「赤い輝き」
まるで地震が起きたようだった。
「な、なんだ? 地震か?」
【この反応……! 所有者、これは地震ではありません! これは――!】
アオがなにか言い切る前にまた振動が!
いったいなんなんだ!?
「これはいったいなんなんだ!?」
「まさかモンスターが!?」
「静かに! 皆様方落ち着いて! まだ審判中です! ……なんですって!?」
騒然とする室内をなんとかしようとしていたフクロウの魔族イトウさんだったが、例の犀の魔族がなにかを伝えると驚いたのかなぜかピョンと跳ね上がった。
鳥だから驚くと跳び上がってしまうのだろうか?
「ファクトリージャイアントが……崩壊した!?」
へーファクトリージャイアントが……は!?
崩壊ってどういうことだ!?
「ほ、崩壊……? そんなことってありえるの……?」
【普通はありえません、ですが……私と、私のオリジナルなら可能でしょう……!】
アオとアオのオリジナル……!
あれって確か、人大陸にいるニホンジンが持っているんじゃなかったのか!?
アオは俺の手元にあるからありえない。
じゃあわざわざ人大陸からここまで来たっていうのか!?
「やっぱりまともじゃない方法で来やがったかァ」
「おい、まだ来るのに時間がかかるとか言っていただろお前」
「おいおい、相手は伝説の聖光剣士様だぜ? 常識が通用するわけねェだろォ?」
う……確かに。
瞬間移動とかこっちだってあるんだ、あっちにも近い能力があってもおかしくない。
「レン、どうする……?」
「取り敢えずファクトリージャイアントを見に行こう、みんな同じこと考えているみたいだからな」
ドタバタと多くの魔族が部屋から出ていく。
どうやらこの先に庭があるらしい。
俺たちもその波に乗って庭へと向かった。
「赤い輝きが……」
「し、信じられない……!」
「ゆ、夢でも見ているのか……!?」
「悪夢だ……」
誰かが言ったようにまさに悪夢のような光景だった。
巨大な岩の巨人から赤い輝きがあちこちから飛び出し、煙を上げて崩れ始めている。
おいおい太いレーザービームみたいなのが飛び出してきたぞ……!
「そ、そんな! あそこにはストラテゴ様がいるのに……!」
ストラテゴってストラテゴ=サテュロスだよな?
軍のトップ……!
よりにもよって今、あそこにいるのかよ!
ぶっちゃけいつ崩壊してもおかしくない。
このまま崩壊したら魔帝都がめちゃくちゃになるぞ!?
「スミレ、ちょっと行ってくる!」
「っ! 分かった、レンなら……というかレンしか止められないだろうからな、任せる!」
「閃光よ我らの走りに加護を与えよ――ミラージュダッシュ!」
ミラージュダッシュを発動し、俺は飛び出した。
道を走って行く余裕はない。
どの道も崩れ行くファクトリージャイアントを見ようとする野次馬ばかりで走り抜けるのは難しいからだ。
なら、空を歩けばいい。
道がないなら、道を作ればいいのだ。
「多重展開プロテクト!」
プロテクトをいくつも、多く展開する。
それらを空中に浮かべて道のようにする。
軽くジャンプしてその道の上に立つ、これでよし。
【あとはこの上を走るだけ! 所有者後は私がファクトリージャイアントに行けるよう、展開し続けます!】
「よろしく頼む!」
光の壁で出来た道を突っ走る!
俺が走ると同時に光の壁が道を作っていく。
前にしか道がないが戻るつもりはないから無問題だ。
「行くぞ!」
ファクトリージャイアントに近づくにつれ、下にいた野次馬の数が減っている。
倒れてきた時のことを考えて避難を始めたんだろう。
って、あれは……?
「あのときのメイド!」
一旦別れた元メイド長……サテュがそこにいた。
ちなみに元メイド長はメイド服ではなく……軍服のような物を着ていた。
どうやら古巣に戻っていたようだ。
周りには同じような服を来た連中がいるようだが……
いや、魔帝都で落ち合う約束だったから、ここにいるのは当たり前かもしれけどさ。
まさかこのタイミングで見つかるとは……
「あなたは……!? ってなんで上から!?」
「ちょっと色々あってな……もしかしてファクトリージャイアントから逃げてきたのか?」
「ええ、突然避難命令が出たもので……」
まぁこの状況なら普通逃げ出すか。
「あ……! そうです、これを」
元メイド長はなにかを手渡してきた
これは……なにかの地図か?
「ファクトリージャイアントの内部地図です、崩壊を始めてこそいますが、なにかの役には立つかと」
「そいつは有り難い、貰っていく……アイテムボックスオープン」
アイテムボックスの中に貰った地図を突っ込んでおく。
【ほほう……なるほどなるほど……ふむふむ……大体分かりました!】
【道案内出来そうですよ!】
流石アオ、高性能な剣で助かる。
「では私はこれで……」
「大丈夫なのか?」
「ええ、報酬を貰うまでは死ねませんので」
そう言って彼女は走り去っていった。
さて、俺も行かねば。




