波乱の始まり ~後編~
確かに、ここがどこなのか全く見当もつかないので、情報が欲しいところだが、そう簡単にホイホイとついていってしまっては危険だ。
しばし悩み、結論を出す。
「では、お願い致します。私をルファラ王国まで連れて行ってください。」
虎穴に入らんずば虎子を得ず。
情報というものはとても大切だ。ましてや、このようにどこかもわからない場所では多少のリスクを冒してでも情報を得なくてはならない。
「ありがとうございます。では・・・」
クォルと名乗る老人が葉月に背を向け、歩き出そうとすると、
「その前にひとつ確認しておきたいことがあります。」
葉月に呼び止められる。
振り返った瞬間、血の気が引いた。
「私は元の場所に戻れるんですよね?」
クォルは深淵のように暗く光などない瞳で葉月に見つめられ、総毛立つ。
「ここは私が元いた場所とは違う場所で、皆さんが私に何かやってほしいことがわかりました。しかし、私は元の場所に戻ってやらなければいけないことがたくさんあります。
ですから、戻せないなんて言われたら
皆殺しにさせていただきます。」
その瞬間、全身が凍りつく。
この少女は、本気でいっている。帰れなければ、本気で皆殺しにするつもりなのだ。
周りの男達も同じように固まっていた。
クォルは必死に凍りついた体から声を出す。
「ぁ・・・あ、安心してください!この王国魔導士である私がいれば、大丈夫でございます!」
そういうと、
「そうですか。ありがとうございます。」
花のような笑顔を見せた。
しかし、目はさっきと同じ光のない瞳のままだった。
「で・・では、さっそく王国の方へ向かいましょうか・・・。」
クォルがそう告げて、出口に向かい歩き出す。
周りの男達も、クォルの言葉に聞いて、逃げるように出口に向かっていく。
ここにいた者たちは、救世主として呼んだはずの者に、突然殺意を向けられたため、非常に混乱していた。
クォルも王国魔導士として、今まで戦って多くの敵と戦ってきたが、動けなるほどの殺意を感じたのは、初めてのことだった。
そのため、外にいた敵の気配に全く気付けなった。
突如として出口から雷が神殿内部に入ってきた。
雷は竜のような形をしていた。
その雷の竜は一番出口に近かった男が喰い、そのままのたうち回るように神殿を破壊していく。
何者かからの攻撃。
普段の男達であれば、すぐに冷静になり的確な対処もできただろう。
しかし、今の彼らは葉月に殺意を向けられ、混乱していたので、この場で冷静に判断できる者がいなかった。
ただ一人、クォルを除いては。
「全員しっかりせい!敵はヴォーガ帝国の者たちだ!気が入っとらんと死ぬぞ!」
その言葉に男達は気を取り戻し、隊列を組み始める。
「ペティはハヅキ様と一緒に隠し通路からここを脱出し、王国に戻れ!」
「クォルさん!何を言うのですか!」
葉月は叫んでいた。
「皆さんが残るのに、自分一人だけ逃げるだなんてそんなことやる気はありません!足手まといになるかもしれませんが、皆さんと一緒に戦います!」
葉月がクォルに抗議する。
そんな葉月にクォルは近づき、
「ハヅキ様のような未来のあるお方をここで死なせるわけにはいきませぬ。また、ハヅキ様にはやらなければいけないことがあるのでしょう?ならば、ここは我々にお任せください。」
そういって、葉月のおでこを指でつつく。
その瞬間、葉月の意識は途切れた。
読んで頂きありがとうございます。雄明です。
今回は色々忙しくてあげるのが遅くなってしまいました。
次回はできるだけ早くあげるように努力します。




