燃え上がる死闘
「で、絶賛迷子なわけだが…」
あの後、シエロ先生は授業の準備があるからと早々に居なくなってしまった。自由に学校の中を見学していいからと言い残して。
「自由に見学していいよって言ったってさ〜。この学校、迷路じゃん!」
「この学校の作りは召喚獣の扱いにまだ慣れて居ない召喚師が召喚獣を暴走させても外に出ない作りになっているのですよ」
「マジか…」
ちゃんと意味のある作りだったのか。迷路って言ってごめんよ、建築家の人←
そんなこんなでグラキシアと雑談しながら当てもなく歩いた結果。
「ここどこだよ…」
て、ことになったわけですよ。
どこ見ても歩いてきた廊下と変わらない作りと無数にある脇道のお陰でどこから来たのかも分からない現状になってしまった。
「グラキシア、道分かる?」
「そうですね〜、召喚の儀を行った部屋まではわかりますがそれ以上はわかりません」
出口は分からないのか。
それもそうだよね、グラキシアはさっき召喚されたばっかりで右も左も分からないわけだし。
「彩。出口は分かりませんがここから少し先に土の匂いがします」
「土の匂い? それって、外ってこと?」
「室内に土が撒かれていなければ外だと」
おおー! 少なくとも、この代わり映えのない風景からは抜け出せるよね!
「行こ! すぐ行こう!」
「こら、廊下は走らない!そして、そっちじゃありません!」
軽い足取りで走ろうとした私の服を咥え、ズルズルと正しい道に引きずるグラキシア。
咥えられても服が破れないのはグラキシアの手加減なのかはたまた、服が丈夫なのか・・・。
「分かったよ。走りません! で、こっち?」
「ええ、そこを真っ直ぐです。曲がっちゃダメですからね?」
はーいっと返事をしてグラキシアに示された道を歩いていく。
「次、そこを右です」
「はいさー」
「次は左です」
「ういー」
「あとは真っ直ぐ行けば匂いの元に辿り着きます」
グラキシアの指示の元、入り組んだ廊下を攻略?して行く。
これ、私一人だったら絶対に出口に辿り着けなかっただろうなー。
真っ直ぐと進んでいくと周りを柱と校舎の壁に覆われた吹き抜けに出た。
地面には大きな木が一本、堂々と根を張って枝を広げていた。
「うおりゃぁぁ!」
「そいやぁぁぁ!」
「………えぇー」
無事に外…というか中庭?に辿り着いた私達ですが、予想もしなかった光景に只々、びっくり。
がっちりとした体型をしたスキンヘッドの青年と2m強はあるだろう燃えるような真紅とオレンジのメッシュカラーの巨大な熊が取っ組み合いをしていたのだ。
青年が着ている服は制服のようで私もここに通うことになったら着るんだろうか?
「デカイなぁ〜」
「あの熊は召喚獣のようですよ」
「あ、そうなんだ」
割って入るわけにもいかず、どっしりとした木の根に腰を下ろし、青年と熊の死闘を見守る。
ドスンッ!とかドカッ!とか凄まじい音がしているのだが、青年も熊も一歩も引くことはない。
「うらぁあ!」
「うおぉお!」
「なんか楽しそうだね〜」
「そうですね〜」
一人と一匹はお互いに殴り合っているもののとても楽しそうで手加減もしているようなので心配なそうだ。
「げふっ!?」
「うおっしゃぁ!」
「おおー」
勝負の行方は熊の勝利にて決した。
青年は地面に倒れ、熊は満足そうに拳を突き上げる。
その光景に思わず、パチパチと拍手すると私達の存在にようやく気付いたのか青年と熊がこちらを見た。
「なっ!? 君、いつから居たの!?」
「おおー! ギャラリーが居たのか。全然、気がつかなかったぜ」
青年が驚いたように起き上がるが、どこか痛むのかすぐに地面へ逆戻りしてしまう。
「大丈夫?」
「これくらい、何時ものことだから大丈夫だよ!」
「まあ、何時もこれくらいの組手はするな」
はははっと笑う熊と対照的に青年は大人しいタイプのようだ。
青年の頬は赤く腫れ上がっていて、コレでは授業に出るにしても周囲が気にするだろう。
「グラキシア。傷を冷やしたいんだけど、氷を出せる?」
「お安い御用です」
グラキシアの周りの空気が一気に冷えたと思ったら、私の手の中に手のひらサイズの氷が落ちてきた。
「サンキュー!これをこうしてっと」
氷を手早くハンカチで包み、青年に手渡す。
「はい、これで冷やしなよ。放っておくともっと酷くなるぜ?」
「あ、ありがとう。君は誰?見かけない顔だけど」
ようやく、私がこの学校で見かけない生徒だと気がついたようだ。制服着てないから、すぐに気が付くと思ったんだけど。
「僕は辻鞍 彩。こっちはグラキシア。僕らはさっき、召喚の儀を終わらせたばかりなんだ」
私は体制を正し、グラキシアはお座りの状態でケリーに挨拶をする。
「そっか、新入生なんだね! 僕はケリー・ビーンズ、こっちはタヌラーク。今年の春に召喚師になったばかりなんだ」
へぇー、ケリーも入学して間も無いのか。
「よろしく、ケリー」
「うん、よろしくね!」
ケリーは私が差し出した手を握り、立ち上がった。
「キーコンカーンコーン〜」
「あ! 授業がはじまる!」
おおー、チャイムは元の世界と同じだ。
「彩君も行こう!」
ケリーに手を引かれ、校舎の中へ引き摺り込まれる。
「えっ!? 僕はまだ入学してないよ!」
「見学くらいなら大丈夫だって、先生も硬いこと言わねぇよ」
「えぇー!?」
「まあ、見ておいて損はないでしょう」
「グラキシアまで!?」




