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「……やっぱり、レンは『ニホンジン』だよ……」

「……に、日本? ち、地球? い、異次元? な、何を言っているんだ」


 まぁそうですよね。


 ケルに俺の今までを簡単に説明したが、予想通りの反応だった。


「……まって、もしかして……」

「ローゼ! いきなり出てくるな! ……うわっ」

「……レン、スズキとかアサノとかスギモトって名前に心当たりって、ある?」


 瞳が桃色になったかと思ったら紫色になり、紫色に戻ったと思ったら桃色になった。

 ……人見知りはどうした。


「ああ、「スズキ」ってのは鈴木のことだろうな……全部日本にある苗字だ」


 ケルは「スズキ」も「アサノ」も「スギモト」もそのまま発音した。

 翻訳され、意味だけ伝わってきたときとは違って。


「……やっぱり、レンは『ニホンジン』だよ……」

「いや、そうだって言ってるじゃん」


 ん?

 なんか違和感が。


「……違うの、この魔大陸でもない、人大陸でもない、もちろん他所の大陸や島から来たわけじゃないどこか遠くから来た人を『ニホンジン』って呼ぶの……」

「あ、なるほど……」


 あ、そうか。

 頭の中で何かが繋がった。


 ケルたちの名前。

 異世界なのに地球と同じところがある文化。

 それはすべて。


「俺以外にも日本人がここに、この世界に来てたんだ」


 俺以外の転移した人物たちがもたらしたものだったのか。

 なるほど、謎が解けた。


 ……ん? ってその人たちはどうしたんだ?

 ちゃんと日本に帰れたのか?


「……『ニホンジン』は様々な文化を私たち魔大陸の人々に与えていった、一番有名なのは……「スズキノート」かな、料理の本でいろんな人に読まれているの……」

「そうなのか……その鈴木さんはどうなったんだ? ちゃんと日本に帰れたのか?」


 俺の質問に対し……静かに首を振るケル。


「ううん、スズキは……魔大陸で出会った奥さんと一緒に、魔大陸に骨を埋めたよ……元のニホンに帰りたかったみたいだけど……ダメだったみたい……」

「……そうか」


 鈴木さんがどんな人かは分からない。

 が……日本にはどうも帰れなかったようだ。


 俺も……そうなるのか?


「……あっ! ご、ごめんなさい!」

「ちょ、ちょっと! もう……ローゼったら急に恥ずかしくなったって……いきなり引っ込むのは止めてよね」


 今度は……黄色か。

 知りたいこと知ったら、恥ずかしさがこみ上げてきたのだろうか。


「今は、レモンか?」

「ん? そーだよ、私はレモンだよ……あのさ」


 ん?

 どうしたんだろう。


「私たちを助けるとき……ルクス硬貨を使ったよね?」

「ああ、使った」

「実際、どれくらいのだったの? お父さんから出てきたのは」


 正直に言うべきだろうか。

 黙っていてもいずれポロッと言ってしまうかもしれないし……


「……大金貨一枚」

「え」

「だから、大ルクス金貨一枚」


 正直に言うことにした。


「え、え、ええ!? あのニホンに帰るのに必要なルクス硬貨って……」

【金貨百枚分ですね、大金貨は……通常金貨十枚分です。】


 さーっと血の気が引いていくケル。

 あー言わないほうが良かったか? これは。


「残ってたりとかは……」

「残念ながら……」


 どんどん血の気が引いていく。


「すみません! ありがとうございましたぁ!」


 そうケルが言うと同時に座り込み……見事な土下座をした。

 あ、土下座の文化もここに伝わっているんだ。


「あの、その、このことは、なんと申したらいいのやら……騙していたくせに助けてもらって……」

「いやいや! それは気にしてないし! 顔あげていいから! 君一応、お嬢様でしょ!」


 ようは貴族の娘だろ!?

 まぁお嬢様オーラ的なものはあんまりどころか、全く感じないけど。


「あ、その、そういうお嬢様的な要素は私にはあんまりなくて、普通に女の子してます、はい……大人しいお嬢様はローゼがやるし、凛々しいお嬢様はスミレの仕事だし……」


 ……確かにそうだろうな。

 うん。

 簡単に想像出来る。


「私が、私たちが出来ることは何でもしますから……その、立場分かっているのかお前って話ですけど、お、お願いが」

「なにかな?」


 聞くだけ聞いてみようか。

 あんまりにもアレな内容なら断るが。

 でもまぁ、あれだろうな。


「手伝ってください……私たちだけじゃあ……裏切り者は探し出せても、倒せません……力が、足りないんです」

「……やっぱりそれか」


 相手は時間を操る能力があるらしいし……かなり強いのは確実だろう。

 今の俺では……多分倒せない。


 でも俺には勝算はあった。

 スキルツリーに……【光力戦闘術1】から派生した形で【時間操作1】というのが薄い色で表示されていた。

 あとはお金さえ……ルクス硬貨さえあれば俺も時を止めたり出来るってわけだ。


「いいよ」

「えっ、いいの! じゃなくて……いいんですか!」

「ああ、俺にだってメリットはあるしな……そいつらは人工的に百年に一度あるかないかクラスのモンスターを作り出したんだ、ってことはいっぱいルクス硬貨を持っているってことになる」


 そう、ケルたちの父親の遺体を使ってモンスターを作ったんだ。

 それだけルクス硬貨を持っている、ということになる。


「どうせ奪うなら……悪党からのほうがいい」

「あ、ありがとうございます! ありがとうございます!」


 ギュッと抱きしめられた。

 む、胸が! や、柔らかいすぎる二つの物体が!


「と、とりあえず、その誘導して連れて行くつもりだった町に行こうか? それに、敬語はなくていいよ」

「い、いいの? じゃあ……爺がいる町にいこう!」


 よ、ようやく離れてくれた……

 ともかく、出発だ。

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