プロローグ
主人公ちゃんが異世界へ飛ばされました(笑
「私は何故、ここにいる?」
辻鞍 彩。それが私の名前。
享年18歳、大型トラックに轢かれて死んだはずだった。
「(あれは絶対にスピード違反だ)」
というか普通に即死するレベルの速度だったと思う。しかし、私は生きている。
見たこともない奥深い森の中で。
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「ここは…………どこだ?」
さわさわと葉が風でこすれる音で目を覚ました私なのだが。目覚めた場所が病院ではなく、森の中というか摩訶不思議な状況に見舞われている。
「えぇー…」
内心焦りつつ、周囲をぐるりと見渡して状況を確認するがここがどこなのか示す物は何もない。ただ、風に揺れる木々が生い茂っているのみ。
「あれ? 体、痛くないな…」
人を即死させるほどのスピードで追突されたのなら、全身骨折くらいはしてそうなのだが、体のどこも痛くないし、傷もない。
まあ、痛みはないほうがいいよね?
「さてと…。とりあえず、歩いてみようかな〜」
遭難した場合、本当は動かないほうがいいんだけど、この状況で助けがくるとは思えない。そもそも、人がいるかすら分からないのだ。
水や食料もないから、じっとしていると飢え死にしそう。
「(それだけは避けたい)」
サクサクと枯葉を踏みながら、森を歩く。木々の間から木漏れ日が差し込み、私を照らす。こんな状況じゃなかったら、森林浴したい。
「はぁ…(本当にここはどこなの? どうして、私は生きているの?)」
そんなネガティブな疑問ばかりが頭の中で渦巻く。答えなんて持ち合わせていないのに。
「せめて、獣道か山道に出られればなぁー」
うじうじしながらもしばらく歩き続けると、ようやく森の出口らしき場所に辿り着くことができた。
「マジか! 運がいいかも!」
やっと森から抜けられると喜びを感じながら、出口へ向かう。森から出るとそこには小高い丘が広がっていた。よく見ると丘の向こう側に塔のような物が微かに見える。
「(あの丘を登れば何か見えるだろうか?)」
自問自答してみても答えは出ないので、とりあえず丘へと向かうことにする。丘へと続く草原には見たことのない花が咲いていて、ここはもしかすると?と一つの可能性が頭をよぎる。
「いやいや、まさか……」
まだ、その可能性は認めたくなくて頭を振って考えを散らす。
そうしている間にも足は動き続け、丘の上まで辿り着いてしまった。
そこから見た景色は………。
「マジか〜」
とても高い城壁に囲まれたとても大きな街。レンガ造りの家々、馬を引き歩く人、中世の鎧のような物をきて歩く兵士らしき人々。何もかもが、私が生きていた時代とは違うモノばかり。もしかして、タイムスリップしたかと思ったが、それとはどうも違うようで………。
なぜなら、私の知っている動物とは似ても似つかない生き物が私のすぐ近くまで迫っていたから。
主人公ちゃんはものすごく冷静ですが内心と言うか焦りはちゃんとあります。
ただ、ポーカーフェイスで顔と態度に出ないだけです(笑