「二つに一つかよ……」
「やった……倒したぞ……」
光の奔流が落ち着くとゾンビオオカミはその姿を消していた。
終わったんだよな?
【戦闘終了。】
【謎の狼型モンスターの消滅を確認しました。】
【アプリケーション「オートパイロット」を終了。】
【戦闘用アーマー「スノーホワイト」の脚部以外を収納します。】
【バトルモードを終了し、メインモードに移行します。】
【お疲れ様でした。】
この文章が出たってことは……終わった……のか。
安堵から息を吐く。
勝った、のか。
ギリギリだった。
LPを使いきらなければ、倒せない敵だっただろう。
二つの新しいスキル。
どちらか片方だけだったら……きっとこちらの攻撃より相手の再生が上回って、倒せなかったはずだ。
【大丈夫ですか?】
【戦闘で相当な光力を使いました……体力も相当消耗しているはずですが。】
「なんとか大丈夫だ……それよりも、ケルを……ケルッ!」
俺を突き飛ばしたケルを探す。
どこだ、ケル。
ケルを見つけたが……
「…………」
その六つの目は全て閉じかけている。
傷も……酷すぎる。
最初に会ったとき以上だ……
かろうじて生きてはいるようだが……生きているのが不思議なくらいだ。
この赤いのは……血だ。
血が水たまりみたいになって……
「いますぐに【ヒールライト】を……ってLP使いきったんじゃねぇか!」
戦いでLPは使いきってしまった。
早くLPを回復させないと……
ケルが、ケルが、死んでしまう。
それだけは、それだけは……絶対に嫌だ。
「早く! 早くこのルクス硬貨を使ってLPの回復を! こんな怪我のままほっといたら本当に死んじまうよ……!」
【……駄目です、それは。】
「なんでだよッ! このままじゃ死んじまうんだよ! ケルがッ!」
【そういう意味じゃ無いんです! 今あるルクス硬貨を使ってもLPを全回復出来ないんですっ!】
ッ……!
畜生!
「じゃあこのルクス硬貨を使って……畜生! かけらも光らねぇ……!」
ルクス銅貨一枚と小ルクス銅貨五枚じゃあ……足りねぇのかよ……
それほどの怪我なのか……
そのくせ、こいつは。
「クゥン」
そう、鳴いたのだ。
体中が痛いはずなのに。
俺に心配を掛けまいと鳴いてみせたのだ。
どうすりゃいい、どうすりゃ。
このままじゃ本当のにケルが、ケルが……
「なにか、なにか方法は……!?」
足りない脳みそで必死に考える。
なにか、なにか、なにか、なにか、なにか……
考えろ、考えろ、考えろ、考えろ、考え……! そうだッ。
「あのゾンビオオカミ……モンスターなら、ルクス硬貨、落とすよな……落としてるはずだ!」
そうだ、なんでこんな単純なことに気づかなかったんだろう。
「コインはどこだッ! ルクス硬貨は? どこだ、どこだ……」
ゾンビオオカミがいた辺りを捜索する。
なにかの布の破片……違う。
これは……腕輪? これも違う。
こっちは……ロケット? 中になにかの写真でも入っているのか? でも今は関係ない。
あったッ。
これだ。
……! これは……!
「……大きい。 しかも……金貨だ」
あった、だがそれは……金貨だった。
もしかしてこれって。
「なぁ、これってもしかしなくてもさ」
【はい……大ルクス金貨ですね。 ルクス金貨十枚で大ルクス金貨一枚分ですから……目標の一割です。】
日本の帰還に必要な、百枚の金貨のうちの、十枚分。
決して少なくない量ではない。
「なぁ、このゾンビオオカミ並の強さの敵って簡単に会えるものなのか?」
【……いいえ。簡単に会えるものではありません。】
【私の予想ですが、このクラスのモンスターは百年に一度あるかないか……ぐらいでしょう。】
要するにこのチャンスの逃したらまず次はないわけか。
「ケルの回復に……使ったとして、余るよな? 余りはどうなるんだ?」
【俗説ですが……過剰分のルクス硬貨は、女神ルクスに返還されると聞いています。】
【すなわち……残りません……】
「は、はは……二つに一つかよ……」
日本への帰還か。
ケルの傷を治すか。
どちらか、だけ。
両方だなんて欲深な答えは出せない。
絶対にどっちか選ばなければ、ならない。
しかも時間制限もある。
早く決めなければ。
ケルは。
ケルは……
死ぬ。
選ばなければならない。
犬の命と、俺の安全。
普通に考えるなら犬の命なんて……人間様の安全の方が大事だ。
いつまでもこんな異世界で戦い続ける生き方なんて無理だ。
いつか限界が来る。
俺は日本に帰らないと。
そうだ。
帰らなきゃいけない。
だったら……でも……俺は……
現在のルクス硬貨は大ルクス金貨一枚とルクス銅貨一枚、小ルクス銅貨五枚。




