【ウィルオウィスプ】
「火事!?」
大急ぎで外に出る俺たち。
モンスターの次は火事かよ!
「な!?」
店の外に出ると……
向かいの店が燃えていた。
大きな火だ……
「水よ……! ウォーターショット!」
アウカックは腕から水を射出する!
が、水の量がまるで足りない!
文字通り焼け石に水だ!
「くッ、足りぬか……」
そう言って呟き出すアウカック。
もっと量の多い水のスキルを使用するつもりなのだろうか。
「ん? なんかおかしいぞ、この火……」
ケルが出したダークインフェルノと違いちゃんと赤い炎なのだが……
動きが妙だ。
先ほど放たれた水から逃げるように動いたような……
「まさか」
【そのまさかですよ! 所有者!】
【読み上げますね!】
やっぱりモンスターかよッ!
【ウィルオウィスプ】
【Dランク魔物】
【炎の邪精】
【炎の塊がモンスター化したもの】
【家屋などに襲いかかり家屋を焼きつくす形で自身を巨大化させようとする】
【巨大化した状態で攻撃しても分裂されてしまう、厄介なモンスター】
【……以上です! Dランクですが、充分に気をつけて下さい!】
言われなくても油断はしないッ!
「光力装着!」
【スリーブモードを終了し、バトルモードに移行します!】
【アプリケーション「オートパイロット」を起動!】
【戦闘用アーマー「スノーホワイト」を展開しました!】
【戦闘を開始します! ……ちなみに今のLPは10010です! 行きますよッ! 所有者!】
剣を構えウィルオウィスプを見据える。
「まさかモンスターだったとはな……レン、どうする?」
「まずはあの家からウィルオウィスプを引き剥がさないとな……どうしたものか」
「とりあえず私たちは野次馬を引き離す! こいつはただの火事じゃない……危険だ! 爺! 手伝ってくれ!」
「分かりました!」
ケルがアウカックを連れて野次馬を引き離すため離れた。
さてどうするか。
【提案があります!】
「なんだ? 言うだけ言ってみてくれ」
【それはですね……ルクス=サンクチュアリを使うんですよ! あれはモンスターがもの凄く居づらい空間を作るスキルですから!】
【たまらず家から……町から出て行くはずです】
なるほど……【ルクス=サンクチュアリ】か。
【今のLP10000がとちょっとですから……問題なく発動出来るはずです。】
「よし、その案に乗った! 行くぞ……」
アオに【ルクス=サンクチュアリ】の発動に必要な言葉を見せてもらいながら……剣を地面に突き刺す!
「閃光よ! 我らが敵を遠ざける聖域を……ルクス=サンクチュアリ!」
光の波動が町全体に広がっていく。
すると……
「ギェ? ……ギェエエエ!!!」
向かいの店に張り付いていたウィルオウィスプが転がり落ちてきた!
……なるほど、本当に炎の塊のモンスターなんだな。
炎なのに顔らしきものが見える。
「な、なんだあれは!?」
「化け物だ、逃げろぉ!」
野次馬たちもウィルオウィスプを見てただの火事じゃないと思ったのかみな逃げていく!
よし、これで被害は減らせるか!?
「ギェエエエ……ギギュウ!」
「あ、こら逃げるな!」
ウィルオウィスプは跳ね回りながら石畳の道を進んでいく!
とはいえそんなに早くない!
充分追いつける!
「逃がすか、よっと! ……あ」
聖光剣で斬りつける……が。
「ギヒャヒャ!」「ギヒャヒャ!」「ギヒャヒャ!」「ギヒャヒャ!」
「ギヒャヒャ!」「ギヒャヒャ!」「ギヒャヒャ!」「ギヒャヒャ!」
「多いな畜生!」
分裂してしまった!
そーいや分裂するって言ってた……
「ええい、だったら……まとめてたたっ斬るのみ! 閃光よ……我らが敵をなぎ倒せ……」
剣を撫で、構える。
細かく分裂した相手が遠くに逃げない……今の内に!
「ルクス=ウエーブッ!」
横一閃に振りぬき輝きの斬撃を飛ばす。
光の波に飲まれてウィルオウィスプは消滅した……
「ふぅ……装着解除」
【戦闘終了】
【火炎モンスター「ウィルオウィスプ」の消滅を確認しました】
【アプリケーション「オートパイロット」を終了】
【戦闘用アーマー「スノーホワイト」の脚部以外を収納します】
【バトルモードを終了し、メインモードに移行します】
【お疲れ様でした、今回も楽勝でしたね】
「ああ、もうちょっと歯応えのある敵がいればいいんだがな」
ウィルオウィスプが落としたルクス銅貨を回収しつつ、そんなことを呟く。
だからといってSSSランクはもうごめんだけどな!
いくらルクス硬貨が大量に手に入るとしてもあのクラスともう一度戦えとか、勘弁してください。
「でもなんで町の中にモンスターが……」
普通、町の中でモンスターなんて出ないものだろ?
RPGとかだとさ。
【恐らく、この町は比較的最近出来た町なのではないのでしょうか?】
「確かにそうだが……それといったいなんの関係が?」
ケルが俺に近づいてきた。
……怪我はしていないようだ。
「そうなのか?」
「ああ、この町は確か観光用に十数年前に作ったと父上から聞いている、私たちが生まれる前の話だ」
【なるほど、やっぱりそうですか】
「なぁどういうことなんだ? 父上が作った町は何か問題があるのか?」
【いえ、もう問題はありませんよ、この町にマッドゴーレムやウィルオウィスプが入り込んだり近づいたりしたのはこの町に光の結界がなかったのが原因ですから】
あ、そう言えば……【ルクス=サンクチュアリ】の効果はほぼ永続とかアオが言っていたような……
「【ルクス=サンクチュアリ】の効果はほぼ永続だから……モンスターが封印される昔からある町には結界がずっと張ったままになっているけど、最近になって作った町には結界は張ってない……だから侵入されたのか」
【はい! その通りです! ルクス=サンクチュアリの効果はずっと効きますからねー】
「そしてこの町は俺が今さっき結界を張ったからもう問題はないと」
【そういうことになりますね】
なるほど、じゃあ一安心……か?
「他にも最近になって作った町とかは?」
「父上の代になってからは、他には作っていない……はず」
……あとで、何らかの手段で確認した方がいいかもな。
現在のルクス硬貨はルクス銀貨一枚、ルクス銅貨四枚、小ルクス銅貨五枚。




