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「十二審判」

「狐のお爺さん? うーん……?」


 馬車の中にて早速レモンに聞いてみたが、さっぱり分からないようだった。


「心当たりとかはないのか?」

「まったくないわけじゃないんだけど……候補が多すぎて」


 候補が多すぎるのか。

 領主様なわけだから知り合いも多いんだろう。

 それゆえ、候補を絞ることも難しいようだった。


「直接見てたら流石に分かるんだけどね」

「アオ、なんとかならないか?」

【幻覚を打ち破ることは出来るんですけど、流石に幻覚を保存しておくことは……】


 流石のアオでも幻覚はちょっと専門外だったか。

 ミラージュダッシュで幻を生み出せるとはいえ、そう上手く行くもんじゃないか。


「……幻術スキルを使う狐魔族のお爺さん……いや、まさかありえない……となると誰……?」


 ローゼも分からないようだった。




 窓から魔帝都を覗く。

 異国、というか異世界の町並みというのはなかなか不思議だ。

 東京に似たところもあれば、まったく違うところもある。

 一番違うのはあれだな、あの巨人。

 確かファクトリージャイアント、だったか?

 魔帝都内ならどこからでも見えるほど巨大だ。


「……どの新聞もファクトリージャイアントを褒めちぎる内容ばかりだな」

「そうなのか?」


 俺の隣に座るスミレは新聞を読んでいた。

 少しでも情報が欲しい、ということだったが……どうも内容はどの新聞社も似たような物のようだ。

 スミレたちが魔帝都内にある屋敷から持って来ていた様々な新聞だったが文字が分からない俺にはさっぱり分からない。

 ただどの新聞も一面はファクトリージャイアントの写真だ。


「こっちの極右で有名な魔帝新聞社は当然として軍部に対していつも批判的なトワイライトタイムズまで軍部を褒めちぎっているぞ」


 本来なら批判的なところまで褒めちぎっている、ということは……それだけ軍部が金を使ったのだろうか? それとも強いものに惹かれる魔族のサガがそうさせたのか?

 判断が難しいところだ。

 ただこれだけは確実に言える、ファクトリージャイアントは魔帝都内で一番の話題になっている。


「私たちの家のことは……まだ書いてないな、所詮噂レベルだからか?」

「なんかの圧力とかか?」

「私たちはそんなことしてないぞ」


 それもそうだ。

 印象操作はまだ広まりきっていない、ということなのだろうか。


所有者(ユーザー)翻訳します?】

「いや、別にいいよそろそろ到着するみたいだし」


 馬車はやたら立派な建物の前に止まった。

 どうやらこれは門のようだ。

 門からしてデカイし立派だし厳重な警備だなおい。

 まぁこの魔帝都で一番偉い人がいるところだしこれも当然か。

 カウスさんが門番らしき人物となにか話し合っている……あ、門が開いた。


「俺は鎧姿でいいんだな?」

「ああ、レンは伝説の聖光剣士様だからな鎧のままで頼む……陛下の前では兜を外すようにな?」


 顔を隠したままは流石に失礼か。




「なに!? 十二審判だと!? そんなのは聞いていないぞ!」

「急遽決まってものでして……」


 門を通り待合室的な場所で待っていたら、なにやら雲行きが怪しくなってきた。

 屈強そうな犀の魔族曰く、魔帝とのお話の前になにやら十二審判なる物があるらしい。


「スミレ、十二審判ってなんだ?」

「……十二審判は、なにか罪を犯した十二鬼将を裁くための裁判だ」


 は!? 疑惑を晴らすために魔帝のところにきたのに裁判をやるのかよ!

 ガッツリ疑われてるじゃないか!


「く、嵌められた……! 最初っから私たちを犯人に仕立て上げるつもりじゃないか!」

「いえ、まだあなたたちがそう、と決まったわけでは……」

「それを決めつけるための十二審判だろう!」


 どうも、十二審判はスミレたちにとってかなり不利な裁判のようだ。

 まずいな、どうする?


「では、失礼します」


 言うだけ言って犀の魔族は去っていた。

 部屋には俺とスミレたちだけ。


「まずい、まずいぞ……あの男は屋敷の地下に閉じ込めている」

「あの蛇男か」


 蛇男は馬車に乗せず屋敷の地下室に閉じ込めている。

 ここから屋敷まではそこそこ距離があった、すぐ連れてくるのは難しいだろう。


「具体的に十二審判ってどんな物だ?」

「十二審判はね、真実の水晶っていう水晶玉の前で行う裁判なんだけど……」

「真実の水晶?」

「……これが目の前にあると嘘が言えなくなる、そういう魔道具……」


 なるほど、虚偽のない裁判か。

 ん? むしろ有利なんじゃないのか、これ。

 こっちは嵌められただけで真実が表に出れば困るのはあっちだ。


「そう思うじゃん? それがこれ意外と抜け道があって……」

「嘘がいえないだけで真実を一部分だけ言ったり……あくまでその人にとっての嘘が言えないだけで、間違った証言が出たりするの」


 それ、なんでもありじゃん。

 勘違いしている人が証言すると大嘘でも真実として認識されるってことじゃないか。


「私たち側につく十二鬼将の家は恐らくゼロ……多数決で決める以上、相当不利だ」

「ど、どうするんだ? スミレ」

「どうしようもない……せめて、あの蛇男を連れて来ていれば……」


 証人か。

 なんだ簡単じゃないか。

 アイツさえいればいいんだろ?


「じゃあ連れてくるか」

「いやだから! 私たちはここから動けないんだぞ!? この部屋の外にはいっぱい――」

「ちょっと行ってくる……テレポート!」


 【瞬間移動】のスキル【テレポート】を発動する。

 さて一度行った屋敷に戻るか。

次回更新は未定です。

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