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メンヘラの魔剣ちゃんに取り憑かれて別にどうということもない

作者: imoshake

「……死にたい」


 流れる雲はまばらで、暖かな陽射しを遮らない。しかしそれも、届くのは建物の上辺だけだ。

 湿った空気が漂う裏路地には、どこかから聞こえてくる雑然とした物音に混じって男の怒号が飛び交っていた。


 バロは複数人の男たちの殺意の視線を矢面に受けて。


「……っ死にそう、なんだが?!」


 バロは剣士である。褐色の頑強な肉体は引き締まって、一分の隙もない。

 バロの暗赤色の髪眼をみて、それが血染め色だと言われれば信じる者は多いだろう。

 彼はそれほどたくさんの敵を斬ってきた。


「適当なこと言わないで。死にそう、とか。そりゃご主人サマは何度も死に掛けたかもしれないし、いっぱい殺して死が身近だって言うのは分かるんだけど。

 でもさ、だからこそ気軽に言っちゃいけないんじゃない? 私の価値観を押し付けようってワケじゃないんだけど。少なくともいま全然死にそうじゃないよね?」


 バロは答えなかった。

 気勢の声と共に上段から振り下ろされた大剣を一歩下がるのみで躱すと、鉄板の仕込まれた靴で思い切り剣の腹を蹴り抜く。

 大剣を持つ男はたたらを踏み、その髭面にバロは拳をお見舞いしてやる。


「死にたいとか死にそうとか、自己防衛のためにあるべき言葉だと思うんだけど。

 私にはご主人サマが死にそうって言うのを止める権利はないけど、でも軽々しく使われてるのを聞いてると言葉が薄っぺらになりそうで、なんか嫌なんだよね」


「……悪かった、なっ」


 バロがおざなりにそう口にした時、背面からぶつかった風の魔法が彼の身体を掬い上げた。

 咄嗟に腕を伸ばして地面を掠め、宙で無理に身体を捻ると、拾った破片を投げつける。

 荒い呼吸の間隙を狙い澄まされた小石は、魔法を放った男の口内に飛び込んだ。

 目を白黒させた男にバロは容赦無く手刀を叩き込み、意識を刈り取った。


「……別に、いいんだけど。私が邪魔で、死んじゃうかもしれない確率上がってるのは本当だと思うしさ。……ごめんね?」


 残る敵はあと三人。

 既に四人、過半数を倒されたにもかかわらず、彼らは逃走の意思をみせない。

 この狭っ苦しい路地に四人も倒れていては、ともすれば仲間を踏みかねないというに。

 敵愾心もあらわにバロを睨みつけている。

 

 ――煽っていると、そう思われているんだろうな。

 バロはそう考える。

 だらりと下げた右手に目を落とす。

 

「……怒った? ……当然だよね。いっそ、私のことなんか叩き壊してくれればいいのに」


「……気にするな、セル。集中してるだけだから」


 だからせめて、戦闘中は必要以外黙っておいて欲しい。とまでは言わない。

 もう()()との付き合いも二ヶ月になるのだ。多少は扱い方を心得ようというもの。

 

 バロはセルを見下ろした。

 右手に握る、白刃の剣を見やった。


 細身。両刃の剣だ。バロの引き絞られた腕よりもひと回りふた回りも細い。腕を下ろせば、剣先は地面にぎりぎり届かない程度の長さ。

 つばは無い。無くとも、刃がバロを傷つける事は起こり得ない。

 漆黒の柄。建物の影に遮られ陽の届かない裏路地でも眩いほどに、透き通る銀白の刀身には精緻な紋様が描かれそのしなやかな造作と相まって儚げでさえある。

 

 打てば折れてしまいそうなそれは、しかしどうみても剣だ。



 バロは剣士である。剣士として知られている。

 未だ一度もその剣を振るわず、しかも始終ぶつぶつと()()()()してる様は挑発にしか見えないだろう。

 バロはそう自覚していた。


「……うるさかった? ごめんなさい。……壊してくれれば、静かになるのに」


「……もう終わらせるから」


 バロは右腕を背に回した。左手を突き出して、指先だけで手招きするような仕草をしてみせる。

 男たちにの表情にいっそうの苛立ちが走った。

 決して素人ではない。しかし、相手の力量も測りきれなかった彼らはすでに平静を失っていた。

 

 あっさり焚き付けられた彼ら三人は甘い踏み込みでバロに迫り、そしてまたたく間に夢の世界へ招待される。

 先の四人同様に、殴り、ないし蹴りでだ。


「おつかれサマ。……また、使ってくれなかったね」

 

 辛気なセルの声が聞こえる。バロは溜息を吐いた。



 ■



 バロが魔剣セル・セセルセを手に入れたのは運命的偶然だった。 

 いや、自分の意思で引き抜いたのだから偶然とはいえないはずだが。

 ともかく。

 

