で人気のある先生なのだが、やや厳しめの先生で俺は少し苦手だった。

「それじゃ、授業始めるわよ! 今日は忍者の歴史について!」

 勢いよくガリガリとチョークで勢いよく黒板に文字を書き始めた。

 忍者の歴史か。バレない程度に居眠りする予定だったのだが、この授業はやや興味深いから真面目に授業を受けてみようと思った。

「忍者の起源だけど、その起源は聖徳太子説、山林の原住民説、修験道の山伏説など多くの諸説が存在しているわ」

 先生は板書しながら、忍者の諸説について語り始めた。

 忍者の起原の話はあまり聞いたことがないので、中々面白い。

「忍者の多くは農地が乏しい山地で暮らしていたんだけどね、これらの土地の武士たちは互いに争う中で、平地とは異なるゲリラ戦法や情報収拾能力を編み出して勢力を保って行ったの。特に近畿の伊賀そして甲賀がその典型とされているわ」

 忍者にあまり詳しくない人も名前くらいは聞いたことがあるかもしれない。

 伊賀——忍術流派の総称で、甲賀と並ぶ有名な流派の一つである。

 根拠地は現在の三重県伊賀市と名張市の辺りである。

 普段は、農業や行商をして各地の情報を探る一方で、指令が下ると戦場やその後方へ出向き、工作活動に励んだとされている。

 また、伊賀忍者は催眠術や手品を含む呪術を得意としていたと言われている。


 甲賀——同じく忍術流派の総称でその根拠地は現在の滋賀県の甲賀市、湘南市である。甲賀忍者は医療や薬に精通していたと評されている。その名残として、甲賀市には製薬会社が多く存在している。

「忍者は独自の戦い方を武器に傭兵として各地の有力者に仕え、各地へ渡って各流派の集団を形成したわ。これが後世でいう忍者ね。とくに戦乱の激しかった戦国時代にもっとも活躍したとされているわ」

 他のクラスメイト達は興味深そうに黒板を眺めながら、先生の話を聞いていた。いつもは政治の話だのなんだの堅苦しくて退屈しているところだが、自分の職業に関することなので俺もいつの間にか傾聴していた。

「江戸時代も江戸幕府に支え続けた忍者だけど、日本が鎖国をやめたあたりから忍者の数は徐々に減っていったとされているわ。また、世界大戦によって最前線で戦っていた忍者が戦死したことも忍者の数が減った原因とされているわね。だけど、みんなも知っての通り、江戸城で姫さまの護衛を勤めたり、今も忍者は活躍しているわ。それに忍者の一族じゃなくても、忍術が使えれば一応、忍術になることはできるわね」

 すると、メガネをかけた真面目そうな生徒が手を挙げた。

「先生! 忍術はどうやったら使えるのでしょうか?」

 質問を受けた先生は複雑そうな顔をした。

「私もあまり詳しくないけど、忍術を使うには、『忍気』と呼ばれる体内に眠る力を扱う必要があるわ。忍気は一般的に忍者の一族の者にたくさん備わっていると言われているけど、修行で増やすこともできるらしいわね。さらに忍気を上手くコントロールできるようになると忍術が使えると言われているわ」

 おお......とクラスメイト達は声をあげた。

 先生が説明したことは当然、俺も知っている。忍気を上手く扱えるようになると、身体能力の向上させるといった芸当もできる。

 また、その応用として一部の動物の『声』を聞くこともできる。

「正式な忍者になるには、試験を受ける必要があるわね。普通にネットからでも申し込むことができるようになっているわ。筆記、実技、面接を経て合否が決まる。ただ、合格難易度はとんでもなく高いのよね。なにせ、忍気をコントロールする必要があるから。けど、合格すれば忍者として東京城を初めとする、行政の中枢を担う機関で働くことができるわ。私個人としての意見を言わせて貰えば忍者になるのはすごい大変な割りに危険が伴う職業だから目指すのはおすすめしないわね」

 おすすめできない職業か。確かにそうかもしれないな。

 俺と麻里奈は高校に入学する前に忍者試験を受けた。合格するまでに多大な労力を必要とした。合格するまでに日々、厳しい修行を二人でした。

 忍者として日々、活動している俺だが、危険の多い職業だとつくづく実感している。報酬こそ姫様案件なら中々貰えるがそれ以外だと大して高くなかったりする。

 先生はその後、忍者が使っていた武器の話の説明をし、一時間目が終了した。


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