騎士団団長は不幸体質?
「いやー、災難だったな」
「まさか、アムさんに捕まっているとは思いませんでしたね」
私を迎えに来た団長さんとゼイブさんが哀れむような目を向けてくる。
「災難どころじゃないです・・・」
アムさんの徹底的な寸法により、早い段階でクタクタになってしまった。
「まあ、元気そうで何よりだ。少年」
「貴方が無事で本当に良かった。倒れられた時はとても焦ったんですよ?」
ゼイブさんが頭を撫でながら言う。
リムさんといいゼイブさんといい、何故かよく頭を撫でられる。
あれか?頭がいい位置にあるのか!?
「ただの貧血だったみたいです。あなたが止血してくれなかったら、もっと大変なことになってました」
撫でてくる手はそのままにゼイブさんを見上げながら、助かりましたと伝える。
ぶっちゃけ、あそこで止血してくれなかったら出血多量で死んでたと思う。うん、割と本気で。
「団長さんもありがとうございました。お強いんですね」
「まあな。ところで、少年」
「はい、何でしょう?」
「名前聞いていいか?」
今更だな、おい。
普通、もう少し早い段階で聞いてくるだろう←名乗らなかった私も悪いけど。
「辻鞍 彩。今年、18歳になりました」
「18歳ですか、若いですねー」
ゼイブさんが軽く遠い目をして呟く。
若く見えるのだが案外、年上なのだろうか?
「お二人の名前も聞いていいですか?」
「おう!俺はリヒト・セーバン、リーベルタール騎士団団長を勤めてる。ちなみに年は20だ」
リヒトさんは綺麗な金髪に短髪、背は私よりも大分高い。
健康的な小麦色の肌を露出するような鎧を身につけている。
マントがデカイのは団長だからだろうか?
「僕はゼイブ・リメディ。リーベルタール騎士団副団長を務めさせて頂いています。年は21ですよ」
ゼイブさんは紺色の短髪で背は私よりも少し高い。
肌は白くて、中性的な顔立ちをしていて動きやすそうな鎧を身につけている。
やはり、マントがデカイのは副団長だから?
二人とも、あの時はじっくり見えなかったけどなかなか女受けしそうな容姿してるなぁー。
「そんで、今日お前を呼び出した理由だが」
「はい」
「お前、この世界の人間じゃないだろ?魔法を知らなかったとゼイブから報告があった」
私が貧血で倒れる前にゼイブさんが言いかけたのはそのことだったのか。
「大丈夫だ、取って食ったりしねぇよ」
リヒトさんは思わず、俯いてしまった私の前にしゃがみ込み、わしゃわしゃと私の髪を掻き回しながら言う。
「この世界にはお前みたいな異世界人が沢山いる。そして、このリーベルタールを作ったのも異世界人なんだ」
「リーベルタールと言うのは街の名前のことですよ」
ほうほう、話によく出てくるリーベルタールと言うのは街の名前だったのか。
リヒトさんが言うにはこの街には異世界人によって作られ、異世界人を守る団体や支援などが沢山あるらしい。
「これから行く神殿ではお前が本当に異世界から来たのかを調べて、それを証明する証明書を発行してもらう」
「平たく言うと身分証明書ですね」
そんな制度があるのか。
てか、そんな事するほどにこの世界にいる異世界人が多いと言うことなのだろうか?
「なるほど・・・」
「詳しい説明はあいつがやるだろ」
「あいつ?」
「神殿にいる神官だよ、ぽわぽわしててよく転ぶ癖に大概のことでは動じないようなやつだ」
「ただ、鈍いだけなんじゃないかと思う時があるくらいですね」
あははっと笑いながら言っているが、一つだけ言いたい事がある。
「(大丈夫なのか、その神官)」
「ほらほら、ちゃっちゃと終わらせて昼飯行こうぜー」
神殿に向かうべくリヒトさんが立ち上がり、歩き出した瞬間・・・
「ガシャァァン!」
(一同「・・・・・・・・・」
リヒトさんの目の前に植木鉢が落ちてきたのだ。
私の隣でゼイブさんが呆れ果てた目をしているのだが、何故だろうか?
えー、ようやくこの世界の事情がなんとなーく分かって来ましたね(長い