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はじまり-01

遠くから女たちの歓声が響き渡った。

ふ、と窓を覗くと広がるスカートを押さえて忙しく立ち働く姿が見える。色とりどりの、と言うにはいささか地味でもっさりとした風合いの塊が動いているのはなかなか壮観だった。


「年老いても女は女だ」


前を歩く老人が忌々しそうにつぶやくのを耳にして、リナは肩をすくめた。どうやら師匠の機嫌は悪いらしい。触らぬ神にたたりなし。聞かなかったことにする。

足音を吸い込む絨毯の上を、よそ見をやめたふたりは影のように歩いた。明かり取りの窓の数が少ないのか、晴れているのに廊下はどこか薄暗い。華美ではないけれど掃除も行き届いてどこもかしこもぴかぴかに磨きあげられている。けれど、なんだか息がつまった。


(森に帰りたい)


老人に悟られない程度に深く息を吐く。

爽やかで鮮烈な香りの満ちるあの山へ帰りたい。やっと冬が開けて、雪が溶けて川の水が流れ出したあの場所へ。


(だいたいこれからが忙しい季節なのに)


一年の大部分が雪で覆われてしまうこの地では、春の訪れは黄金よりも尊い。冬を越えた動物たちは芽吹きの季節を待って、一斉に動き出す。草や虫や、ありとあらゆる生き物が我先にと蠢くさまは、生きものとしての本能でリナの胸を熱くするのだ。

再び大きく息を吐いたところで、老人が足を止めた。老人が古びた扉の前で、なぜかためらうようすを見せて、リナを大層驚かせた。


(師匠が一瞬でも考えることがあるなんて)


背筋を伸ばして、ごくりと息を飲む。肩の力を抜いて臨戦態勢を取った。

老人と知り合ってから3年がたつ。生活のほとんどを共に過ごし、呼吸さえも揃えるような毎日の中で、老人がためらったことなど一度もないのだ。


(扉の向こうになにが)


緊張のあまり、す、と指先が冷える。武器やそれに準ずるものは全て玄関で明け渡してきた。頼れるものはおのれの肉体と判断力だけだ。

なにかを感じ取ったのか、老人が後ろを振り返った。リナが静かに体勢を整えているのを見て、満足げに唇をゆがめた。光の加減でか、老人の目が金褐色に輝き、リナを大きく映しこんだ。


――そして、老人は前を向き、ゆっくりとドアを押し開いた。

初めての作品です。特に何も決めず、ゆっくり書いていきたいと思います。どうぞ、少しでも楽しんでいただければ幸いです。すみません。主人公の名前思いっきり間違えてます。

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