一難去ってまた一難?
リヒト・セーバンと名乗った青年が私を守るように前へ出る。
この人はリーベルタール騎士団長と名乗った、リーベルタールは後ろの街の名前だろうか?
「リヒト団長、遅いですよ!」
弓使いの騎士がリヒトさんに向かって叫ぶ。
「そう急かすなよ、ゼイブ。こっちだって、やることがあったんだ!」
弓使いの騎士はゼイブと言う名前らしい。無事にこの状況から抜け出せたら、きちんとお礼を言わなきゃ。
「ゼイブ!あとは俺が片付ける、この少年の傷を見てやってくれ!」
「了解しました!」
団長さんが私から離れ、魔物の群れへと駆けていく(少年に間違われているがこの際気にしない)。
さっきはよく見えなかったが、団長さんの獲物は双剣のようだ。
刃はやや細めだが、先ほどの魔物を一刀両断出来るほどの斬れ味と強度を持っている。
団長さんはさらりと舞うように次々と魔物を倒していく。
「大丈夫ですか?」
「はっ!?」
ゼイブさんがいつの間にか私の前に立ち、顔の目の前で手をヒラヒラさせていた。
団長さんの剣さばきに見惚れてて気がつかなかった・・・。
「すいません」
「団長に見惚れてたんですね」
ぐっ、バレてる。
だって、しょうがないじゃないか。
私の世界では剣なんて持ち出したら、銃刀法違反で捕まるし、剣舞なんて早々、見れる物じゃないし!
「団長さん、お強いんですね」
「まあ、史上最年少で騎士団長まで上り詰めた方ですからね」
ゼイブさんはそう言いながら、座り込んだ私の傷の状態を確認する。
史上最年少と言うことはあの人若いんだろうか?
確かにゼイブさんに向けた言葉には威厳というかそういった物が少し足りない気がした、特に最初。
「傷はそう深くないんですが、血が止まりませんね。止血しますから少し縛りますよ」
「はい、お願いします」
ゼイブさんが何処からか取り出した紐で傷から少し上辺りを縛る。
「ッ!」
「すいません、痛いですか?」
「いえ、大丈夫です。血が止まってくれない方が困ります」
それもそうですねと軽く微笑みながら、応急処置を続けるゼイブさんの後ろで戦い続けている団長さん。
「あの、団長さんは大丈夫ですか?」
「ふふ、この辺りの魔物はそんなに強くありませんし、あの人は殺しても死にませんので大丈夫ですよ」
「聞こえてんぞ、ゼイブ!」
「おっと、コレだから地獄耳は」
あー。大丈夫そうだな、あの団長さん。
アレだけの魔物の相手をしながら、軽口叩けるんだから凄い。
「おや、大分止まってきましたね」
本当だ、アレだけ流れてた血の流れが少しずつ緩んできてる。
「出血死しなくて助かった・・・」
「僕も止血しても止まらなかったらどう対処しようかと思っていました。僕は治療魔法が使えませんから」
「治療魔法?」
わー、本格的に異世界なんだ。
魔法って小説とかアニメの世界の話だよ。
「魔法をご存知ないと言うことは君は・・・」
「ガルァァァァァ!!!!」
「なっ! クローフィヴォルフだと!?」
団長さんが驚いたような声を上げた。
ゼイブさんも立ち上がり、矢筒に手を掛けて戦闘態勢に入った。
クローフィヴォルフと呼ばれたモンスターは私を襲ったモンスターよりも遥かに大きい狼型のモンスターだった。
「可笑しいですね、クローフィヴォルフはこの辺りに生息して居ないのモンスターの筈。団長、加勢します!」
「少年の怪我は!」
「出血は止まりつつあります!」
今までのほのぼの?とした空気が消え去り、緊張感が辺りに広がる。
あのモンスターはそれだけ強いということなのだろうか?
「君はなるべく、僕から離れないで下さい。必ず守りますから」
「とっとと終わらせて、ゆっくりしたいぜ。いくぞ!」
団長さんがあのモンスターに斬りかかり、モンスターが避けた所をゼイブさんが的確に射抜いていく。
「デカイ図体しといて、相変わらずちょろちょろと!ウラァ!」
キラリと光った刃がモンスターの前足を切り裂き、動きを鈍らせる。
「ハッ!」
そこへ更にゼイブさんが追撃を加えていく。
この二人のチームワークは抜群で何度も死線を掻い潜ってきたことが伺えた。
もしかするとゼイブさんもなかなかの地位についた騎士なのかもしれない。
「コレで終わりだ!」
高らかに響いた声と共にクローフィヴォルフの体が地に落ちた。
「少し手こずったな」
「訓練増やしますか?」
獲物を鞘に戻し、頭を掻きながら此方に歩いて来る団長さんに向けてゼイブさんが意地悪そうに言った。
「増やしたとしてもお前とは一緒にやりたくないね、スパルタ教官殿」
「ふふ、それは残念です」
ゼイブさんが弓をしまい、私を立ち上がらせる為に手を差し出す。
「助けてくださり、ありがとございました」
「困った人を助けるのも騎士団の重要な仕事だ、気にすることはない」
「団長、この少年ですが・・・」
ゼイブさんが何かを言いかけたその時、団長さんの後ろで倒された筈の
クローフィヴォルフが血走った目で立ち上がったのが見えた。
「団長さん、危ない!」
「なっ!?」
咄嗟に足元に落ちていたヤシの実?恐らく森から転がってきたのだろうサッカーボール大の実をリフティングの要領で蹴り上げ、クローフィヴォルフに向かって蹴り込む。
「ギャン!!!!」
木の実はクローフィヴォルフの頭に命中し、ゼイブさんが放った矢によって絶命した。
「なかなかいいコントロールだな」
そう言った団長さんの声が何処か遠く聞こえて、視界が霞む。
「少年? おい、大丈夫か!!」
焦ったように手を伸ばすゼイブさんと駆け寄って来る団長さんの姿が私がその時最後に見た光景だった。
戦闘シーン書くの慣れてなくて上手く書けたか心配です・・・