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はぐれ召喚師の気まぐれライフ  作者: 柚子ポン酢
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二度ある事は三度ある



「・・・団長」


「・・・偶然だ、偶然!」


じとーっとリヒトさんを冷たく見つめるゼイブさんと冷や汗をかきながら必死に言い訳するリヒトさん。


「ほら、行くぞ!」


「(なんなんだ、一体・・・)」


足早にその場から離れるリヒトさんを追いかける形で歩き出す。

この植木鉢はそのままにしといていいのだろうか?と思いながらも置いていかれると嫌なのでスルーする。


「ゼイブさん、神殿ってどんなとこですか?」


「そうですね〜、石造りの建物と柱が印象的です」


「・・・私の世界の神殿と対して変わらない感じです」


どうやら、この世界の神殿と私の世界の神殿は対して変わらない作りらしい。


「ふふ、そうですか」


ゼイブさんと私が雑談している中、リヒトさんは此方を一度も振り返らず歩いている。

歩く速度が早すぎて着いて行けなくなって来た。


「リヒトさん、ちょっと歩くの早いです」


「んっ? あ、すまっ!?」


途切れた言葉と共にリヒトさんが消えた。


「リヒトさん!?」


「下ですよ、下」


「えっ?」


ゼイブさんが言うように下を見てみると人1人がすっぽりと収まるくらいの穴が空いていた。

もちろん、声の主はその中にいるわけで。


「団長、大丈夫ですか?」


「聞くなら引っ張り上げるくらいしやがれ!」


はいはいと言いながら、ゼイブさんがリヒトさんを引っ張り上げる。

私も手伝おうかと思ったが、リヒトさんの体重に耐えられる気がしないのでやめておく。


「だー! なんなんだ、今日は!」


「団長の場合、何時ものことでしょ」


「違う! 多分、きっと、恐らく!」


「否定出来てませんよ」


ズバッと言い放たれた言葉にリヒトさんが少々凹んでいる。

この様子だとリヒトさんはほぼ、日常的にこんな事になっているようだ。


「えっと・・・」


「ああ、驚かせてしまいましたね。団長は少々、不幸体質でして道を歩けば植木鉢が降って来たり討伐に狩り出せば予期せぬモンスターに出くわしたりと言う傍迷惑な体質持ちなのです」


少々で済む問題ではない気がするんだが、何故ゼイブさんはここまで清々しい笑顔できっぱりすっきり言うのだろうか。


「俺だって、好きで不幸体質なわけじゃない!」


「誰だってそうですよ」


私にさあ、行きましょうとばかりの笑顔向けるゼイブさんと軽くボロボロなリヒトさんを交互に見て、安全そうなゼイブさんの近くに寄り歩き出す。


「おい、少年。何故、ゼイブの近くに行く」


「だって、安全そうじゃないですか。それと少年じゃなくて、彩です」


「さすが、彩君は見る目がありますね。大丈夫です、何かあれば団長を囮にしてでも君を守りますからね」


「ありがとうございます」


「囮はやめろ、囮は!」


うん、なんだろう。

リヒトさんの反応がとても面白い。

これが俗に言ういじられキャラというものか・・・

よく見るとゼイブさんもリヒトさんをわざと煽って遊んでいるらしい。


「ゼイブさん」


小声でゼイブさんを呼ぶ。


「どうしました?」


そんな私にゼイブさんも小声で反応してくれた。


「あなたとは気が合いそうです」


「おや、それは嬉しいですね」


クスクスと笑い合いながら、リヒトさんの後を追う。


「なんだなんだ、ゼイブと内緒話か? 俺も混ぜてくれよ」


「いえ、リヒトさんには秘密です」


「秘密ですよ、団長」


「ちぇー。って、げっ!!」


拗ねたリヒトさんが驚いたような声を上げ、走り出す。


「えっ、えっ!?」


「彩君、走りますよ!」


いきなりのことに驚き、立ち止まった私の手を引っ張り、ゼイブさんも走り出す。


「な、なんなんですか!」


「後ろだ、後ろ!」


後ろ? 後ろに何かあるのだろうか?

引っ張られる手はそのままに軽く後ろを見ると・・・


「・・・なんで、街中に牛がいるんですかぁぁ!」


そう、牛だった。

例えるならば、スペインの牛追い祭りに出てくるような闘牛。

その闘牛が私達を猛スピードで追いかけてきていたのだ。


「あと二ヶ月ほどしますと夏至のお祭りがあります。恐らく、その時の牛追い祭りに出る牛が逃げだしたのでしょう」


「この世界にも牛追いあるの!?」


まさか、例えに使った牛祭りが本当にあるとは思わなかった。


「団長、後は任せます」


「はっ!?」


「えっ!?」


ゼイブさんの両手がさらりと私の体を攫い、肩に担ぎ上げられる。

えっ、えっ!? なんで、こうなった!?


「このままでは彩君を神殿まで送り届ける前に日が暮れてしまいます」


「あ、ああ、それはそうだが」


「なので、団長には牛の相手をして頂き、その間に僕が彩君を神殿へ連れて行きます」


「はっ!? それなら、ゼイブが牛の相手すればいいだろ!?」


「嫌です。それに団長に預けたら、彩君が死にますので却下です」


ゼイブさんはそう言い切るとタンっと軽やかに地面を蹴り、路上に置いてある物を足場に近くの民家の屋根へと飛び乗る。


「・・・ゼイブさん、流石にいきなりは驚きます」


「すいません。しかし、あまり驚いた感じしませんね」


いや、驚いてますよ。

表情に現れないだけで心臓バクバク言ってますもん。


「さあ、このまま神殿まで行きますよ」


牛から逃げ続けているリヒトさんが何か言っているが距離的に聞こえないし、ゼイブさんがスルーしているので気にしないことにした。


「ゼイブさん、重くないですか?」


私を担ぎ上げたまま、屋根から屋根へと軽々と飛び移るゼイブさんに尋ねる。

いや、だって私ってそんなに軽いとは思わないんだよね。


「全然。もう少し太った方が健康的でいいと思いますよ」


「そうですか」


「それに例え重かろうが女性に対してそれを言うのは男として見過ごせません」


「・・・えっ?」


この人、今なんて言った?


「気付いてないと思いましたか? 大丈夫、団長は本気で貴方を少年だと思っていますよ」


「気付いていたんですね」


「ええ、なんとなくですが。抱き上げた時に本当に女性なのだと気がつきました」


男と違って、女性は柔らかいですからねーっと言うゼイブさんに言葉を失う。


「な、なっ!?」


「ほらほら、神殿が見えてきましたよ」


ゼイブさん、紳士だと思ってたのに・・・。








団長さんが不幸で副団長がドSな騎士団・・・

できれば、入隊したくないですね!(笑

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