「……男の子と女の子が同じベッドで寝てるんだよ……?」
「いただきまーす!」
だいぶ、設定が煮詰まってきた。
とりあえずこれで大丈夫だろう……
それに俺は基本的に喋らないし。
ケルたちが変なことを漏らさなければバレる心配はないだろう。
「おお! 美味しそう! いただきまーす!」
レモンも俺に続けて食べ始める。
今日の夕飯は……
「ご要望通り、海鮮丼ですニャ!」
様々な海産物が豪快かつ豪華に共演する……海鮮丼だ!
ソマリの妹さんと他の従業員が持ってきてくれたこの海鮮丼、さてお味は……
「……! 美味しい! なんの魚か分からないけど、美味い!」
トロっぽいのもあれば、サーモンっぽいものもある。
イクラらしき赤い卵……ホタテらしき、貝類!
「どれも美味い! 美味いぞ!」
そいつらを取りまとめるのが……
この醤油だ。
「いや……ただの醤油じゃない?」
「ふふ……うちの海鮮丼はただの醤油だけじゃないニャ、分かるかニャ?」
ただの醤油だけじゃないってことは……他になにか混ざっているのか?
まさか……!
「魚醤か? これは……」
この豆から出来た醤油とは違う独特の風味、香り……間違いない。
これは魚やイカからできた醤油、魚醤だ!
「ほぅ……お客様、なかなか舌が繊細のようですニャ……その通り! うちの海鮮丼には魚醤を入れてありますニャ!」
通りで美味いわけだ……
ルクス硬貨を使えば美味しいご飯を食べられるけど、それじゃあ新しい食事が、新しい食の出会いがないからな……
変化をつけないと。
「この米も美味しい……醤油、魚醤、米……これも全部日本人が持ち込んだのか?」
そう考えると魔大陸の食文化はだいぶ日本に汚染されているな……
元々の文化は破壊されていそうだ。
「ん……?」
なんだか体が重い……
確か……夕飯を食べ終わったあとは、備え付けのシャワーを交代で浴びて……明日に備えてすぐに寝たはず……
シャワーを浴びるのにも一騒動あったんだよな、うん、思い出してきた。
「誰だ……?」
ゆっくりまぶたを開ける。
「け、ケル!?」
そこには……ケルの顔が間近にあった。
か、顔が近い!
しかも……
「……おはよう、レン……」
起きてる。
寝ぼけて近づいたわけじゃないのか……?
「ろ、ローゼだよな? なんで……?」
「……男の子と女の子が同じベッドで寝てるんだよ……?」
そういってさらに近づいてくる。
お、おお!?
ローゼが手と手を絡ませてくる……
お、俺はどうすればいいんだ!?
振りほどくべきなのか? それとも……
「……私がね、こんなことするのはレンだけだよ……?」
「ローゼ……?」
「……今はね、スミレも、レモンも、寝てるんだ……こういう安心して寝れるって分かると私たちまとめて寝ちゃうんだ……」
ローゼの顔がどんどん近づく。
あの儚げな桃色の瞳がまっすぐ俺を見つめている……
「……でも、私だけは起きてるの……レンと一緒にいたいから……レンの……女になりたいから……」
「ローゼ、君は……」
「……好き、大好き、ねぇレン……レンは私のこと好き?」
嘘や誤魔化しを拒絶する、真摯な瞳。
それに見つめられて、俺は……
「もちろん、好きさ……ケルたちのことが……」
「……やっぱり……そうなんだ……でもいいよ……私のことを見てくれるなら……それでいいよ」
そう言って、ローゼは少し離れた。
離れて、くれた……?
「……言い続ければ、願いは叶うって、聞いたから……いつまで言うね、レン、大好き」
そんなことはなく、離れたかと思ったらフェイントのように一気に近づいてきて……!
「あ……!」
「……えへへ、お返し……」
そう言っておでこにキスをされた。
おでこが……なんだか暖かいのは、気のせいでは……ないはずだ。
「……こっから先は……レンがしてくれたらね……?」
「あ、ああ……」
そう言って離れて行くローゼ。
なんだか、お預けをされたような気分だが……
俺の意思一つで簡単に……この先へ行けるんだよな……
って、イカンイカン。
完全にローゼの策にはまっている。
ローゼの目的は、おそらく……
「大体な攻め方だな……」
「……さっきも言ったけど……こんなことするのはレンだけだよ……?」
ぐ、なんかエロい。
ローゼが纏う雰囲気が妖艶だ……
「……おやすみ……レン……スゥスゥ……」
「ああ、おやすみ……ローゼ」
襲っていいよ、と言わんばかりに、わざとらしい寝息を立てるローゼ。
ここで襲えば……イヤ! 駄目だろ。
ローゼはいいかもしれない、けど寝ているスミレとレモンは?
それは……二人に悪すぎる。
ケルは三人だけど、一人なんだから。
それにもし、そういうこと、をするのならば……
「俺が、三人が起きている時に、だな……」
俺の方から童貞を捨てさせてください、と言うべきだろう。
もちろん、告白が先だろうが……
俺は……やっぱり、ケルが好きだ。
あの笑顔が、毛色の違う三人が、好きなんだ。
女の子の笑顔が怖くないのは……何年ぶりだろう?
この心は……嘘や偽りなんかじゃない。
でも、いつ告白しよう?
しかるべき時があるはずだ。
とりあえずはその時まで……告白は保留だ。




