「魔帝都」
「ここが魔帝都か……」
列車に乗ること数日、魔大陸の中心地である魔帝都に到着した。
ミサシと比べると明らかにこちらの方が都市! って感じがする。
あちらは港町だったが、高い建物がなかった。
対する魔帝都は高いビルはあるし車のような物も走っているしで一瞬東京に帰ってきたのかと錯覚してしまった。
まぁこの世界の文字で書かれた看板とかあるから異国の地、って感じの方が正しいかもしれない。
【地球にあったガソリンなどで動く自動車ではなく魔石で動く乗り物のようですね】
「魔導自動車のこと……?」
「やっぱり、魔石で動く自動車だったりするのか? ミサシとかじゃ全く見なかったけど」
「うん……魔石が高いからまだ一般的な乗り物じゃないけど、魔帝都でならよく見るよ」
「他所だとまだ普及してないかな、魔導自動車自体高いし」
なるほど、確かに魔導自動車以外にも馬車とか魔導機関車とかあるし現状それらで充分なんだろう。
「レモン、ローゼ! それにレン! まったく……観光に来たんじゃないんだそ?」
お、そうだったそうだった。
スミレたちの家に向かうのが先だったな。
「私たちの家の馬車が来ているようだな」
「予めデンポーとかいうので呼んでおいたんだっけか」
「うん、遠くのヒトとやりとり出来るからデンポーは便利なんだ、あ! カウスー! こっちこっち!」
おお確かに馬車が……っていうかこれ、馬車じゃなくて人力車じゃ?
馬の魔族が引っ張って来てるんだけど……このヒトが引っ張るの? 他にも普通の馬がいたりとかは……いないのか。
【馬の魔族はケンタウロスのような姿が特徴ですからね】
【良かったじゃないですか、ケンタウロスが引っ張る馬車ですよ? レアな体験じゃないですか】
全然嬉しくないんだけど。
っていうかこれじゃあやっぱり人力車じゃ……
「お嬢様……いえ、領主様お待たせしました」
「ありがとうカウス、さて乗るぞレン」
え、これに乗るの? マジで?
ダンディーなおじさまボイスのケンタウロスが引く馬車に乗るの……?
「ああ、そうそう領主様にお手紙です」
「手紙? 私たちにか?」
「はい、ここだけの話……魔帝陛下からですささ、話なら馬車の中で……」
魔帝陛下からの手紙!? なんだそれは。
サーベラス家の家紋が刻まれた馬車に乗りスミレたちの家に向かう。
……馬車って凄い揺れるんだな。
長旅で酷使した尻が余計に痛くなった。
自動車に慣れた現代人の尻は貧弱だ……
「……それでこの手紙はどういうことだ?」
手紙にはいま直ぐに自分の元に来るように……と書いてあったようだ。
それ以外に情報はなし。
まったく情報源としては使えそうにない。
「そのままの意味です領主様、魔帝陛下はあなたをお探しです」
「カウス……そうかありがとう」
「いえ、サーベラス家に使えるのは我が一族の使命……この程度構いませんよ」
この馬車? いや人力車? を引っ張ってきたカウスさん曰く……あの蛇男がいた連中が起こした全ての罪が……サーベラス家が企てたことになっているらしい。
モンスターの封印を解き、世界に混乱をもたらしたのはサーベラス家。
どうも魔帝都内ではそういうことになっているらしい。
……どういうことだろう。
【スミレさんたちが全ての原因ってことにしたいみたいですね】
【所有者が助け出していなかったら、スミレさんたちは未だにあの犬の姿のままだったでしょうし】
濡れ衣を着せても反論出来ない状態なら……ってことか?
あの姿だと喋れないし、そういうことなんだろう。
「だが……いいのかカウス? 私たちは大罪人かもしれないんだぞ」
「それはありえませんよ……あなたも、先代領主様も、そんなことをするヒトではないと私は知っています」
「カウス……!」
「領主様あなたの味方は少ないかもしれません、ですがゼロではありません……どうか自分たちだけで全てを背負い込まないでください……!」
……信頼されてるんだな。




