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「お、おにぎりだ……」

「そういえば、ルクス硬貨ってどう使うんだ?」

【ルクス硬貨を使用する際はルクス硬貨を握り、強く願ってください。】

【その硬貨で叶えられる願いだった場合硬貨が輝くので、そっと手を広げてください。】


 なるほど。

 輝かない、ってことはそのルクス硬貨じゃ叶えられないってことか。


「よし、じゃあ……お腹が空いてきたから……おにぎりでも貰おうか」


 頭の中で強く願う。

 この小ルクス銅貨ではちょっとした料理が限界らしいので、おにぎりをイメージ。

 おにぎり食べたい! おにぎり食べたい!! おにぎり食べたい!!!


 すると……手の中のルクス硬貨が輝き出した!

 これで手を広げればいいのか。

 書いてあった通り、そっと手を広げる。


 輝くルクス硬貨が浮かび上がり……ポン! と音が鳴ると同時におにぎりになって俺の手の中に落ちてきた。


「お、おにぎりだ……」


 本当におにぎりになった。

 これスゲェ……


「い、いただきます……」


 と、とりあえず一口食べてみよう。

 流石に毒は入ってないだろう……入ってないよね?


「! こ、これは、この味は!」


 この塩加減、味わい。

 俺はおにぎりの大きさ、形を見る。

 まさか、これは、そんな馬鹿な。


「母さんの、母さんのおにぎりじゃないか! な、なんで……なんで……」


 もう、この世には存在するはずのないおにぎり。

 だって、母さんは、もう。


「最近、三回忌をしたんだぞ!? なんで、なんで……なんでだよ!」


 死んだはずだ。

 ガンで、まだ四十代だった。

 優しくてキレイな自慢の母親だった。

 なんで、なんでそんな死んだはずの人間が作ったおにぎりと同じ味なんだ……?

 味だけじゃない、大きさもそうだ。

 この大きさはうちの母さんのおにぎりだ。

 間違いない。


「ああ……美味しいなぁ、美味しいなぁ……ちくしょう」


 大好きだった。

 母親のおにぎり。

 もう、一生食べることも、この味を思い出すことも出来ないんだろうなと、そう思った三回忌の夜。


 それなのに。


「また、食べられるんだなんて……涙が止まらないや」


 まるで、天国にいるであろう母さんが、これを食べて頑張りなさい。

 そう言ってくれているかのようであった。


 ふと剣を見ると、なにかが書いてあった。


【ルクス硬貨によって創りだされた料理はその人が最も美味しいと思う物を創り出します。】

【場合によっては死者の料理を食べることも出来るでしょう。】


 ああ、そうなのか。

 それでも、嬉しいよ。


 ……そうだ。


「ル、ルクス硬貨で死者を蘇らせることは出来るのか……?」

【不可能です。】

【ルクス硬貨に関わらずどんな方法を使っても死者を蘇らせることは出来ません。】

【これは絶対のルール。】

【例え世界が変わろうともそれは変わりません。】


 そうか、そうだよな。

 そんなに都合よくはいかないか……




「ごちそうさまでした」


 なんとか食べ終えた俺はまた画面を見つめる。

 この剣はいろいろ知っているようだ。

 その知識を引き出せるだけ引き出さないと。


「そういや、戦っているとき体が自動で動いたよな……あれもお前か?」

【アプリケーション「オートパイロット」に関するデータを表示しますか?】


 「オートパイロット」?

 どうやらそういう名前の機能のようだ。

 この機能は壊れていなかったのは運が良かった。


「ああ、見せてくれ」

【データを表示します……】

【アプリケーション「オートパイロット」は所有者(ユーザー)が戦闘経験がない、もしくは著しく戦闘能力の低い人物であった場合に作動するアプリケーションです。】

【肉体の制御を当剣で代行し、その場での歴代所有者(ユーザー)の戦闘データから導き出した最良の行動をします。】

【あくまで、最良です。 最強の行動でないことに注意してください。】

所有者(ユーザー)が自分一人で戦闘を行うことが出来るようになった場合、自動的にこのアプリケーションは終了します。】

【今、ここで「オートパイロット」のアプリケーションを手動で終了させますか?】

「いや、いい。 俺が戦闘に慣れるまでオンにしておいてくれ」

【了解しました。】

【「オートパイロット」をオンのままに設定します。】


 最良の動きであって最強ではない……か。


「最強の動きには出来ないのか?」

【最強の行動にした場合、素人の所有者(ユーザー)の体が悲鳴をあげることになりますがよろしいですか?】


 ああなるほど、そういう意味も含めた「最良」なのね。

 最強の動きをしたければ体もその最強の動きに相応しいものになってからにしろ。

 そういうことらしい。


「最良の動きのままでよろしく」

【了解しました。】

【最良の行動になるよう設定します。】




 しかし……歴代の所有者、ね。

 俺以外にもこの剣と共にモンスター相手に戦っていたヤツらがいたってことだよな。


「俺以外の所有者ってどんなのがいたんだ?」

【データがありません。】


 へ?

 データがない?

 破損してるのではなく、ない?


「データがないってどういうことだ?」

所有者(ユーザー)、あなたが私の最初の所有者(ユーザー)です。】

【ヨザキ レン様以外の人物は私を使用しませんでした。】


 余崎 蓮は俺の名前だが……

 プライバシーもクソもない。

 記憶領域がどうこうとか言ってるし人の記憶を読んでいるんだろうな。

 こんな怪しいアイテムに頼らざるを得ないのが情けないやら悲しいやら。

 でもこの剣がなかったらあの青熊に殺されていただろうしなぁ……


 でも俺が最初の所有者か。

 ……あれ、俺が最初の所有者なのになんで歴代所有者の戦闘データなんてあるんだ?


「俺が最初の所有者だよな? じゃあなんで歴代の所有者なんて単語が出てくる?」

【……データが破損しています。】


 またかよ。

 ……そう言えばこいつは自分の正式名称を「ルクス=ブレード アナザー」だと書いていた。

 アナザーってことは元になったヤツがあるんじゃないのか?

 そうじゃなきゃアナザーなんて名前は付けない。

 恐らく戦闘データの出処はこいつのオリジナル、「ルクス=ブレード オリジン」……

 多分そんな感じの名前のやつからだろう。

 戦闘データ以外のデータの出処もそいつからだったりしてな。

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