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はぐれ召喚師の気まぐれライフ  作者: 柚子ポン酢
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・・・女の人って怖い(泣

「さあさあ、食堂はこっちよー」


あれから、リムさんに案内され宿の中を見て回った。

洗濯場を見せてもらった時に木で作られた桶や竹箒に混じって何故か掃除機や洗濯機が置いてあったのだ。

内心びっくりしたが、ここがどんな世界なのか分からないのでとりあえずスルーしておく。


「クルル♬」


「もふもふ・・・」


一度はリムさんの肩にとまったノーチェだが、すぐに私に抱っこしろとばかりに飛び込んできた。

私としては動物好きだし、もふもふだしといった感じでご満悦。


「ノーチェったら、本当に彩君に懐いちゃったわね〜」


リムさんは私のお願いした通り、ちゃん付けから君付けに変えて少年扱いしてくれた。本当にありがたい。


「ノーチェ、可愛いです」


「ふふ、この子。初めて見る人には飛びついたりしないのよ? 常連の人だって、気に入らなかったら触らせもしないわ」


彩君は生き物に好かれているのね、リムさんはそういって大きな扉を開けた。


「アム! あの子が起きたわよ」


その呼びかけに食堂でテーブルを拭いていた女性が振り返る。

振り返り様にさらりと紅い髪がなびく、黒いゴスロリっぽい服を着ている明るく愛想の良さそうな人だ。


「あ、本当だ! 怪我はもう大丈夫?」


「はい、もう大丈夫です」


「アム、ちょっと話したいことがあるから厨房へ行きましょ」


「えー?」


アムさんは不満そうにリムさんの後について行く。


「ピチチっ!」


「あっ・・・!」


リムさんに手招きされ、厨房へ入ろうとした私の腕の中からノーチェが飛び出す。

突然で驚いたが、ノーチェは素知らぬ顔で少し離れたところにある止まり木へと移った。


「ノーチェは厨房に入らないのよ」


「えっ?」


いつの間にか隣に来ていたアムさんがノーチェを見ながら、そっと教えてくれた。

特別躾けたわけではないのだけれど、何故か厨房へは入らないらしい。

確かに動物が厨房に入ると衛生面にダメなのかもしれない。


「ノーチェ、賢いんですね」


「ええ、うちの自慢の子だわ」


アムさんが嬉しそうに微笑む中、厨房からリムさんの呼ぶ声がした。

大変だとアムさんと顔を見合わせ、厨房へ駆け込む。


「もう、遅いじゃない!」


リムさんが腰に手を当てて頬を膨らましている、なんとも可愛らしい反応だ。


「すみません、リムさん。ノーチェに驚いてしまって」


「ノーチェがどうかしたのかしら?」


「ノーチェが厨房に入らないの知らなかったから、驚いちゃったみたい」


「あらあら、びっくりさせちゃったのね」


私の頭をよしよしと撫でながら、困った顔をする。

撫でる手が気持ちいい。


「ごめんなさい、お待たせしてしまいました」


「いいのよ、私も怒ってごめんね?」


リムさんの言葉にふるふると首を振り、アムさんを見る。


「それで話って?」


「この子の事なんだけど、実は・・・」


私の秘密とお願いをリムさんがアムさんへ伝えて、何かこそこそと話し始める。


「(何故、こそこそする必要があるのだろか?)」


しかも、楽しそうだし。

ノーチェも居なくて暇なので調理器具を見て時間を潰す。

向こうの世界でも見た泡立て器に木べら、フライパンに寸胴。

コンロのようなものまである。

生活水準は向こうの世界と大差ないのだろうか?


「えー!? じゃあ、この子!」


「シッー! 声が大きいわ、アム」


突然響いた大声にビクッとしながら、二人の方へと顔を向ける。


「だ、だって。リム、本当なの?こんなに可愛い女の子を男の子扱いするなんて!」


「彩君に頼まれたんだもの、少年扱いしてくれって」


信じられないといった感じでアムさんが私に近寄ってくる。


「彩ちゃん、考え直さない? 可愛い服とかスカートとか履けなくなるのよ!?」


「あー・・・」


ぶっちゃけ、可愛い服とか着たくない場合はどうしたらいいのだろうか?スカートは苦手だし。


「ね、ね?考え直しましょうよー」


「ごめんなさい、アムさん。もう、決めたことなんです」


ここはちょっと悲しげな雰囲気だして乗り切ろう。

腹黒い考えだか、背に腹は変えられない。


「(ごめんなさい、スカートだけは履きたくないんです!)」


「うぅー、こんなに可愛いのに勿体無いわ・・・」


「アム、そんなに彩君を困らせないの」


本当に勿体無いとばかりに縋り付くアムさんをリムさんがズルズルと引き剥がす。


「・・・分かったわ」


「あら、案外物分りが良かったわね?」


ホッとしたのもつかの間。

アムさんは何かを考え込み、パッと輝かしい笑顔でこう言った。


「だったら、私が可愛い男の子にしてあげるわ!」


「えっ?」


「ほら、中性的な感じならいいんでしょ? 大丈夫、スカートは履かせないわ!」


どこが大丈夫なんだ!?

らんらんと瞳を輝かせ、いそいそとメジャーや寸法用の器具を取り出すアムさん。


「(一体、どこにそんなものを!?)」


「あらあら、アムのスイッチが入ってしまったみたいね」


「なんですかそれ!!」


「アムはね、服を作るのが趣味なのよ」


どうやら、アムさんは裁縫が得意らしく自分の服や宿の小物などは全て自作なのだそうだ。


「でも、なんで僕は寸法されてるんです?」


「もちろん、君の服を作るためよ!」


抵抗も虚しく、アムさんに捕まった私は大人しく寸法を受けている。

いや、厨房で暴れたりしたら危ないし。


「ふふ、アムの腕はいいからきっと素敵な服ができるわ。楽しみしていてね?」


リムさんが微笑ましそうに見守る中、私はリヒトさんとゼイブさんが迎えに来るまでの間、延々と寸法を受けることとなった。


「(・・・女の人って怖い)」


アムさん限定かもしれないが。





続々とキャラが登場してきます(笑

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