「強くならないと」
今後の予定をまとめる必要がある。
「勇者を説得して、魔帝殺害を諦めさせる、ついでに仲間に出来れば最高だけど」
「いや、その前にあの蛇男を魔帝都に連れて行こう!」
「……それもあるけど、レンも強くならないと」
俺たち四人と一本の剣は今後について話し合っていた。
「強くなると言えば獣魔開放はどうする? あんなことを言って……」
「多分だけど……獣魔開放を私たちに渡してもお父様は消えないと思うの」
消えない?
「お父様が……私たちの元に来たのは……絶対に自分が消えない自信があったからだと思う」
【まぁあくまでかも、の話ですけど……】
【絶対に消えない保証もないんですよ?】
【第一、なぜ彼はあそこまでスキル「獣魔開放」のこと知っていたんでしょう?】
【生前はよく知らなかったら、スキル「獣魔開放」を使って体を壊したわけですし……】
そうだよな。
妙に詳しかった。
生前知っていたとは思えない以上、情報源はどこか? って話になる。
「怪しい……な」
「うん、怪しいの……そう考えると獣魔開放を必ずしも覚える必要はないんじゃないかって……」
獣魔開放は……一旦保留にしたほうがいいかもしれない。
それに獣魔開放以外にも俺が強くなる方法はある。
【光力を使えば、強くなること自体は簡単です】
【光力戦闘術3を覚えるために必要なLPは……二十万ほど消費すればOKです】
200000LPか。
多いなぁ。
えっと、今の最大LPSが20000だから、十回使い切ればいいのか。
「どうする? 私たちの考えとしては……一週間後にサテュに合うに行くと同時に魔帝都入りしたいんだが」
「あのメイド長か……そう言えば大丈夫か? 魔帝都は今、モンスターに襲われているんだよな?」
【あの男曰く、軍なら簡単に倒せるよう、意図的に弱点を作った巨大なモンスターであるとのことなので……】
【それが一体だけ出るそうなので問題ないでしょう】
なら、大丈夫か。
巨大とはいえ、たった一体。
デモンストレーションとしては十分と踏んでの行動か。
「そう言えば、スミレはもう大丈夫か?」
「私は平気だ……裏で休んでいたからな、レンはこれからどうするつもりだ?」
そうなんだよな。
さてどうしたものか……
【ネハコから出るのは『赤角』さんのところでスキル「プロテクト」の使い方を教えてもらったあとでいいんじゃないでしょうか?】
【赤の聖光神剣の使い手と衝突しない可能性はゼロではありません】
【当剣とオリジンは概ね同じ性能……差がでるとしたら、使い手個人の強さでしょうし】
確かに話を聞かないタイプの人間だったら戦闘は避けられないかもしれないな。
一旦、倒して頭を冷やさせてから話し合い、ってことになる可能性もある。
あ、そうだ。
「その勇者が俺よりも強い光力使いである可能性もあるよな?」
【え? まぁありえなくはないですけど……】
【流石に【光力戦闘術3】以上である可能性はないですよ! ないない! ありえません!】
【そんな化け物何人もいるわけないですし!】
……だよな!
そんなことないか。
「レンはニホンジンだから凄い光力使いなんじゃないのか? もしそうだというのなら、その勇者も……」
【それはないでしょう日本人だから高い光力使いとしての素質を持っている、というわけでもないみたいですし】
【第一、その勇者さんが日本人である保証すらありません】
【その勇者さんが所有者並の光力使いとは考えにくいですしね】
そうなのか?
てっきり、俺はこの世界の住人じゃないからだと思っていたけど。
【はい、所有者はなぜか凄く高い適正を持っていましたが……】
【どうも日本人だから、というわけではないみたいなんですよね】
【なんと言いますか……人為的な物が原因のような】
人為的? どういうことだろうか……
それとも柔道とかの才能はなかったけど、光力使いとしての才能はあったってことか?
もし本当にそうなら異世界に訪れなければ絶対に芽が出ることがなかったであろう才能を俺は持っていたことになる。
いや、才能じゃないな。
恐らく……父さんだ。
俺をこの世界に送り出す際に……なにかしたんじゃないか?
「まぁ父さんの安否がよくわからない以上、どうしようもないか……」
【五十嵐、という研究員が死んだと言っていただけですからね】
【彼の勘違いかもしれませんし】
確かにもしかしたら生きているかもしれない、という願いはある。
確信とか、そういうのじゃない、ただの願望だ。
けど、あまり期待しない方がいいんだろうな。
恐らく、父さんはもう……だけど俺は生きているんだ。
父さんに生かされたんだから、強くならないと。
「さて、『赤角』さんのところに行くか」
「旅館で湯治しているんだったな」
旅館「三毛猫」に行けば彼に会えるはずだ。