 地下迷宮のなんてことはない通路の天井に、さり気なく突き刺さってる黒っぽい柄を見つけたのが運の尽きだった。 

 それを観察していると、魔剣に宿った思念がバロに自己紹介した。玲瓏な声は耳心地良くて。

 思わず魔剣に手をかけていた。

 

 石造りの天井に刺さっていたとは思えぬほど抵抗なく抜けてしまったセルを手に、バロは迷宮を出た。そこで気づいた。

 剣が手のひらから離れない。

 柄を握りしめていなくても、手を逆さまにしても、腕をいくら振っても、くっついて離れない。

 まるで溶接でもしたか、手のひらに半ば沈み込んでるようで、引き剥がすことも出来ない。

 

 迂闊にも呪いの剣に触れてしまったのだと、バロは遅すぎる理解を得た。



 しかし、魔剣セルの思念に悪意は無いようだった。

 少々――かなり、相当。話しているだけでバロを疲れ果てさせる才能を持っている以外は、セルは邪気の無い存在だった。

 ひとまずは片手に刃物をくっつけて生活する不便に目を瞑る、二人の共同生活が始まった。


 バロは流浪の武人だった。セルを手にするまで振るっていた剣は量産品であった。

 業物を求めて、また自身のさらなる高みを目指して、彼はほうぼうを巡っていた。

 

 呪いつきとはいえ、セルは見るからに逸品である。

 バロはそれを喜んだ。剣がくっついたのが利き腕であるのも幸いだった。

 一度浪人と切り結んで、バロはそれに絶望した。利き腕であるのが災いだった。

 その時のことを思い出すだけでバロは頭痛がした。


「ひゃんっ。痛いっ。あっ、ダメ! 欠けちゃう! 折れちゃう!」


 剣を打ち付けるたび、セルはそんな悲鳴をあげた。

 いつまでも聞いてるのはバロの精神がもたなかったし、なにより手応えがおかしかった。

 セルの言うとおり、力を受け流すことが重点の斬り合いでなく、思い切り岩にでも叩きつければ本当に真ん中からぽっきり折れてしまうのではないか。

 そんな頼りない手応えだった。 

 結局、その浪人はバロの頭突きに伏すことになった。



 見かけ倒し。そんな言葉が浮かぶ。

 剣として使えないセルは、なお厄介な性質を持っていた。


 切れ味がときによって全く違うのだ。

 ある時は分厚い金属をいとも容易く切り裂き、ある時は薄布一片も切れないなまくらと化す。刃物として使うにも事足りない。


 どうにもそれは、セルの機嫌に左右されているようだった。

 セルの機嫌が良い時ほど鋭い切れをみせて、しかし彼女はほとんどの場合どろどろした声しか聞かせてくれないので、やはり使いものにならない。

 初対面での涼やかな声は詐欺だったか。


 どんなに鋭利なときでも不思議とバロに傷をつけることはなかったが、こんな気分屋ではいつ鞘を突き抜いて飛び出すかと肝を冷やす。

 抜身のまま外套の下に隠してぴったり沿わせておく。それで精一杯だった。


 

