波乱の始まり ~前編~
周りが騒がしい。
まるで、自分の部屋の中で騒いでいるようだ。
召使いさんが何かしてしまったのだろうか。
そういえば、勉強していたはずだったのだが、いつの間にか寝てしまっていたのか・・・
そう思いながら、神条 葉月は重い瞼をあげる。
そこで、違和感を覚えるが、すぐに正体に気付く。
いつも朝起きてみている天井がなかったのだ。いや、正確には天井に穴が開いていた。天井は自分のいるところを中心に直径3メートル程の穴が開いており、その穴からは青い空がみえていた。
何事かと思い、体を起こすと、目の前の光景に思考が停止する。
昨夜は自宅にいたはずなのに、今いるのは、まるでファンタジーの世界の神殿のような場所にいたからだ。父の会社のグループに建設業があるので、建築学も勉強していたが、このような神秘的な建物は地球上ではみたことがない。葉月はこの美しい建物の内装に目を奪われていた。
そのため、周りにいた人達に気付くのが、遅れてしまった。
「■■■■■■■■!」
葉月を囲んでいる男の1人がこちらを指さしてくる。
「っ!!」
その叫び声に葉月は我に返り、右半身の構えをとり、周囲を警戒する。如何せん今の格好が膝まであるシンプルな赤いワンピースに黒い無地のパーカーを羽織っているだけという恰好に加え、周りに武器らしいものが一切見当たらず、大の男8人にも囲まれている。
圧倒的不利な状況なのだが、少女の双眸は強い抵抗の意志が宿っていた。
「さぁ、来るなら来てみなさい!!」
そう叫ぶと、男達は否定するように手を振ったり、頭を下げたりして、口々に叫ぶ。
「■■■■■■■■■!」
「■■■■■■!」
何か喋っているようだが、何を言っているのか全く分からない。
8ヵ国の言語を覚えている葉月でも聞いたことのない言語なのだ。
よく見ると、顔つきが日本人の顔つきではない。髪も金色に茶色、白など様々だった。
男達の服装も、ファンタジーの世界にありそうな高級感がする装飾を施してある白いローブだ。
どうしたものかと表情には出さずに悩んでいると、男達の中から1人、葉月の前に出てきた。
その男を他の男達より30歳ほど老けて見え、着ているものも他の者たちとは違い、高級そうなネックレスや指輪などをつけている。
この人がこの中で一番偉いのだろう。
「私の言葉がわかりますか?」
葉月は驚いた。周りの人達がわからない言語を使っている中、目の前の老人は流暢な日本語を喋ったのだ。
「はい・・・。あなたは日本語が喋れるのですか?」
「いえ。あなた様の使っている言葉がわからなかったもので、失礼と思いながらも『言語理解魔法』というものをかけさせていただきました。」
「ま・・・・魔法・・・?」
どういうことなのか、一瞬立ちくらみが起きる。
まるでファンタジーの世界のようだとは思っていたが、まさか魔法なんて言葉が出てきてしまい、挙句、魔法をかけられてしまっては、本当に自分がファンタジーの世界にいるという可能性が浮上してくる。
ショートしそうな頭を必死に動かしていると、目の前の老人に話しかけられる。
「申し遅れました。私はルファラ王国所属の魔導士、クォル・ムウと申します。」
「あ・・・。私は神条葉月といいます。」
突然、自己紹介をされ戸惑うが、警戒しつつ、こちらも自己紹介をする。
「さて、ハヅキ様。あなた様はここがどこなのか、何故こんな場所にいるのか、わからないことが多いでしょう。我々はそれをお教えしたいので、一緒に我々の国、ルファラ王国に来ていただけませんか?」
読んで頂き、ありがとうございます。雄明です。
今回は長くなったので、前後編に分けさせて頂きました。
次回も読んで頂ければと思います。




