導鈴の威力←良くも悪くも
ようやく、昼夜逆転から抜け出すことが出来ました!スランプに入らない限り、更新は前と同じです!
「「「「「シュー………」」」」
うっわぁ、狙われてる狙われてる。私達を取り囲むシュターラの群れは背の高い草に身を隠したまま、此方の動きを伺っている。
「昴〜、これどうするよー?」
「これは予想してなかったかも〜」
「ですよね〜(笑」
あはは…っと苦笑いしつつ、今の状況を確認する。
今いる場所は草原の中でも背の高い草に囲まれた直径6mほどのサークルの中、敵は10〜15匹のシュターラの群れ。総攻撃を受ければ一溜まりもない絶体絶命。
「(さてさて、どう立ち回るか…)」
チリンッと我を抜けとばかりに導鈴が鳴く。この刀はなかなか好戦的な性格らしく、さっきからずっとチリンチリンとうるさい(溜
「ま、今回は昴だけに任せるわけにはいかないよな…?」
ようやく出番が来たと意気揚々とシュターラいるであろう草むらに近づき、素早く導鈴を鞘から抜き、目の前の草むらを一刀両断する。
「「「シュー…」」」
「うっわぁ、出待ちですか…」
切り倒された草の合間から現れたのは三匹のシュターラ。先ほど、昴が倒した個体よりも少し大きいものが混ざっている。
「シャァァァア!!!」
隠れ蓑を奪われたシュターラ達は体をバネのように弾けさせ、勢いよく襲いかかってくる。
「ちょ、いきなり三匹とか!?」
襲い来るシュターラ達を躱し、後ろへ飛び退く。
「「「シャァァ!」」」
「彩君、突っ走っちゃダメだよ!そいつらの牙には毒があるんだ!」
「げっ、こいつらにも毒があるのかよ!!」
「ハッ!」
「ッ…!?」
昴の放った針に貫かれ、一匹が動きを止める。動きを止めたシュターラを間髪入れず、グラキシアが氷漬けにした。
「おおー! シアも昴も強いな」
「呑気なこと言ってないで敵に集中しなさい!」
「はいよー」
二匹に数を減らしたシュターラ達は弱そうな私に目をつけたらしく、長い身体を鞭のようにしならせ、攻撃をしかけてくる。
「おっと、そう簡単に当たるかよ! ハァッ!」
『キンッ!』
「なっ!?」
一匹のシュターラに向かって勢い良く振り下ろされた刃は甲高い音を立てて弾かれた。
「シャァァ!!」
「ッ!」
怯んだ私に好機とばかりにシュターラが飛びかかってくる。
「(チッ、避けられない!)」
「彩!!!」
グラキシアが私を庇うようにシュターラとの間に割り込む。
「グッ…!」
「シア!!!」
襲いかかったシュターラはグラキシアの背中に牙を突き立て、ギリギリと締め上げる。そして、そこからトドメを刺そうとしているのかグラキシアの首に向かって長い身体をするすると動かしている。
「大丈夫です! そのまま、離れていなさい!」
「シュー……」
「高々、蛇の分際でいい気になるじゃありませんよ!」
ギリギリと絞め殺さんとばかりに締め上げられているにも関わらず、グラキシアが高らかに吠える。
「……!!!?」
すると、噛み付いていたシュターラが驚いたように口を離し、苦しそうにもがき始めた。よく見るとグラキシアの身体から白い冷気が溢れ出しているのが見える。
「(蛇は元々、変温動物だから寒さに弱いのか!)」
「今更、逃げ出そうとしても遅い。私の冷気で凍りつくがいい!」
「……ッ!!!」
逃げ出そうともがいたシュターラはそのかい虚しく氷漬けとなった。グラキシアは動物が水を飛ばすように体を震わせ、体に巻きついたシュターラを振り払う。
「……さてと、彩」
「………はい」
「武器の扱いもわからないのにつっぱしるんじゃありません!猪ですか、貴方は!!」
「すいませんでした!」
まさか、ここまで切れないとは思わなかった。ナトリスさんの話では魔力を与えなければならないって言ってたな…。そもそも、魔力を与えるってどうやるんだ? 神殿で魔力を測ったように集中すればいいのだろうか?
「(集中、集中…)」
ふーっと息を吐きながら導鈴を鞘に戻し、力を抜いて目を閉じる。
「シャァァァア!!!」
動きを止めた私に残る一匹が襲い掛かってくる。
「彩!!?」
「彩君、危ない!!!」
すぐそばまで迫るシュターラに避けることもせず、動かない私にグラキシア達が声をあげる。
『チリンッ!』
導鈴が鳴く。その鈴の音にスッと目を開き、柄に手をかける。シュターラとの距離は1mを切った。
「はぁっ!」
一歩踏み出し、勢い良く導鈴を抜き切る。
「……ッ!!?」
ザンッと鋭い音と共に斬りつけられたシュターラは首を刎ねられ、地に落ちた。
「(斬れた……)」