 が、やはり見られてしまうこともあって。

 知る人は知る、暗赤色の髪眼した剣客。

 そいつがまっこと奇麗な魔剣を持ってるらしい。さぞ優れた大業物。売れば高くつこう。


 そんなところだろう、とバロは考えている。

 先の、裏路地で襲ってきた男たちもその手合いであった。


 ――なんと面倒な拾いものをしたことか。

 つやつやなめらかに白がかる彼女の()は、いくら見つめて艶麗たるばかりだった。



 ■



 うっかり切らないように脱いでそこらに放っておいた外套を拾うと、バロは路地を離れた。

 すやすや眠る男たちは、たぶん、ここの住民がもてなしてくれることだろう。


 バロにとってこの辺りはよく知ったる街だった。

 華やかな王都の中にありながら、日陰で暮らすことを強いられた者たちが住まう場所。貧民街。

 幼少の頃、バロはここで泥を啜って生き延びる日々だった。懐かしい場所だ。

 どうしてまた、こんなところに戻って来たかというと。


「ねえねえ。あれ見て。あの雲。ネコみたいにみえない? かわいー」


「どうするかな……今年の王剣闘技杯」


「聞いてる?」


「ん、ああ。もちろん」


 角を抜けて大通りに出る。いっきに喧騒が身近になる。

 そのなかに居ても、直接思念で語りかけてくるセルの声は聞き逃すことはないのだが。

 商店が居並ぶ往来を歩きながら、ふと屋台から漂う肉の焼ける匂いに気を取られたバロは適当に返事して、すぐにそれを後悔する。


「聞いてないでしょ。どうでもいいんだろうけど。私だってどうでもいい話題だったけど、でも生返事は良くないと思う。お互いにとって誠実じゃないと思うよ。

 私に対して誠実に振る舞えなんて言う権利ないけどさ。ご主人サマも嫌でしょ? 私がこんな風なこと言い出すの」


「わ、悪かった……すまない。……ネコ?」


「気にしないで。闘技杯? 私を壊せば勝てるんじゃないの」


 投げやりな口調だ。

 かなり機嫌を損ねてしまっているようだった。


 セルが特に嫌うのはぞんざいに扱われることであると、二ヶ月のあいだにバロは理解していた。

 どんなに面倒に思っても、セルにはちゃんと言葉を返さなければならない。

 そうしなければ十の言葉で言い詰められるからだ。


「そのつもりはない。……王権闘技杯はな。案外、徒手もいけると思わないか?」


 それから、セルは話題をふられるのも喜ぶようだった。

 バロには彼女の心模様はとても掴みきれないが、それでもなんとかうまく付き合っていこうとはしているのだ。


「たしかに、ご主人サマすごい強いよね。剣なんかいらないぐらい。ご主人サマ、右が利き手なんでしょ? 私が邪魔だよね、やっぱり」


 あ、言い回しに失敗した。とバロは今度は心中で溜息した。

 


 ■



 王剣闘技杯。それは王都の中心近くで年に一度開催される武闘会だ。


 剣、とはついてるものの剣に限定する縛りなどは無く、どころか制約といえるほどの制約はほとんどない。


 武器種は問わず。魔法もあり。後遺症の危険を無視して薬物のたぐいを使用するのもありありだ。

 一対一の勝ち抜き戦。最後に残るのは一人きり。

 勝敗の判定は、審判が明らかに勝負がついたと判じた場合か、片方が降参した場合か。もしくは死んだ場合だ。


 例年死者が絶えず血なまぐさいこの催しに眉をひそめる者も多いが、国を挙げてのお祭りだ。

 興行収入、税収入は測り知れない。開催が取りやめになる気配はまるでなかった。

 優勝者に与えられる賞金や名誉を求めて、また観戦のために国外からやって来る者も多い。

 

 その賑わいは、開催が迫った今、貧民街が近いこんな外れにまで屋台が出されるほどだ。

 

「いいなー。おいしそう。それ、何の肉?」


 通りの隅っこに腰掛け屋台で買った串焼き肉を頬張るバロに、じゅるり、と喉を鳴らすような音を立てたセルが尋ねる。


「トレスターって魔物の肉だな。予選で戦わせられる魔物だよ」


 王剣闘技杯は参加人数過多も想定して、最大で一週間かけて行われるが、その前に予選が存在する。

 もちろん、その様子も見世物だ。人同士ではなく魔物との戦いなのは観客を飽きさせない配慮かなにか。

 事前に戦う魔物の情報が公開されているのは、予選があくまで最低限の足切りにすぎないからだ。


「これから戦う魔物の死体の肉を食べるって、なんか変なの。どんな魔物なの?」


 最後の肉きれを歯で挟み串を引き抜くと、ひと息で飲み込んで、それからバロは答えた。


「んーと、身の丈は俺の二倍ぐらいか。人型だけど角が生えてる。黒い肌。それぐらいだな」


「うぇ。三、四メートルの人型の肉? ますます変なの……。戦い方の情報とかはないの? ご主人サマなら余裕なんだろうけど」


「去年の予選でトレスターと戦ったが、力で競り合おうとしなければ別にな」


 串を左手の指先に行き来させ弄びながら、バロはあまり面白くない記憶を思い起こした。


「今年はたぶん、俺は予選は参加しなくていい。前年度で優勝、準優勝者は翌年の予選が免除されたはずだ」


「……その様子だと準優勝だったのかな。そっか。……そっか」


 バロの肯定を待たずに、セルは消え入る声で言った。

 考えていることにはおおいに察しがついたが、といってバロに否定の言葉がある訳ではなかった。

 

 前回の王剣闘技杯。

 

 決勝戦まではおよそ危なげもなく、バロは勝ち進んだ。

 そこで剣豪タグと対決し、結果バロは剣を折られた。比喩でなく、空を切り唸りさえ上げた黒い刀身を受けて、中ほどで叩き折られた。

 

 光を返さない黒塗りの長剣。対する自分が手にしていたのは流通品。

 技量においてもタグに一歩劣っていたことはバロも認める。

 

 しかし得物の質が勝敗を決める一因となったのもまた事実だ。



 だからバロは剣を求めていた。

 そして、セルと出遭った。



 ■



 乗り合い馬車で一日と、宿に一晩。それから更に歩いてバロは王城の近くへと着いた。

 

