【パワースラッシュすら必要ではなさそうですね】
「つ、強すぎる……グェーッ!」
今回は【ルクス=ウェーブ】も使わず、普通に数回斬っただけだが……
「し、試合終了、試合終了です! 強い、強い、強すぎるー! まさかこんなに強い剣士がこの魔大陸に隠れていたとはー!」
やばい、手加減の仕方が分からない。
無駄に時間だけかけるのは違うだろうし……
【パワースラッシュすら必要ではなさそうですね】
(だな)
どうしたものかねぇ……
「……あのさぁ……レン、もうちょっと手加減出来ない?」
「レモン……いやしょうがないだろ、だって数回斬っただけで相手のHPがゼロになってるんだぞ?」
これ以上どう手加減しろというのだ。
【というか、冒険者ギルドなんて再建させていいんですか?】
【モンスターを狩られて、こっちが倒す分がいなくなっちゃいますよ?】
「そこは問題ない、むしろ俺が楽出来る」
「ん? どゆこと?」
そう冒険者ギルドは上手く活用出来れば……俺が楽出来る。
「なぁレモン、お前たちがあの蜘蛛のモンスターを倒したとき、どうなった?」
「えっと確か……ルクス硬貨にはならなかったんだよね?」
「そうだ、モンスターをルクス硬貨に変換するには光力が必要だ」
ケルたちがダークインフェルノでアシッドスパイダーを倒した時は……
その遺体は残ってままだった。
遺体に光力で攻撃したところ、ルクス硬貨に変わった。
「だから、他の冒険者たちがモンスターを倒しても……ルクス硬貨に変わらない、変えるには光力使いが必要だ……でも、光力使いの数って少ないだろ?」
あくまで予想だが。
だが大外れってわけではないだろう。
「……まぁ少ない、かな? うん、私たちも一人しか、光力使いを知らないよ」
「ほらな……だから冒険者はモンスターをルクス硬貨に変えられない、ならば冒険者はモンスターの遺体を何に使えばいい?」
「えーと……千年前にあった本家の冒険者ギルドだと……モンスターの遺体から武器や防具を作ってたみたいだけど」
確かに、モンスターによっては強力な武器や防具を作れるだろう、だが。
「でも全てのモンスターを武器や防具に変えられるわけじゃないはずだ、いくつかは余りが出るはず」
「あ! そうか……モンスターを倒した証としてモンスターの遺体を回収するから……!」
「そいつをデミルクス硬貨の方で買い取って、俺がルクス硬貨に変換すればいい」
このシステムが完成すれば……簡単にルクス金貨百枚集まるはずだ。
「一人でルクス金貨百枚だなんて何年かかるか分からない、だがこのシステムを使えば……すぐに日本に帰れる」
「……! そう、だね……」
そう、すぐに日本に帰れてしまうのだ……
「まぁ、まずは冒険者ギルドが再建してからの話だけどな……」
「そ、そうだよね! まだ、いるよね……」
俺は。
どういう形であれ一旦は日本に帰れるべきなのだろう。
だが、そのあとは……
「ふぇ? 顔に何かついてる?」
「いや、なんでもないよ」
ケルと一緒になっても……
それくらいは、いいだろう?
「我が氷爪の前に凍てつくが……ガフゥ!?」
ワーウルフのような犬型魔族が氷を纏い巨大化した爪に引き裂こうと近づいてきたが……
「…………!」
「ば、バカな! オレの氷爪がッ!?」
氷爪を剣で叩き割り、剣の柄で殴り飛ばす。
剣を地面に突き刺し……それで体を支えて……ドロップキック!
「キャゥン……!」
これで終わりか。
「今大会の優勝者は……スノーロータスだ! やはり強い! 流石伝説!」
優勝は出来た。
あっさり過ぎるほどに。
いいのだろうか、勝ってしまって。
俺が瞬殺して来た彼らの強さは……本物の強さだ。
俺のようにインチキで得た力ではない。
地道に努力して得た力のはずだ。
それを軽々凌駕して、本当にいいのか?
俺は……




