解体作業(グロ注
多少、血や残酷表現が入ります。苦手な方は退避して頂いても次回に影響はありません。多分、おそらく?
「…斬れるなら初めから斬りなさい!」
「いやいや、さっきはガチで斬れなかったんだって!!」
「魔力の使い方も知らないのに飛び出して行くからです!」
「ぐっ、それは反論出来ないけども!」
「だいたい、あなたは、っ、……」
勢い良くまくし立てるグラキシアの体が揺らぐ。
「シア!?」
「ヤバイ、毒が回ったんだ!」
「(そうか。シアはあの時にシュターラに噛まれてたんだ!!!)」
「っ…、これくらい問題ありません」
「シア! 無理しちゃダメだ!」
「っ……グッ!」
グラキシアが毒に蝕まれるながらも必死に強がる。しかし、シュターラの毒は予想以上に強いようでついには地面に伏せてしまった。
「どうしよう……?!」
「大丈夫。僕達に任せて! 出てきて、サラサ!」
昴は胸ポケットから素早く守護石を取り出し、サラサを召喚する。
うん。相変わらず、サラサは綺麗だな(なでなでしたい)。
「サラサ! グラキシアの解毒をお願い!」
「まあまあ、これは酷い!すぐに解毒しますからね」
指示を受けたサラサは早速、グラキシアに近づき、グラキシアを包み込む様にぷわっと水球を作り出す。
「なぁ、昴」
「んー?」
「シア、溺れないのか?」
グラキシアは水球の中でピクリともしない。普通、水の中に閉じ込められたら空気を確保するために暴れるよね?
「大丈夫、大丈夫〜。僕も何回かやってもらったことあるけど、苦しくなかったよ〜」
「そうか。なら、安心だな」
「ガサガサ……」
「「んっ?」」
グラキシアの安全を確認し、ホッとした所で何やら草を掻き分ける音に気づき、昴と一緒に辺りを探る。
「「………………」」
「シュー………」
「あー、うん。なんか忘れてるなーって思ってた」
「うん。僕も」
「けどさ、この数はなくね!?」
茂みを掻き分け、現れたのはシュターラの群れ、数は九匹。さっき倒した数の倍以上だ。
「あはは…、流石にヤバイかも?」
「「「「シャァァア!!!」」」
「うっわぁぁ!?」
「くっ、昴! シアに近づかせるな!」
「分かってる!」
昴がグラキシアとサラサを守り、私がシュターラを引き付けるために斬り込む。
「お前らの相手はこの僕だ!」
導鈴を構え、群れに突っ込む私を格好の獲物とばかりに襲いかかるシュターラ達。
「ハァッ!」
「シャァァっ!?」
毒を吐こうと口を大きく開けたシュターラの頭を横一閃。続けざまに飛びかかって来た二匹の胴と頭を切り離す。
「それっ!」
すかさず、昴の針がそれぞれの頭に突き刺さり、トドメを刺す。蛇は頭を潰さなければ動き続けるモノもいるからだ。
「あと六匹!」
「油断しちゃダメだからね!」
「分かってるって!」
バッサバッサとシュターラ達の頭や胴を斬りつけ、昴がトドメを刺すという作業を繰り返すとシュターラの群れは残り一匹となった。
「シャァァア!!!」
最後の足掻きとばかりに長い身体を鞭のようにしならせるシュターラ。
「くっ、リーチが長すぎる。昴!」
「はいはーいっと!」
昴の放った針はシュターラの尻尾の先を捕らえ、地面に縫いつける。動きを奪われたシュターラは針を抜こうともがくが、針は地面に深く突き刺さり抜けない。
「これで終わりだ!」
針を口で引き抜こうとしたシュターラの頭に導鈴を勢い良く突き立てる。
「っ……っつ!?」
シュターラは目を見開き、身体を大きく波打たせたが、やがて動かなくなった。
「はぁ…、終わったか」
力尽きたシュターラから導鈴と昴の針を引き抜き、治療中のグラキシアの元へ向かう。
「サラサ。シアの具合はどう?」
「順調に回復中です。今回は毒が回り切る前に治療できましたから、大事には至らないと思いますよ」
ふわふわとグラキシアを包む水球の周りを泳ぐサラサが安心しなさいとばかりに私の頭を突っつく。
「そうか。ありがとう」
「彩君〜」
突っついてくるサラサを撫でていると少し離れた所から昴が私を呼んでいる。