 遠くに見える石造りの立派な城郭、その手前に地面を大きく段々にえぐりとって観客が見下ろせるよう造られた円形の闘技場がある。

 注目の試合が執り行われる大闘技場だ。収容可能人数はおよそ数万人。

 他にもそう離れていない位置に丸天井の闘技場がいくつか存在し、そこでも闘いは行われる。

 

 当日には、観客席にあぶれた人々が観戦できるよう、遠景を映し出す魔法もあちらこちらで使われる予定だ。

 


 王剣闘技杯の運営が詰める建物から西日のもとへ出たバロは、眩しさに目を細めた。


「こりゃあ明日も晴れだな」


「そういうのフラグっていうんだけどね」


 ひといきれに顔をしかめながらも、セルを間違っても人にぶつけないよう気を張って人混みの中を避け通る。


「フラグ?」


「ん、なんでもない。晴れのほうがいいの?」


「不確定要素が減るから、まあそうだな。……っと」


 人の流れが途切れたのを見計らって、軽く助走をつけたバロは三角屋根の建物に飛びついた。

 片手と両足だけで器用に三階建ての外壁をよじ登ると、そのまま屋根のうえを歩き出す。

 

「それにしても、開催前日になって急に参加表明された運営の人たちは、きっと今晩は眠れないだろうね」


「誰も眠らないだろうさ。参加者以外はな。……日程を確認していなかったのは手落ちだったと思うが」

 

 直前まで参加を迷い足踏みしていたバロは、そこにまで気が回らなかった。

 すでに予選は終わり、本戦前日の夕方ともなれば出場者の対戦組み合わせなどの調整もとっくに済んでいることだろう。

 飛び入りでバロが参加を許可されたのは、実力が証明されているだからだ。 


 これは武を競う場であり、同時に極上の余興。求められるのは、魅入るほどの命のやり取り。

 観衆は、前年の準優勝者――そしてあるいは実現されうる、バロと、前回の優勝者との再戦。

 その闘いを見れるものならば目にしたいと思っている。


 

 そう、やはり今年度もタグは参加するようだった。

 運営の手回しで――というか、それが意図的であることは別に隠されていないが。

 

 お互い順当に勝ち上がった場合、バロは決勝でまたタグと相まみえることになる。

 参加登録の際に、そう聞かされた。



 危なげなく屋根を飛び移ったところで、バロはふと足を止めて手に握る魔剣を見た。

 夕陽を余すところなく全身に受けて、銀白を透き通して内まで赤く染めている。

 

