『私の日』
ちょっと! スミレ! スミレったら!
『……完全に寝てるね……』
私とローゼはちゃんと起きてるのにー!
もう、寝ないでよスミレ!
表にいるスミレが寝ちゃったら、何も見えないじゃん!
『……こっそり、交代する……?』
それしかないかー
だってスミレ起きないんだもん。
なんでだろ。
『……だって、今日スミレずっと表に出てるもん……疲れてるんだよ……』
そっか、私たちって、定期的に交代しながら……休みながら暮らしてたもんね。
でも今日はスミレの日! って決めたから交代しなかったけど……スミレ、疲れちゃったんだ。
……ねぇローゼ、交代する?
『……レモンが表に出てもいいよ? 私は、その、あの……』
もう、ローゼは奥手なんだから……
つべこべ言わずに行ってくる!
レンがどんなスキルを覚えるのか気になっているんでしょ!
『や、やめ……きゃっ!』
ふぅ……これでローゼが表に出たね。
スミレは……まだ寝てる。
交代しても寝たままだなんて、変なの。
よっぽど疲れていたのかな……
「さて、他は……」
「……ねぇレン……レンはどういうスキルがまず必要なの……?」
もう、ローゼがレンにようやく話しかけたよ……
時間かけ過ぎ!
交代したしばらくは喋り出せずにいたけど……なんとか、口を開いてくれたんだよね。
「桃色の瞳ってことはローゼ? あれ?」
「……スミレ、寝てたから……交代したの……」
「ああ、そうだったのか……いいのかな?」
レンもこっちの状況が分かったみたい。
「……だって、表にいるスミレが寝ちゃうと、こっちは何も見えないから……」
「ああ、そうか目も二つ……一人分しかないから、そうなるのか」
そうなんだよねー
これが意外と不便なのだ。
でも……じゃあ私たち一人、一人に体が欲しいか、と聞かれるとまた違ったりする。
私たちは……三人で一人だから。
「で……ローゼ、どういう意味だ、さっきのは」
「……あのね……スキルツリーにあるスキルっていっぱいあるでしょ……?」
うん。
すっごい量。
でもあんまり役に立たなそうなスキルもあるんだよね。
例えば……
【光力画家】
【光力を込めて絵を描くことで、特殊な力を持つ光力画を描けるようになる。】
【描いた絵の題材や出来によって光力画の効果は変動する。】
【このスキルは未取得です。】
これ絶対、戦闘じゃあ役に立たないよね……
戦闘中に絵なんて描いてる暇なんてないだろうし。
「……こういう、絶対に使わないであろうスキルは飛ばして、すぐに覚えるべきスキルだけ覚えたらいいんじゃないかなって……思ったんだけど……邪魔かな……?」
もう、ローゼったら……また奥手になってる……
せっかく表にいるんだから、どんどん押していかなきゃ!
いつまでもそんなんじゃ……私がレンを頂いちゃうよ?
『……それは、嫌っ! レンは……私の……私の旦那様なんだから……!』
よしよし、いい傾向じゃん!
ローゼは内側に引きこもりがちな性格だから……あんまり表に出て喋ろうとしないんだよね。
なんだかレンをだしにしてるみたいだけど……これもローゼのためだし。
『そうだな……ローゼのためでもあるな』
そうそう、ローゼのため……あれ? ス、スミレさん?
起きてたの……?
『今、起きたところだ、まったく……! 今日は私の日ではなかったのか?』
あーいや、その、だって、スミレ寝てたじゃん!
表にいるスミレが寝ちゃうと、内側にいるこっちは真っ暗で音と匂いしか分からないんだよ!?
『む、すまなかった……』
でも、どうしたの? スミレ。
完全に寝てたじゃん。
『急に眠気が襲ってきてな……ああ、いかん、なんだかまた眠くなってきた』
『……やっぱりスミレは疲れているんだよ……だって今日、ずっと表に出てたでしょ……?』
『やはりそれが原因か……私たちは疲れるとすぐに交代していたからな……個々のスタミナが少ないのか』
そうなのかも……
私たちって意外と貧弱だなぁ……
って早! もうスミレ寝ちゃったよ。
「そっか、そうだな……じゃあまず必要そうなのは……この【光力戦闘術3】か」
レンがスキルツリーに表示されているスキルを指差してる。
これは……
【光力戦闘術3】
【光力、と呼ばれるエネルギーを使って戦うスキル。】
【モンスターの多くは光を弱点とするため、モンスター退治の際に役立つ。】
【取得条件を満たしていないため取得出来ません。】
【取得条件――最大LPが30000になった】
えっと、今、レンが覚えているのが【光力戦闘術2】……だよね?
それの上位版……ってことなのかな?
これは覚えないとね。
「……うん、そういうの……あれ?」
よく見ると取得条件を満たしてないとか書いてあるんですけど!?
どういうことなの?
「アオ、これはどういうことだ?」
【あーそれはですね……所有者が光力使いとしてランクアップしてもらわないと、覚えられないようになっているんです】
光力使いとしてのランクアップ?
なにそれ?




