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雪原の蓮華

 宿屋 ネコの手に入ると……


「いらっしゃいませニャ! お兄ちゃんから話は聞いてるニャ!」


 可愛らしい猫耳少女が出迎えてくれた。

 どうやら兄と違い、もろ猫……ではないようだ。

 とはいえ毛の色は白と黒なので、そこは兄妹なのだな、と思うのだが。


「ささ、どうぞこちらへ……」




 そう言われ案内された部屋は……


「おお! 広い部屋だ! ベッドもデカイ!」


 広い部屋。

 バカみたいに大きなベッド。

 高そうな調度品。


 多分この部屋……


「スイートルームか……この部屋は俺か? それとも……」

「え? お二人の部屋ですよ?」


 ……はい?


「ちょ、ちょっと待て! き、聞いてないぞ! 大体レンとはまだ……」

「違うんですかニャ? お兄ちゃんの話だとようやくアコお嬢様が婿を見つけたって……ニャニャ? 違うんですかニャ?」

「ちが、その、いや、でも、あの……おのれソマリめ……!」


 凄いな、ケルの顔がどんどん赤くなって来ている。

 ソマリに怒りをぶつけることで誤魔化したようだが……

 未だに顔が赤いのは怒りからくるものではないだろう。


 そういう俺も、なんだか、その、恥ずかしい……


「……まだそういう関係じゃないみたいですニャ、でも今日はこの部屋しか用意出来ないニャ!」

「な、なぜだ! もう一部屋くらい用意出来るだろう!?」


 そ、そうだ!

 いくらなんでも気まずい……


「無理ですニャ、今日はチャンピオンが来るって話を聞きつけたファンで満室ですニャ、この部屋を用意するのも結構大変だったニャ!」


 そうなのか……おいおいじゃあどうする。


「しょうがない……俺がこのソファーで寝るからケルたちはそっちのベッドで寝るんだ」

「そ、そういうわけにはいかない! レンは明日、闘技場で戦うんだ、レンこそベッドで……」


 う、ど、どうする……まだ短い付き合いだが、こうなったスミレが折れないのは分かるぞ……

 寝袋……いや、ソファーと同じことか……!


「一緒のベッドで寝ればいいのにニャー」


 呆れたように呟く猫耳少女。


「そういうわけには……! それだ!」

「レ、レン!? まだそういうのは早いというか、心の準備が……」

「ああ違う、そうじゃない、このベッドバカみたいに大きいだろ? だったら……両端に寝ればいい」


 そう、両端だ。

 両端で寝ればお互い少々気まずいが……多分大丈夫だろう。


「これなら多分、大丈夫だろう、二人ともベッドで寝れるし」

「む、むぅ……そうするしかないか……?」


 ともかく、今日の寝床が決まった。




「で……明日の予定は?」


 二つのソファーで向い合って座る俺とケルたち。

 さて明日の予定を固めておかないとな。


「まずレンには……鎧を纏った状態で私たちと一緒に行動してもらう、レンが……聖光剣士がサーベラス家に関わりのある存在であることも、知らしめないといけないからな……」


 ま、それはそうだろうな。

 あの聖光剣士はいったいどこに属する存在か? 結構重要なことだぞ。

 この世界の軍部にスカウトされるかもしれないしな……そういう時はサーベラス家の権力で守って貰おう。

 この世界の戦争なんぞに巻き込まれたくない。

 

「そこは安心してくれ、レン、私が、私たちが……レンを守る」

「頼んだ! そうだ、鎧は外さないほうがいいか?」


 俺が純人だと知った時のレトリーの町の人々の反応を見るに、隠しておいたほうが良さそうなのだが。

 ……別に傷ついてないし!

 でもケルたちがフォローしてくれなかったらやばかったかもしれない。


「それは……すまないがそうしてくれ、多くの魔族は……純人を嫌っている、もしニホンジンだと分かっても……風当たりは強いだろう」

「だよな、分かった。 アオ、明日は鎧を出しっぱなしでよろしく」

【了解です!】


 あとは……


「そうだ、喋らないほうがいいか?」

「……そうだな、レンの喋り方には違和感があるし、そこから純人、もしくはニホンジンとバレるかもしれない」


 そうなると、何故隠したんだ! ってなって面倒なことになるしな……

 沈黙は金なりってやつだ。


「もちろん、名前も隠す必要があるだろう……ニホンジンの苗字をもつ魔族は多いが……隠せるものは隠したほうがいいだろうしな」

「じゃあ名前も隠さないとな……」


 代わりの名前が必要だ。

 どんな名前にするべきだろか。


「蓮を少し変えて……ロータスとか?」

「いや、闘技場に出るんだ、もう少し捻った名前じゃないと……」


 リングネームみたいなものだろうか。


「じゃあえーと……」


 ロータスだけでは駄目、となると……


「そうだ! プンダリーカとかどうだ! サンスクリット語で「清浄な白い蓮華」って意味!」

「さんすくりっと、がどこか知らないがあんまり聞き馴染みのないのはどうなんだ?」


 それはな……

 そもそもプンダリーカって言葉自体、中二病をこじらせてたときに、自分の名前と関わりがあってカッコいい単語を調べたときに出てきて知った単語だし……

 調べてなかったら、絶対に知らなかったと思う。


「スノーホワイトも白いし……そうだ、スノーロータスなんてどうだ? どっちも白いし」


 雪原の蓮華……そう考えるとかなりカッコいいのではないだろうか。

 ってまた中二病が……この世界に来てから再発率がかなり高くなっているぞ。

 あ、でも実力がないから痛いのであって、実力がある今なら……


「スノーロータスか……いいんじゃないか? よろしくなスノーロータス?」

「おう! 任せなアコお嬢様?」

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