「どうしたの? そんなに見つめられると照れる。紅潮しちゃうぅ」


 ちょっとふざけたような、彼女にしては珍しい口ぶりだった。


「赤くなってるのは陽射しのせいだろ?」


「冗談、冗談」


 そんなことを言う。ふと、バロは思い至った。


 ――自分がセルを理解しようとしているように。

 彼女もまた同じなのかもしれない。

 不器用な気遣いだったなら、バロは確かに、多少やわらいだ緊張に気づいていた。



 しばらく、陽が落ちきるまで。バロはそこに佇んでいた。



 ■



 すっかり夜の帳が下りて、道行く人の賑わいはむしろ増したようだった。

 これから酒をいれて飲み明かす人も多いのだろう。なにせ祭りだ。



 バロは屋根伝いにしばらく移動して、それから地上に降りると一軒のくたびれた外装の建物へと入った。

 混み合ってはいるが、しかし大通りを離れたこの店ならば座って注文するぐらいは出来る。


 バロがこの店を訪れたのは、去年たまたま利用した覚えがあったからだ。

 だから、彼との遭遇もまた偶然に過ぎなかった。


 予選の模様だとか、優勝候補は誰だとか、杯を片手にそんな会話が飛び交う店内で、角に陣取る男。

 がっしりした体つきだが今は背中を丸めて、ちびちびと酒を口にしている。

 目立たない。バロも一瞬見落としかけたほどだ。

 なんの考えがあった訳でもなく、バロは男に近寄った。そして名前を呼んだ。


「――タグ」


 男は顔を上げた。バロを認めると、男はちょっと口元を緩ませた。


「バロじゃねーか。今年は来ないのかと思ったぜ」


 手で示して対面に座るよう促されて、バロは軋みを立てる木椅子に腰を下ろした。

 待たずして、建物同様に年季の入った老年の店主が自ら注文を取りに来る。


「果実水を」


「なんだ、呑まねえのか? ……親父さん、こいつに、なにか腹にたまらない付け合わせを出してやってくれ」


 店主は首肯すると、乱雑に投げ出された誰かの足などのあいだをするする抜けて奥に引っ込んだ。

 バロは訝しみ、タグに奇異の目を向けた。タグはすこし赤らんだ顔で機嫌良さそうに言った。


「心付けだよ。呑まないってんでも、話には付き合ってくれるんだろ」


「……まあな。タグは、ずいぶんと余裕だな」 


「この人が去年の優勝者? つよそう」


 セルが率直に過ぎる感想を漏らした。その声が聞こえるのは、魔剣を手にした時以来バロだけだ。

 セルの発言に苦笑するほどの余裕は今のバロにはなかった。


「引きずるまでは酔わねえよ。お前さんが参加するってんなら、尚更な」


「高く買ってくれてるみたいだね。私がいるから、期待には応えられないかもしれないけど」


 バロとて負ける気で挑む訳ではないが、やはり。


「当たりそうな相手はだいたい確認したが、ありゃ駄目だな。今年は歯応えもなにもないかと思わず酒入れちまうぐらいだ」


 タグは杯をあおった。笑みを浮かべて、しかし目つきは鋭くバロを射抜く。


「この一杯はヤケ酒じゃなく、祝い酒になった。宿敵との再開のな」


「……宿敵、か」


 呟きを返したバロに、タグは笑みを深めた。

 バロが外套の下に隠す腕の先に目を向けて、それがあることを確信して。


「おう。噂に聞いたぜ、業物の剣を手に入れたらしいじゃねえか。……今回は、存分にやりあえるな」


 去年の結果に不満を得たのは自分ばかりではない。そういうことなのだろうと、バロは思った。

 セルがつまらなそうに言った。


「はい。私、珠玉の大業物、魔剣のセル・セセルセでーす」


 無論、タグには聞こえていない。

 果実水と豆類を炒ったツマミが運ばれてくる。ぞっとするような笑みを浮かべて、タグは杯を掲げた。


「お互いの健闘を祈って、乾杯しようぜ」


 心中の思いを置いてひとまず、バロは左手で果実水の杯を持ち上げそれに応えた。



 ■



 さすごしゅ、とセルの声が聞こえた気がして、バロは小声で問いかけた。


「なんて?」


「タグさんの言った通りだなって。ご主人サマの相手になってないよ」


 王権闘技杯の六日目。バロが戦うのも六戦目。これに勝てば次は決勝だ。

 

 勝てば、というか。既に決着は見えていた。

 地面に背中から思い切り叩きつけられた対戦相手は、呻くばかりでまだ立ち上がってこない。

 砂地なので一発ではそこまでの衝撃にはならないが、バロが相手の男を地面に伏させたのはもう二桁になろうかという回数。

 

「なんか……なんだろうな。妙に弱く感じるな。前回は決勝までもそれなりには苦戦させられたんだが」


 首をひねるバロに、セルはひとつの回答を提示した。


「剣の才能がなかったとか?」


 ばっさり言われて、バロは狼狽えずにはいられない。

 ずっと剣士を目指して剣を振るってきて、一角のものにはなったと思っていたのに――。


「っ……死ね!」


 ややよろめきながら立ち上がった男は、物騒な言葉と共に火炎魔法を放った。煌々燃える十の火の玉である。

 バロは自らそれに近づいて行く。一歩、二歩と踏み込む動作のままになんなく火球を躱して、男のみぞおちに拳を叩き込む。

 男は膝をついて倒れ、今度こそ起き上がってこなかった。

 観客の喝采に混じって聞こえた審判の勝敗宣言に、バロは溜息した。



 バロが控室へと戻ると、壁にもたれて待ち構えていた風なタグに出くわした。


「……見てたのか」


「そりゃあ見るさ。バロも俺がやってる時見てるんだろ?」


 今年度は優勝まで七回。一人が一日に闘うのは一度ずつ。

 総参加人数が百人超えであるからして、複数の会場で同時並行して進めなければとても消化しきれない。

 そこで運営の計らい――観客に向けたものだが。


 有力視されてる参加者の闘いは出来るだけ時間が被らないように調整されており、バロとタグも当然その対象だ。

 彼の言うとおり、バロはこれまでのタグの六回戦分を全て観戦していた。タグもそうだったのだろう。

 

 ただ、言葉を交わすのは開催前日の晩以来だ。

 

「すっごい睨まれてる……やだ……」


 セルが情けない声をあげた。

 流石に外套は邪魔になるので、すでに隠してはいない、抜身のままの魔剣をタグはじろじろと眺める。

 

「見事なもんだ。結局今日まで、一度もそれ使ってねえし……明日のお楽しみだな」


 去年は、剣を交える前後に二言三言かわしただけだったが、話してみると存外、タグはさっぱりした良い男であった。

 だからこそバロは申し訳なく思う。明日、たとえ勝てたとしても。


「ご主人サマ、なにか甘いモノでも食べにいこーよ。私プリンが食べたい……」


 プリン? と問い返そうにも、タグが前にいては一人で喋り出す変人扱いされかねない。

 味や香りは分からなくても視覚的なおいしさは感じられると、いつだかにセルは言っていた。

 甘いものを食べるというのは、バロの心情的にも悪くない提案だ。

 

