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「俺に安眠をください」

 川辺を歩いていたまたもやモンスターの群れに遭遇した。

 今度は熊や犬ではなく黄色い羊……あの青熊に殺されていたモンスターだ。


「羊……か、あれも倒してコインにしておこう」


 生き物を殺すことに何の抵抗もなくなりつつある俺がいる。

 こっちは生活がかかっているんじゃ、情けなんてかけていられるか。


 ……ってあれ?

 バトルモードに移行しないぞ?

 また壊れたのか?

 しょうがないな……


「バトルモード起動!」


 ペンダント化している剣を握り、そう叫ぶ。

 これでいいんだよな?


【スリーブモードを終了しバトルモードへ移行。】

【戦闘を開始します。】


「おお!?」


 「オートパイロット」が起動していない状態でバトルモードを起動させてみると……

 モンスターの少し上の方にゲームのHPバーのようなものが!

 マ、マジでゲームじゃねぇか。

 「オートパイロット」が起動してると俺側には分からなかったけど戦闘中はこうなっていたのか……


「もしかしなくても体力ゲージだよねあれ……とりあえずパワースラッシュ!」


 でも数値とかまでは表示されていないみたいだ。

 まあ、なんとなく分かるだけでも大したものだろう。

 【パワースラッシュ】を発動させ、剣の切れ味を上げておく。

 よし「オートパイロット」がなくても戦えることを証明してやるぜ!




 と気合を入れたのは良かったのだがこの羊たち……


「メェー!」「メェメェ!!!」


 逃げ足が速い。

 しかももの凄く。

 よくあの青熊捕まえられたな……


「ああクソッ! 逃がした!」


【モンスターの逃走を確認。】

【戦闘を終了します。】

【お疲れ様でした。】


 結局一匹も狩れなかった。

 完全に【パワースラッシュ】の無駄だった。

 「オートパイロット」が起動しなかったから怪しいとは思っていたが……

 あいつらはどうやら逃げ専門のモンスターらしく、凄いスピードで逃げていった。

 どうも俺にとって脅威じゃないと「オートパイロット」は自動的に起動してくれないようだ。

 自分でオートパイロット起動! と言えば発動させることも出来るみたいだけど。




「あの羊のデータを表示してくれ」

【サンダーシープ】

【Fランク魔物。】

【雷を扱うことの出来る雷羊。】

【羊型モンスター最弱とも呼ばれる逃げ専門のモンスター。】

【大半は家畜化されており、人外魔境と名高い魔大陸でもない場合野生種を見つけるのは困難。】


 やっぱり逃げ専門だったか。

 って……


「魔大陸ってやっぱり人外魔境なのかよ! クソッ!」


 頭を抱えてしまう。

 この剣なかったら……俺、死んでねぇ?


「はぁ……ため息をついても仕方ない、ポジティブに行こう、うん」


 俺の長所は基本ポジティブなとこ!

 クヨクヨしてても先に進めないんだ、元気だして行こう。





「だいぶ暗くなってきたなぁ……」


 日が沈みだし辺りが暗くなってきた。

 逢魔が時ってやつだろう。


「結局人工物はこの剣以外に見かけなかったな……どっかに泊めてもらうのは無理そうだし」


 さてどうしたものか。

 完全に真っ暗闇になる前に寝床問題を解決しなければ。

 いままではまだ日が昇っていたからあまり重要視していなかったが、そろそろ動かないと。


「枕を高くしてグッスリ安眠したいけど……ええと……なんかないか?」


 スリーブモードからメインモードに変えて、取得済みのスキルを見てみる。

 なにか使えそうなものは……


【ルクス=サンクチュアリ】

【消費LP8000】

【光の力を使った特殊な攻撃。】

【地面に剣を突き刺し光力の結界を作り出す。】

【取得している光力戦闘術のランクで威力が変動する。】

【「閃光よ我らが敵を遠ざける聖域を、ルクス=サンクチュアリ」のボイスキーで発動可能。】


 あったけど消費重ッ!

 8000ってなんだ8000って!

 こちとら最大値は10000だぞ!


 こんだけ重いんだ有用なスキルだよな?


「光力の結界ってどれくらい効果があるんだ? 一夜は持つよな?」

【聖域の効力はほぼ無期限です。】

【本来このスキルは村などを開拓する際にモンスター避けとして使用されます。】


 そう言えばなんかのゲームで町の中だとモンスターに襲われないのはそういう魔物避けのアイテムを使っているからって説明されていたな。

 このスキルは本来そういうものなのだろう。


「なるほど消費が重いはずだ、じゃあやってみるか」


 LPにも問題ないし、やってみよう。


「えーと確か……閃光よ我らが敵を遠ざける聖域を、ルクス=サンクチュアリ!」


 剣に光が集まっていくのを確認した俺は剣を地面に突き刺した!

 すると!


「うわっ……!」


 視界全体を埋め尽くす光。

 ま、前が見えない……


 ……ようやく光が収まったか。

 ん?

 あんまり変わった感じはしないけど……


「今のLPは?」

【現在のLPは2000。】

【明日の朝にはフルチャージされます。】


 やっぱり夜になるとチャージに時間がかかるんだな。

 LPが減ってるってことはちゃんと発動したってことだよな?

 さて、どうしたものかな。

 この剣は……地面に突き刺したままでいいか。

 とりあえずスーツを脱ごう。

 ここに季節があるかどうかは分からないが凄く寒いわけではないところを見るに春……なんだろうか?


