表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/141

「絶対に惚れさせてやるからな!」

 部屋を出てケルの待つ部屋へ向かう。

 今度は俺の番だ。


【そう言えば……なぜあの先代たちを信じなかったんですか?】

【普通、魔に連なるものが悪だと思いませんか?】


 ああ、それか。


「まあ確かに、光が善で、闇や魔が悪ってことは多いと思う……けど、俺には……ケルが悪いやつとは思えなかったんだ」


 俺を何度も助けてくれたケル。

 それを、この世から消し去る、そう言ったんだ奴らは。


「なんだかあいつら……ネットでよく見る実態を知らないのにイメージだけで決めつけるような奴らと一緒に思えたんだ……それに……光は物を破壊するんだ」


 そう光は物を破壊する。

 昔、博物館にいた学芸員に聞いたことがある。


 なぜ博物館は薄暗いのか? と。


「確か……一般的な博物館に置いてある物の大半は紙、布、木……まぁ熱や光に弱い素材で出来ているから、だったかな? あと絵画の絵具とか着物とかの染料は光を当てると色があせたり、薄くなったりして色が飛ぶ、とも聞いたな」


 博物館の使命は次世代に、今ある展示品を残すこと。

 展示品を破壊するかもしれない光は抑えなきゃいけない。


「本当は真っ暗が一番いい、そうだけどね」

【ジレンマ、というやつですね……光を当てないと展示品が見れない、けど光を当てると展示品を破壊することになる……】


 そういうことだ。

 だから、光イコール善というのには少し違和感があった。

 だって……光は物を破壊するんだぞ?


「それに……ケルを消すだなんて言われたら、怒るに決まってるだろ?」

【……だ、そうですよ? ケルさん、愛されてますねー】


 え。


「そうか……」


 ケルがいた。

 ……あれ、聞かれてた?


「聞いてた?」

「最初から……」


 おぅ……

 おのれアオ!

 お前のせいでなんとも言えない空気になっちゃったぞ!


 ……さて覚悟決めないとな。


「あのさ、ケル……すまなかった! ごめんなさい!」


 頭を下げる。

 こんなので簡単に許してくれると思えないけど……


「……私たちたちの好意は、この思いは勘違いだとレンは言ったよな」


 ……やっぱり簡単には許してくれないか。

 自分の恋心を勘違いだと否定したんだもんな。

 俺、最低だ……


「……でも、確かにそうだったかも……」


 ……あれ?

 ローゼの声だ。

 儚げな桃色…… 


「うん、自分たちでもびっくりするくらい急に恋に落ちたからね……冷静に考えたらおかしいくらいに」


 今度は……レモンか。

 なにか、伝えたいことがある……?


「だが……私たちのこの思いが偽物だと思えない、思いたくないんだ……ほら」


 瞬きをしてスミレに戻ったケルに手を捕まれ……胸に手が……!

 俺の手が! ケルの暴力的な胸に!

 や、柔らかい! 柔らか過ぎる!


 り、りり……理性が、が、ががが……!


 ……? なんだ、これ……

 このドクドクと脈打つのは……?


「ほら、レンがこんなに近くにいるだけで……心臓が、こんなになってしまうんだ、これが、まやかしや勘違いだとは私は、私たちは思いたくない」


 一人、いや、三人に強く見つめられた。

 スミレ、ローゼ、レモン。

 三人が、確かにそこにいた。


「……だから……本物にする……」

「急に好きになったことが信用できないなら!」

「私たちが時間をかけてレンに好きなってもらう! 始まりがまやかしだったとしても……本物にすれば問題はない!」


 強く、宣言された。

 要するにそれって……


「俺が、ケルに惚れるまで……諦めないってことか?」

「そうだ! 時間が足りないなら……時間をかけるだけだ!」

「……私たちが、ここまで、誰かを好きなってのは初めてだから……」

「諦めたくないんだよね……私たちってさ、微妙に好みが違うからさ……誰かに恋するだなんて、これが最初で最後かもしれないから!」


 恋する女の子は無敵だと、聞いたことがある。

 まったくもってその通りだ。


 勝てる気がしない。


「分かったよ……じゃあ……一ヶ月だ、一ヶ月経っても、ケルが俺のことを好きだったら……」

「……好きだったら……?」


 きょとんとするケルたちのおでこに、キスをした。

 俺のほうが背が高いから俺が少しかがむ形になったが。


「……この先をするよ」

「あ、ああ!」


 カッコつけて後ろを向いたが。

 ……は、恥ずかしい!


 顔から火が出そうだ!

 だったら最初からやるなって話だけどさ!


 でもさ! 女の子がここまでしてくれたんだぞ!?

 じゃあ何らかの形でその気持ちに答えないといけないじゃん!


「待っていろ! 絶対に惚れさせてやるからな!」

「お、おう! 待ってるぞ!」


 ……なんだか妙なことになったな。

 実際のところ、俺だって……ケルのことが好きだ。


 だったあんなにかわいくて、おっぱい大きい女の子、嫌いになれるわけないじゃん!

 でもだからって見た目にで人を好きになるのって、なんかいけないことのような気がするし……


 ああッ! もう!

 自分の心が分からねぇ!




【あ、あれ? なんか妙なことに……私の計画はじゃあ……こんなはずじゃなかったはずなのに……】

【今は、時間が必要ですかね……?】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