 バロは逡巡して、それから言った。


「タグ――明日は勝たせてもらう」



 ■

 


 私を壊せばいいのに。

 セルは事あるごとに、そう口にする。

 手から離れず喋る魔剣なぞの話は聞いたことがない。しかし、呪いの品へのもっとも有効で確実な手段を、バロは知っていた。

 すなわち、それを壊すこと。

 実際には、あっさり壊されては困る、とその呪いを用意した何者かがやすやす壊すことが出来ないようにしている場合がほとんどだ。 

 


 セルは脆い。

 試した訳ではない。折れそうで、欠けることさえないかもしれないし、もしかしたら壊れても再生するかもしれない。

 

 気がついたらあの場所にいて、それからずっとひとりきりで過ごしていた。その前の記憶は曖昧。

 セルはそう語った。

 騙られているとは、バロはそうは思わなかった。



 

 熱気を逃すために大闘技場は天井が取り払われている。

 仰ぐ空はあやしい模様。

 地上にまで届くひんやりした空気が、ひときわ大きな歓声に吹き飛ばされた。

 選手の入場である。

 バロは身に纏わりつくような声を浴びながら歩みを進めた。


「ふえー。あの人すっごい美人……」


 セルの視線がどこ向いてるかなど分からないが、バロは見当をつけた。

 段状の観客席の一角。中段あたりに大きく仕切られ目を引く場所から、悠々こちらを見下ろす人影。


「……ああ、あれか? あの方はこの国の姫様だな」


「道理で……あ、隣のすっごい男前な人って、もしかして王子サマ?」


「そうだ」


 緊張感に欠けた会話はそこでおひらきとなる。

 バロは所定の位置まで辿り着いた。 

 正面、かなりの距離をおいて同じように突っ立つタグを見据える。

 曇天より黒く昏い色合いの長剣を携えて、タグもまた見つめ返す。

 

「ご主人サマ……」


「……なんだ?」


 セルが言い澱み、言い躊躇う。そんな彼女を、バロは初めてみたように思った。

 

「……なんでもない。がんばって」


「……ああ」


 バロは頷いた。それから付け加えた。


「ありがとう」


「……なにが? 私がいなければ、他の剣が手に入らなかったとしても、それでもまだマシだったでしょう?」


 本当に惑っているような声だった。バロがなにか答えるより早く、魔法で拡声された審判の声が闘技場に響き渡った。

 水を打ったように急にやってきた静寂に、バロは心臓の早鐘を感じた。

 黒剣を両手で握り、正眼に構えたタグと、また視線が交差する。 



 審判が、開始を合図した。

 咆哮のような観衆の叫喚が、再度耳を突き刺した。



 ■


 バロは剣士であった。

 そしてタグもまた、剣を使う。その腕前もさることながら彼は魔法も用いた。


 

 魔法使いと対する場合の戦法は、主に三種類、ないし四種類に絞られる。

 一つは同等、それ以上の威力の魔法で相殺、押しつぶすこと。


 二つは、本質的には一つ目と変わらないが、ただ防ぐための魔法で威力を殺すこと。


 三つは躱すこと。魔法を使えないバロが今取れうる唯一の手段だ。

 バロには、躱して、接近して、殴りつける。そんな単純な選択肢しかない。


 四つ目として、魔法現象の核となる部分を見切り裁断する。そういう剣術も存在し、一年前バロはそれで魔法をいなしタグに迫ったが、結局は易く剣を折られることになった。



 タグから目を離さず、バロは足を運ぶ。見る者によってはただ無造作に。

 闘技場は相当に広く。砂地を踏みつけ徐々に狭まる両者の距離は、まだ遠い。


 ふと、冷たい風が吹いた。

 それに煽られたように、タグが剣を傾け切っ先で地面を撫ぜた。

 地を這い伝う魔力をみて、バロは退くでなく、足を踏み切った。

 身体を掠めるように地面から突き出た氷柱を横合いに、駆ける。

 当たるはずもない、ただ牽制用に鉄針を投げつけ、そのあいだにも距離を詰める。

 タグは剣をかえして鉄針を全て叩き打つ。下から上へと。

 それがどこへ降ってくるかといえば、狙い定めてバロの進路上だ。


 ――強い。

 タグを視界から外すことなく。空を切る音だけで頭上から降ってきたそれを躱し、バロは思う。

 剣技でさえ互角級であったのに、加えて魔法まで使ってくるのだ。

 勝機を見いだせるとすれば、搦め手。


 タグが一歩足を踏み出した。それで間合いになる。剣先を、音が立つほどに強く地面に突き刺す。

 タグの足元から、幾重にも折り重なった花びらのような結晶が生まれていく。

 先細りに鋭いその先端が届くよりはやく、バロは跳躍した。

 服を裂き腹にうすら傷をつけ、宙空のバロは仰ぎ見るタグと視線を交える。

 