「上着はどうしようか……」

【アイテムを収納しますか?】

【当剣にはアイテムの収納機能があります。】

【収納機能はスキルではありません。】


 ……さっき気づいたことだが。

 「機能」とつくものはスキルじゃないようだな。

 こいつ、ちょっとずつだが俺のことを学習している?

 俺がスキルのことを課金システムめ! って思って顔を歪めてからわざわざ機能だと説明するようになっているな。

 知性は確実にありそうだ。

 ただ感情は……どうなんだろう?

 そこんところはまだ分からないなかな。

 それっぽいものは時々感じるけど。


「じゃあこの上着を収納してくれ」


 刀身に上着を近づける、すると――


【収納しました。】


 おお、吸い込まれた……

 これ戻ってくるんだよな?

 取り出すのにはルクス硬貨が必要ですとか言うなよ?


【収納したアイテムを確認するときは「アイテムボックスオープン」と音声入力してください。】

【アイテムボックス内のアイテムは自由に取り出すことが出来ます。】 


 良かった、自由に取り出せるのか。

 ちょっと確認して見るかな。


「アイテムボックスオープン」

【アイテムボックスを表示します。】


 お、俺の上着が収納されている。

 そしてやっぱり予想通り……ゲーム画面のアイテム欄みたいなデザインだな。

 この剣のシステムを作った奴はゲーマーだったんだろうか?


【アイテムボックスに容量の限界はありません。】

【ですがアイテムボックス内には時間が流れているので飲食物などを収納すると腐る可能性があります。】

【ご注意下さい。】


 流石に時間の流れない容量無限の倉庫……とはいかないようだ。

 容量無限ってだけでも相当便利だし上手く活用していこう。


 っていうか容量無限って凄いな……これだけで上手く使ったら一財産稼げるんじゃないのか?




 寝床はどうしようか。

 寝袋かテント……そんなところだろうか。

 それらがまったく無いのは……風邪を引きそうだ。


 この状況で風邪は引きたくない。

 最悪死にかねない。

 

「ルクス硬貨で出すしかないよなぁ……」


 手のひらのルクス硬貨を見つめる。

 だんだんと暗くなってきたし、早く決めないとな。


「テント……いや寝袋か?」


 持ち運びを考えるなら寝袋が良さそうだが剣にあるアイテムボックスを使えば、この問題はあってないようなものだし……

 だがルクス硬貨の消費は寝袋の方が軽そうだ。


「試してみないことには分からないか」


 実験の時間だ。

 まずは小ルクス銅貨を二枚を右手で握る。

 とりあえず寝袋から……


「寝袋下さい、寝袋下さい、俺に安眠をください」


 安眠を求め、強く握る。

 強く握るが……


「駄目か、まあ一枚で消え物のおにぎりが出るんだからもう少し増やさないと駄目みたいだな」


 まるで反応しない。

 仕方ない一気に十枚だ。


「寝袋下さい……寝袋下さい……来た!」


 手の中のルクス硬貨か輝き出す。

 だが、まだ駄目だ。


「やっぱなし! 取り消し!」


 ……よし、光が収まった。

 ルクス硬貨は取り消しが聞くようだ。

 なかなか融通がきく。


「ここから数を減らしてみよう……九枚で寝袋は出るか?」


 右手のルクス硬貨を一個取り除き、九枚強く握る。


「寝袋……寝袋……駄目か、反応しない」


 九枚では駄目のようだ。

 食べたら消えるおにぎりなどと違って寝袋は残るからな……

 道具はルクス銅貨一つ分の価値ってことか?




「……うん、十枚になると反応する。 間違いない道具は十枚からだ」


 いろいろ他の道具を望んでみて試したが、大きさで多少変動するが道具は小ルクス銅貨が十個以上必要なようだ。

 鉛筆は十枚。

 ハサミも十枚。

 テントは……大きめの物をイメージしたところ小ルクス銅貨二枚とルクス銅貨一枚を要求された。


「ノートパソコンは……反応しないな、もっと必要か」


 現在小ルクス銅貨換算で二十一枚分ある。

 それでも足りないとなると……何枚必要なのやら。

 複雑なつくりの物や大きな物になると要求するルクス硬貨の数も増えるみたいだ。


「とりあえず寝袋にしておこう……」


 お金は大事だ。

 しかも危険手当もつかないブラック過ぎる環境で勝ち取ったお金である。

 テントにすると余計にお金がいるし寝袋にしておこう。


「寝袋……来いや!」


 ぐっと握り、手の中の輝きを開放する。

 すると……


「おお……ちゃんと寝袋になった」


 空に浮かび上がったルクス硬貨が封筒みたいな寝袋になって落ちてきた。

 グッバイ、元群れのボスだったルクス銅貨!


「柔らかい……こいつはよく寝れそうだ」


 パジャマとかの寝間着は……もう少し財政に余裕が出来てからでいいか。

 あたりはすっかり真っ暗闇。

 地面に突き刺した剣が優しく光ってくれているため手元は暗くないが……


「ご飯食べたら寝るか」


 夜だし、やることないのでさっさと寝よう。

 電波が通じないからスマホで暇つぶしも出来ないし……


 そう思い寝袋に寝転がると……


「すげぇ……」


 満天の星空だった。

 様々なな星々が輝いている。

 その中でも一番の輝きは……


「月だ……今日は満月なのか……」


 この世界の月も一つだけのようだ。

 異世界だからと言って月が二つあったりするわけではないようだった。

 ……星の輝きじゃ月の輝きに勝てないってやつか。


 現在のルクス硬貨は小ルクス銅貨十一枚。

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