【戦闘を再開します。】
青い輝きが落ち着くと、俺は元の場所に戻っていた。
未だに頭をゾンビオオカミが地面に頭をこすりつけているので、本当に一瞬のことだったようだ。
【再起動が完了しました。】
【スキル、光力戦闘術2の取得完了に伴いアプリケーション「オートパイロット」のアップデート完了。】
【戦闘を再開します。】
ん? 「オートパイロット」のアップデート?
……あんまり変わった感じはしないのだが。
いつも通り、自分の中にある自分であって自分でない自分が体を動かしている感覚だ。
なんとも言えない感覚。
しいて言うなら、高校の授業で久々に柔道の受け身をとったとき、体が勝手に動いたのに似ているだろうか。
自分の脳にある意識を司る部分とは違うところが働いたような……そんな感覚。
「何が変わったんだ?」
【光力戦闘術2を取得したため、それに伴いアプリケーション「オートパイロット」がアップデートされました。】
【……要するにあの赤い人たちのバックアップが無くなったということです。】
そう言えばあいつらが「オートパイロット」の中身だったっけ。
あれ? それじゃあアップデートしたっていうか、劣化してない?
【戦闘に問題はありませんのでご安心ください。】
【……あの人たち、戦闘になるとあーだこーだ言ってるだけで実際はなにもしてませんでした。 船頭多くして船山に登るというやつでしょうか。】
【それに……実際にアプリケーション「オートパイロット」の処理をしていたのは私ですし。】
ああ、そうだったの……
マジであいつらいらないものじゃん。
「結構、感情豊かなんだね、こっちほうがいいと思うよ」
【あ、ありがとうございます……あと光力戦闘術2を取得したためLPの上限も増えています。】
【現在のLPの上限は20000です。】
【現在のLPも上限が増えたことにより20000に回復しています。】
あの赤い奴らが抜けて垢抜けた感じになった印象だね。
なんちて!
……バカやってねぇでケルだケル!
情報を確認だ。
LPが一気に倍か、こいつは頼もしい。
ッ!
ゾンビオオカミが動きだしたぞッ!
「ガァアアルゥゥゥウウウ!!!」
【また光力戦闘術2を取得したため新しい攻撃用スキルを二つ取得しています。】
【今の私たちなら……倒せるはずです。】
「さぁ行くぜ……新技だッ!」
剣に宿る彼女に教えてもらった新しい二つのスキル。
その内の一つを早速使おう。
「無数の閃光の剣よ! 我らが敵を貫け! ルクス=ブレードTypeディスポーザブル!」
【ルクス=ブレードTypeディスポーザブル】
【消費LP剣一本につき10】
【無数の使い捨ての輝きの剣を作り出す。】
【光力を使った複製術。】
【光力を使い投擲用の光剣を量産する。】
【「無数の閃光の剣よ我らが敵を貫け、ルクス=ブレードTypeディスポーザブル」のボイスキーで発動可能。】
全てのLPを使えば2000の光剣を作り出すことが出来るが……これはあくまで前座。
本命を確実に当てるための前準備。
【LPを10000消費し、光剣を1000本用意しました。】
【さぁやりましょう所有者。】
「おう行くぜ……光剣、展開!」
光剣をドーム状になるようにゾンビオオカミの周りに配置する。
大技を当てるんだ、動き回られちゃ困る。
「満天の星空ならぬ満天の光剣空ってな」
青白い光剣の星がゾンビオオカミを覆う。
これで360度逃げ場なし。
「さて幻想的な光景だけど……」
【所有者、光剣を射出するにはなにか合図をくださいね。】
【合図だったら何でもいいですから……発射、とか攻撃、とかなんなら指パッチンでもいいですよ?】
指パッチンか……かっこ良く決めることが出来そうだな。
だが今はそんなことをしてる暇はない。
スタンダードに……
「発射ッ!」
俺の合図で放たれる光剣。
蒼光の流星群が腐敗した魔狼を貫いていく!
「グルゥゥゥウウウ!!!」
光剣の痛みに呻くゾンビオオカミ……いや、こいつはまさか。
【恐らくだけど…このオオカミには再生と腐敗のサイクルを繰り返すたびに凄い激痛が走っているみたい。】
まじかよ。
なんでそんなことに……
「誰がこんなことを……まさかこのオオカミが自分でこうなったわけがないよな?」
【それは流石にないと思いますが……でも誰かがやったのは確かでしょう。】
クソ、こいつもある意味被害者か……
早く開放させてやるからな。
「いくぜ……大技ッ!」
いくつも光剣が刺さり動きを止めているゾンビオオカミ。
大技をぶち込むのなら……今だッ!
「煌きよ! 輝きの裁きを今ここに……シャイニングブレイクッ!」
【シャイニングブレイク】
【消費LP10000】
【光力で巨大化させた剣で敵を滅する大技。】
【光力を使った攻撃。】
【光力を使い剣自身を巨大化させて敵を粉砕する。】
【「煌きよ輝きの裁きを今ここに、シャイニングブレイク」のボイスキーで発動可能。】
聖光剣……ルクス=ブレードが俺の手を離れ周りを漂いはじめる。
しかも徐々に大きくなりながら!
「ハァアアア……!」
天に向けて手を広げ、聖光剣をそこに誘導する。
俺の手のひらの上にきた聖光剣が回転する!
「大きく、そうだ、もっと大きく! 限界まで……極限まで大きくなれ!」
回転数が上がると同時に大きくなるスピードも上がっていく!
そうだ、極限まで聖光剣を巨大化させて……たたっ斬るッ!
それだけだッ!
剣のちまちました攻撃で倒せないのなら、剣そのものを巨大化させてなぎ倒すッ!
そういう技だ、これは。
はっきりいってあっったま悪い発想の元に生まれた技だが……嫌いじゃない。
「ぶった斬るぜッ! ……シャイニングゥゥゥ、ブレイクッ!!!!!」
極限まで大きくさせた聖光剣をゾンビオオカミ目掛けて振り下ろすッ!
……最初は特に反応が無かった。
だが。
直撃したゾンビオオカミから次第に無数の光が漏れだして行き――暴力的なまでの光の奔流が溢れだした。