「――つめたっ?!」


 極力身体に沿わせていたセルが、躱しきれなかった結晶に擦れて悲鳴のような声をあげる。

 バロは口を開いた。セルになにか言うでなく、口をすぼめて。

 口腔に含んでいた()()をタグの顔に向けて吹きかける。

 ほんの一瞬だけ、タグが怯む。瞬きの時間だけ稼いで、それで充分だった。


 落下の加速を乗せて、折り曲げていた膝を伸ばし。

 バロは剣を握るタグの手を蹴り抜いた。

 鉄板入りの衝撃に、タグがたまらず剣を取り落とすと同時に、結晶も霧散消滅する。

 両足の着地を待たずに不安定な体勢のまま後ろに倒れこみ、つま先でタグの顎を蹴り上げる。


 すぐに跳ね起きようとしたバロを、タグの苦み走った舌打ちがとどめた。

 地面に転がった己の黒剣を足先だけで掬いあげて、柄を逆手に掴みそのまま振り下ろされたそれが、バロを地面に縫いつけた。


「……ああ」


 冷たい。貫かれた片脚の腿のあたりから広がる冷たさを感じた。熱いようにも感じた。

 口の端から血をこぼすバロに、タグは遣る方無く苛立たしげな表情を向けた。


「……なんで剣を使わねえ」


「……ごめん、なさい」


 セルの声は、どちらに向けてか。銀白の半透明に紋様の刻まれた美しい剣が、なぜか褪せて見えた。

 

「……気にするな」


「あ?」


 バロは仰向けのまま右腕を振るった。魔剣セルの刀身を、タグめがけて。

 しなやかに、跳ねるように伸びるその脅威を見て、バロの身体から剣を引き抜いたタグが飛びのいて避ける。


 片脚をかばって立ち上がったバロは、腰鞘から短剣を引き抜いた。それは左手に握り、二刀の構え。

 とくに表情を変えずに。


「曲芸師に転向しようかと思ってな」


「……はん。そうかよ」


 気に入らない、そんな風にタグが言い捨てる。目を細めて、本当につまらなそうに。


「……降りだすな」


 タグがそう呟いた直後、バロは肩に当たった水滴に気づいた。

 ぽつり、ぽつりと、後を追うように雫が。

 たちまち音を立てるまでになって、視界が不鮮明なほどに。

 雨が降り出した。



 ■



 先ほどタグの剣に貫かれた脚に目をやっても、不思議と血が流れ出る様子はない。

 しかし感覚もない。まともに動かすのは無理そうであった。 

 片脚を潰された以上、これまでの身軽な戦い方はとれない。


 

 はやくも泥に変わり始めた地面に、引きずる足で跡を残しながらタグに近づく。

 間合いにおいて優勢なのは、無論タグのほうだ。

 タグが剣を地面に突き立てると、再び結晶が生まれる。

 急速に伸びあがるその先端を、バロは斬った。

 魔法核が破壊され、結晶は雨粒のなかに立ち消える。

 利き腕でなくても、業物でなくても、その程度の芸当はバロには易いことだ。


 だが、後が続かない。


 いつの間にか振り上げられた黒剣が、上段から落とされる。

 左手に握る剣で返し刀にそれをなんとか打ちそらし、右の魔剣でタグの喉を狙う。

 飛びすさるタグに、再び両者の距離がひらく。

 これでは勝ちの目は見えない。 

 

 タグが地面を蹴り上げた。宙に散った泥塊を、振り抜いた剣で打ち飛ばす。

 泥がバロに襲いかかった。

 幾つものいびつな形した泥塊を剣で払い、落とす。手応えはとても重かった。

 四つ、五、六。それを防いだあたりで、剣が嫌な音を立てた。

 剣には細かな亀裂が走っていた。バロは目を疑う。――いくら不器用な受け方をしているとはいっても。


「……低音脆性?」


 セルが何ごとか呟いた。それを気にしている余裕はなかった。続く泥塊を受けたところで短剣は砕け、唸りを立てて迫る黒剣が。

 

 水平に振るわれた剣が腹にえぐりこみ、のみならず衝撃でバロを吹っ飛ばした。




「――ご主人サマっ!」


 一度に音が戻って来たような、そんな感覚。

 背を打ち付けてわずか、失いかけた気を取り戻し、しかしバロは身体を起こせなかった。

 いっそう囃し立てるような観衆の声々と、すぐ耳元で絶え間ない雨音。

 セルの声は痛ましかった。


「……そろそろ、降参しないの? 死んじゃうよ?」


 零すように、答える。


「それも、いいかもな」


「……どうして?」


 バロは思い起こす。そう時間はない。けれども、バロは応えた。


「――貧民街で育った。生き抜くのに必死だった。そこから抜け出すために、賞金目当てに、友達が王権闘技杯に出場した」


 泥の上を歩む、べちゃりぐちゃりと、そんな足音が近づいてくる。バロは身体を転がすと、這うように肘をついて、無理やり起き上がった。


「予選さえ超えられずに死んだあいつは、でも。満足そうだった。たぶん、生い立ちもなにも関係なく、自分で選んだ道だったからだ」


 降りしきる雨に打たれて、今一度、タグと対面する。

 