「んー、なんだ?」
「ちょっと来て〜!」
「はいよー」
サラサにグラキシアを任せ、昴がいる所まで駆け足で近づく。
「で、なんだよ?」
「これこれ〜」
昴がぷらーんっと尻尾を持ち上げて見せてくるのは私が真っ二つに斬ったシュターラの死骸。
「この死骸がどうしたんだ?」
「これ、必要な素材を分けてからギルドに持って行けばお金になるかも!」
「………マジで?」
昴曰く、シュターラの牙、鱗、皮、目はそれぞれ素材として活用されており、魔法使いや薬師などが使う。そのため、ギルドでは定期的に討伐部隊を出して素材を集めて売るのだとか。
「てなわけで、解体しよ!」
「やり方がさっぱり分からん(笑」
「大丈夫。教えるから!」
「うぇーい」
そんなこんなで昴に手渡された小型のナイフを片手に昴指導の元、解体を試みる。
「まずは牙を折る所から始めなきゃね。牙には猛毒があるから接触しないように気をつけて」
「はいよ。こんな感じでいいのか?」
シュターラの口を広げ、牙の根元をナイフの柄で叩き折る。折れた牙を口の中から回収して昴に確認してもらう。
「うんうん。根元から折れてるから大丈夫〜。次は目をくり抜いて〜」
「うっわ、グロッ…」
流石に目玉をくり抜くには勇気がいる。しかし、一匹を捌くのに時間をかけていては全てを捌き終える前に日が暮れる。
「(覚悟決めてやりますかね…)」
ささっと目を取り出し、昴が持って来ていた採取用の瓶の中へ落として行く。昴の作業の方が早いため、すでに数匹分の目玉が入っているのだがぱっと見、ホラーである。
「鱗は職人さんが剥がしてくれるから、鱗はそのままで皮を剥いじゃおう」
「これって魚の皮を剥ぐのと変わらないよな?」
「うん。そんな感じで大丈夫だと思うよ」
「了解」
シュターラの頭に昴から借りた針を突き立て、腹を鰻を捌く要領で縦に切り込み入れる。次に皮と肉の間を削ぐように切り離す。シュターラは一匹の長さが1.5mはあるので重労働だ。
「ふぅ、出てきた数が多いだけに解体も一苦労だな」
「あはは、そうだね。でも、これだけの数を持ち帰る事が出来れば当分、お金には困らないと思うよ?」
「マジか〜。てか、分前どうするんだ?」
「えー?半々でいいよー」
と雑談を交わしつつ、解体作業は進み。ついに最後の一匹を解体し終える事が出来た。
「(慣れると解体も簡単だな)」
「よし、彩君。シュターラの素材別に袋に分けてこのリュックに入れて〜」
「はいよーって、そのリュック二つ個目だろ。どこに入ってたんだ?」
「あ、これー?これは元のリュックの中に折りたたんで持って来てたの」
もしもの時のためにっと笑う昴に抜け目ないなぁーと乾いた笑いをこぼす。
「じゃあ、こっちのリュックは僕が背負えばいいんだね」
「うん。僕はヤート草とそっちに入らなかった素材を引き受けるよ」
「分かった」
受け取ったリュックを開き、次々と素材を詰めて行く。もちろん、ちゃんと全部入るように考えながら。
「よし、あとは目玉を入れれば完了!」
「あれ、全部入れちゃったの!?重いよ!」
「大丈夫だってー」
「ズズズッ…」
「「っ!?」」
魔物の気配も無くなり、解体作業も荷造りも終わったことでほっとしたのもつかの間。何か大きくて重いモノを地面に引きずるような音が聞こえる。シュターラの群れは私達にその存在を気づかせないように息を殺していたのに今度の『何か』はこちらが気付こうと御構い無しにこっちへ近づいてきている。
「な、なんだ?」
「わ、分かんない」
ザザザッっと草を掻き分け、地面を削り、こちらへ向かってくる『何か』。
「っ………」
息を殺し、グラキシアを守るために導鈴を構える。昴も同じように針を構え、サラサとアイコンタクトを取っている。
『ズズッ、ズズズッ!」
「ジャララァァア!!!!」
「っ!? なんだよ、あいつ!!!」
「まさか、そんな!?」
ちょっとグロかったですかねー。解体作業を短縮しようかと思ったのですがリアリティを出すためにあえて書きました。