「ご主人サマ……」


 セルが躊躇をみせて、それから小さな声で尋ねた。いつもの問いを。


「どうして、私を壊さなかったの?」


「殺すために戦ってるわけじゃ、ないからだ」


 バロの言葉にタグが怪訝そうに眉をひそめて、それでも手は止めない。雨に滲む漆黒の剣が振るわれる。

 セルが溜息を吐いたようだった。いつだかに聞いた澄んだ声で、セルは言った。


「私を、つかって。ご主人サマ」


 込められた感情は確かなもので。バロは、セルの言葉を信じた。 



 ■



「やっぱり転職するか。格闘家のほうが向いてるってはっきり分かったことだし」


「それはおかしくない? 私を使えばいいじゃん。なんで? なんで?」


 王都を出たバロは馬車に揺られていた。賞金で多少の贅沢は出来るので御者は雇って、バロは荷台の藁の上に寝そべっていた。

 

「セルは危なすぎてそうそう使えないし……。切れ味が良い、どころじゃない。危うくタグの腕切り落としかけたし」


 御者台に聞こえないようこそこそと話すバロは、気を遣うぐらいなら自分でやればよかったと内心後悔していた。 


「えー……それじゃ、また私は出番なし? 役立たず? 邪魔モノ?」


「いや、魔物相手なら気兼ねすることもないし、セルにはまた助けてもらいたいから、その時には頼むよ」

 

 不満気なセルを、バロはなんとかなだめすかした。


 


 あの決勝の日、タグと対峙したあの時。

 

 バロが振り抜いたセルは、タグの剣を両断した。まるで何もない空を斬ったかのように、なんの抵抗もなくするりと抜けて。

 黒剣は二つに分かたれた。

 そのまま、表情を驚愕に染めたタグの腕になかほどまで切り入れたところで、気付き、バロは蹴りをいれてタグを突き飛ばした。

 一歩迫って、タグの首元にセルの切っ先を向ける。

 

 それで、決着がついた。



 よくよく考えてみれば、というか。

 なまくらから研ぎたて以上まで、その切れを変化させる魔剣。しかし脆い。

 

 要は、触れた端から全て切断してしまう、どんな物でも阻めない。そもそも武器そのものの頑丈さなど設計思想からして必要なかった。

 そういうことだったのでは、とバロは考察する。

 


 戦いの後、セルは言った。

 わたしは武器じゃない、と。

 人であって武器でありたくない、そういう思いが垣間見えた。

 

 だから敢えてか、あるいは無意識か。

 彼女は武器として扱われないよう振舞ってきた。武器として役立たずだった。

 そして最後には、バロを守るために武器となった。


 とどの詰まり。

 バロとセルの関係は、相方、もしくは仲間。そんなところに落ち着きそうだった。

 バロの認識としては、それまでとあんまり変わらない、という感じである。


「んー。暇だな。お話しよ。霊泉の精霊ってどんな子なの?」


「どんな子、か……ひと言で言うと狐っ娘、かな?」


 とはいえ、手のひらから剣が離れないのは相変わらず。不便なのは間違いない。

 セルを壊すことなく呪いを解く術を求めてバロが今目指しているのは、以前にも一度足を運んだことのある東方の国だ。

 二ヶ月で行って来てでは王権闘技杯に間に合わないので後回しにしたが、その国で出会った精霊は聖魔法に熟達していた。

 彼女に尋ねれば解呪の望みがあるかもしれない、との考えだ。


「きつねっこ……子? きつね……? しかもイントネーションがむすめの方な気がする……」


「いんとね……なんて?」


「んん。これは斬らなければいけない相手の登場かもしれないね……」


「セル……?」


 なにやら不穏なことを言い出したセルを見る。

 セルの意思で切れ味の調整を行えるようになったので鞘に収めようとしたのだが、暗くて狭くてやだなどと言うので結局は抜身のままの刀身。

 銀白の表面がバロの暗赤色の髪を映し返してか、ほのかに赤く染まっていた。


「別に。べっつにー」

 

 突然ふてくされたかのセルに、バロは溜息を吐いた。気分屋は今日も絶好調なようであった。

 馬車の揺れに身を任せまぶたを閉じて、バロはひとしきり思いを馳せた。

 しばらく続く、セルとの二人旅に。


タイトル詐欺をお詫び致します。

メンヘラちゃん書こうとしたけれど全然むりでした。




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